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8月25日 その3 不思議のプレゼント

PM0:15


何とか鹿島達の起こした

馬鹿騒ぎを鎮めて、

俺たちは改めてバザー巡りを

再開した。




次に訪れたのは

PTAの方が営む食器のお店。

お皿やマグカップが所狭しと

並んでおり、

ちょっと懐かしいキャラクターものから、

中には結構値打ちものっぽい

のも見受けられる。




「司ママ、これどーおー?

渉パパとお揃いだよー。」

「おしょろいー。」

「いや、それ夫婦湯のみだろ。

流石に恥ずかしいよ。」

「でもママ達いっつもこういうので

お茶のんでるよー。

ラブラブのひけつ?なんだってー。」

「ひけちゅー。」

「全くあの万年バカップルは•••」



果菜ちゃんたちにおすすめされて、

恥ずかしそうにしている司さん。



結構大きな子ども連れているから

若干普通ではないかもしれないけど、

あー、新婚ってかんじでいいわー。






でもお揃いの食器って言うのはいいかもしれない。

ちゃんとしたのは商店街かショッピングモールで

買うとしても、

子ども達が生まれれば割れたりもするだろうし、

多めにあって損という事はない。

ちょっと古いやつは10円から売ってるみたいだし、

それなりに買い込んでみるか。

新居はキッチン周りも

それなりに収納スペースがあるところに、

する予定だしな。






そう思って商品を物色していると、

同じように商品の山を眺めていた女性が、

売り手の吉田さんに声をかけていた。


「これ、いただけますか?」

「ああ、このコーヒーカップと

ソーサーのセットね。

これ元々4つ一組なんだけど、

いくつ持って行くかい?

結構いいやつだから、1個200円、

でもまとめて買ってくれたら割引するよ。」

「では2つお願いします。」

「あいよ。じゃあ、100円引きで300円ね。」

「はい、ではこれで。」










「教授ー!

何やってるんですかーー!?」



その女性が代金を支払った後、

吉田さんが商品を梱包するのを待っていると、

半袖Yシャツ姿の青年がどこからか駆けて来て、

彼女に話しかけた。



「不正解です。私はバザーで不思議を探すと

朝言ったはずです。」

「いや、バザーってだけで、

どこか言ってくれないと困りますよ!」

「不正解です。

私は机にこのバザーのチラシを

置いていたはずです。」

「•••それから推測しろと?」

「正解です。

このバザーは実にいいです。

先ほどもいきなり人格が変わったように話始める少女や

複数人の女性に脈絡もなく愛の言葉を吐き続ける少年を

発見することができました。

やはり多くの人が集まる場所だと調査が捗ります。」

「•••後半はただのスケコマシじゃないですかね?」





教授?

この若さ、しかも女性でもう教授っていうのはすごい。

姉さんもそうだけど、最近女性研究者がホント増えて来ているし、

大学の研究や教育も女性のセンスが入る事で幅が出て来るといいなー。

•••俺の恩師はセクハラで捕まらないか、若干心配だが。




そして彼女にかみついているのが、

その指導学生か助手さんって所かな?

苦労しているのが目に見えそうなタイプだ。


ああ、先日姉さん達に振り回された身としては、

何かシンパシーが湧いて来る。

頑張れ、青年。

きっとその苦労の先には

明るい未来が待っている!•••といいな。






「それで何でコーヒーカップなんて

買ったんですか?

ホテルにちゃんとカップがあるじゃないですか?」

「不正解です。

これは実にいいものです。

恐らく北欧で作られたヴィンテージ食器で、

元々は今回の売値の10倍以上軽くするはずです。」

「いや、さすがにそんなにすごいものが

小学校のバザーで売っているわけ•••」

「あらまあ、若いのに目が利くねー。

それうちの次女の出産祝いにもらったから、

正確な値段は分からないけど、

セットで1万円以上はしたみたいなんだよ。

我が家には似つかわしくない食器だから、

そいつでコーヒーを飲む時には、

何となくハイソな気持ちになったもんだよ。

上の女の子達が結婚しちゃって、

残ったのは野郎ばかりで使わなくなったから、

どうせなら誰かにと思って出品したんだけどね。」

「•••お見それしました。」

「正解です。

これで飲めばコーヒーもいっそう

美味しくいただけるでしょう。」




笑顔で言い切る女性と

ガクッとうなだれる青年。

なかなか良いコンビのようだ。


それにしてもそこまで見抜くなんてすごいな。

ああいうのにも造詣が深いっていうのは、

文系の学者さんかな?

うろなに長期滞在している方なら、

今度教育を考える会にオブザーバーとして

呼んでみようか。


それにしても青が綺麗なコーヒーカップだよな。

まだ二つ残っているみたいだし、

司さんとセットっていうことで

買ってみようかな?




教授さん達の会話を聞いていて、

残ったカップに興味をそそられていると、

服のすそを

くいくいっと引っ張られているのに気づいた。


そちらを振り向くと

果菜ちゃんと美果ちゃんが

女の子のキャラクター達が描かれた

お茶碗を持っていた。




「渉パパ、お腹の赤ちゃん達に

これプレゼントしたいんだけど、

いい?」

「ぷれじぇんちょ。」

「あ、ありがとう。

でもまだ二人とも男の子か女の子か

分からないんだよなー。」

「大丈夫だよ。

本当は男の子なんだけど、

女の子として育った子も

ちゃんといるから。」

「おちょこー。」

「な、なるほど。」



女児向けアニメで男の娘!!

時代が進みすぎててついて行けない•••

まあ、これからの時代は

性同一性障害とかLGBTについての教育が

小さい頃から必要だとは思うけれども•••



苦笑いを浮かべる俺に、

同じく若干困った顔をした司さんが

「まあ、二人の気持ちってことで

受け取っておいたらいいんじゃないか。

どっちも男でも小さいときはそんなに

気にしないだろうし。

拓人さんからは二人のお小遣い預かっているから、

そこから出したってことにしておこう。」

とのアドバイス。


こういうのは気持ちだしな。

この娘達がうちの子ども達を

自分の弟妹のように考えて

くれているのが、

何より嬉しいし。


「そうですね。

果穂ちゃん、美果ちゃん、

ありがとうね。

二人もきっと喜ぶよ。」

「えへへ、お姉ちゃんだもんね。」

「わたちもおねちゃん!」

「そうだね。美果ちゃんもお姉ちゃんだね。」





そんな微笑ましいやり取りとしていると、

背後でさっきの女性が

「先ほどのカップもう二ついただけますか?」

と吉田さんに言っていた。

それに対し、

「まだ買う気なんですか!」

と突っ込む助手君。




ガーン、先超されちゃったか。

結構良いなーっと思ってたんだけどな。

まあ、果菜ちゃんたちからの

プレゼントがあったことだし、

よしとしておこうか。



そう思って、

果菜ちゃんたちセレクトのお茶碗の

会計をするために後ろで待っていると、

教授さんが購入したカップを持って

くるりと振り返った。

そのまま帰るのかと思いきや、

「えっ、教授、どうしたんですか?」

との助手君の静止を無視して、

俺の前にすっと立ちふさがった。




「えっと、何か御用でしょうか?」

「正解です。

あなたがうろな中学の清水先生でよろしいですか?

私、某大学で教鞭をとっている和倉葉朽葉(わくらば くちは)と申します。

これが名刺になります。」

「ああ、これはご丁寧に。

はい、これが私の名刺になります。」

「ありがとうございます。

清水先生はうろな町各地を回っており、

町の情報が入って来やすい立場にあると聞いております。」

「よ、良くご存知ですね。

確かに、教育を考える会の連携担当をしているため、

色々な方からお話を聞いてはいますが•••」

「その中に不思議な話とかはありませんか?

どんなことでもいいのですが。」




ずいっと迫って来る和倉葉さん。

背の高いすらっとした美人だが、

何とも言えぬ迫力があった。



「そ、そうですね。

最近で言うとうろな七不思議っていうのがあるとか、

実は人間達の知らない所で妖怪大戦争が起こってたんだとか、

そんな信じられない噂が耳に入って来てはいますが•••

いや、基本勘違いから来るものだとは思うんですがね。」

「いえ、素晴らしいです。

お時間があるときでいいので、

またお話を伺ってもよろしいでしょうか?

これは、お近づきの印です。」

「まあ、こんなんでよければ•••って、

それさっきのコーヒーカップセットじゃないですか!!

いいものなんでしょう?

そんなのいただけませんよ。」



いきなり購入したものを押し付けられ、

びっくりして断ると、

和倉葉さんはさらに驚くべきことを言って来た。



「不正解です。

これは家族揃って使う方がいいものだと思いますから。

奥様と、

それから生まれて来る双子ちゃんと一緒に、

コーヒーを楽しんでください。」

「そ、それを何故?」

「では不思議な話、

またよろしくお願いします。」



自分の現状を言い当てられた事に驚く俺を

しり目に、和倉葉さんは一礼するとその場を立ち去って行った。


ちなみに直後に助手君が

「教授がご迷惑をおかけしてすいません。

僕は六条寺華一郎ろくじょうじはないちろうと言って、

教授の助手をしています。

こちらは私の連絡先になりますので、

教授がまたお手数をおかけすることがあれば、

ご連絡ください。」

と自己紹介をし、名刺を渡すと、

和倉葉さんを追っかけていった。





俺が完全にポカンとしていると、

遠くの方で先ほどの二人が

「教授、さっきのコーヒーカップ別に

いらなかったんですか?」

「不正解です。

私はあのカップで貴方が淹れるコーヒーを

飲めるのを楽しみにしていました。

ただそれ以上に彼が情報源として貴重だったと

いうだけです。」

「確かに町の人の話にもさっきの清水先生って

人の話でてきますもんね。

後ろにいた小柄な女性がコンビを組んでいるっていう、

梅原先生って方ですかね?

ご結婚の話とかも知っていたんですか?」

「不正解です。

私が知っていたのは彼個人の情報だけです。

ただ隣にいた女性や

一緒に連れていた子ども達とのやり取り、

そして女性の付けているマークなどから推測は

十分可能です。

おかげで煙草を吸う訳にはいかなくなりました。」

「•••良くそんな所まで気づけますね。

そして体育館で元々煙草なんて

吸おうとしないでください。」

なんてやり取りをしているのが、

微かに聞こえて来た。





あれだけの会話からそこまで

気づけるなんて、

これはまたすごい人に出会えたもんだ。

期待に応えられるように。

不思議な話集めておかないとな。





「渉ー、何やってるんだー?

お茶碗の梱包終わったぞー。」

「今行きまーす!」



司さんの呼ぶ声に急かされて、

俺は3人の待つ所に戻っていった。




本当にこの町は色んな意味でスゴい人が多い。

俺に取ってはそれが一番『不思議』である。

腕の中の思いがけないプレゼントが、

改めてそんなことを感じさせてくれたのだった。

シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


あれ、ちょっとした小話にするつもりだった、

教授との絡みがすごく長くなってしまった•••

桜月りまさん、朝陽真夜さん、

紅白コンビとの出会いはもう少しお待ちください。


今回枯竹四手さんの朽葉うろな行より

和倉葉朽葉さんと六条寺華一郎君の

教授•助手コンビをお借りしました。

初コラボなので、

教授のしゃべりとかに問題がありましたら、

ご指摘いただければ幸いです。


小ネタとして

アッキさんの水鏡栗花落さん、

梔子さんの十六夜零音くん、

白黒さんのうろな七不思議、

うろな夏の陣のお話を

盛り込ませていただきました。

こちらも問題点がありましたら、

遠慮なく言ってくださいね。


それではお待たせして申し訳ありませんが、

次こそはユキちゃん、ベルちゃんと絡みたいと思います。

ARIKAの皆さんもお食事よろしくお願いします。

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