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8月13日 その1 こんにちわ、赤ちゃん♪

AM9:00


「ふわー、もう9時か。」


朝の日差しが眩しい、

ここは某パーキングエリア。

帰省ラッシュに湧く周りの様子に、

俺は仮眠を取っていた

車内で目を覚ました。






昨日の司さん誘拐事件の後、

1時間程放心状態と

なってしまったが、

その後何とか気を取り直して

各種後処理をすませてきた。




学校の方はすでに13日から

18日まで自分も司さんも

休暇の申請をしていたから

いいとして、

連携担当としてお世話になっている

町の各所にお盆にうろなを離れる

ことをメールしていった。


予約していたジュエリーショップにも

急用で行けなくなったことを伝え、

その後梅雨をキャリーバックに詰め込んで

工務店のタカさんの家に赴いた。

事前にお盆の両親訪問のため、

梅雨を預けるお願いをしていたのである。


本来ならモールでユキちゃんの絵のお返しを買って

行くはずだったので心苦しかったのだが、

どうやらユキちゃんは絵の執筆のために

森に籠って不在らしく、

何故かいた賀川さんに梅雨を託して来た。




「葉子さんがご飯を食べに来ないかと誘ってくれて、

よく来て、そのまま泊まっている。」とのこと。

いや、単にユキちゃん狙いだろ、なあ同類、

とも思ったが、ユキちゃんの居場所を聞いたときの

反応がどこかうろんで、彼も色々複雑そうだった。

俺は司さん攻略を成し遂げた?訳だし、

直澄だけでなく、賀川君の恋路も

アシストしてやれたらと考えたのは、

流石におせっかいがすぎるだろうか。

ユキちゃんの反応とか見ていると、

脈は結構あると思うんだけどなー。


「うなー。」

「ごめんな。もう少し大きくなったら、

色々連れて行ってやるからなー。」

名残惜しそうな梅雨に後ろ髪を

引かれながら、俺は自宅へと戻った。




ちなみに家に戻る途中で

司さんから

「いまおまえのじっかについた。

たのしいおかあさんだな。

おねすとだんでい。

つかれたからもうねるよ。

こられそうか?」とメール。

本当はすぐにでも声が聞きたかったが、

お疲れのようだったので、

「明日の午前中には着きます。」

とだけ返した。

「まってる。」

との返信が胸に沁みる。




その他残った雑事を終わらせ、

家の中を片付けて必要そうなものを

旅行カバンに詰め込み、

冷蔵庫を無理矢理空にした時には

すでに日付が変わっていた。


しかし帰省ラッシュに巻き込まれるのを

できるだけ避けたかったので、

そのままいつものレンタカーショップで

予約していたお盆プランを利用して、

懐かしの実家へと車を走らせた。





夜通し車を走らせて

明け方に目的地最寄りの

パーキングエリアに到着。

あと1時間ほどで実家に着けるのだが、

さすがにこの早朝では近所にも迷惑なため、

車内で仮眠を取っていた、

というのがここまでの次第である。






「さてそろそろ行きますか。」

冷たい缶コーヒーを飲んでリフレッシュし、

いよいよほぼ4年ぶりに海江田の町へと突入である。


そう言えば大学時代、一度も帰らなかったもんな。

よくオネストの爺様持ったもんだよ。

姉さんがどんな反応をするかはもはや想像すらしたくないが、

母さんも何をしでかすやら。

大学の卒業式なんかで会ってはいるんだけど、

息子の婚約者が来たなんてなったら、

どんな大騒ぎをし始めるのか分かったもんじゃない。


ああー、本当は司さんにどうやって妊娠のことや

その後のことを伝えるのかに集中したいのに、

その前に姑•小姑共をどうあしらうかで頭が一杯だよ。


俺は脱力しそうな心を何とか奮い立たせて、

改めてハンドルを握り直した。





AM10:00



小高い丘の上に我が母校が見える郊外の住宅地。

よく考えたら車で乗り付けるのは始めてな懐かしい一軒家の庭に、

俺はうろなナンバーのレンタカーを止めた。


そこには他の車はなく、

どうやら旧友にして、姉の旦那である斉藤雅樹(さいとうまさき)

このお盆の時期にもかかわらず、

すでに土屋病院へ臨床実習に向かったようである。


つまり現在の我が家にストッパーは不在。

愛する司姫への道に立ちふさがるのは、

唯我独尊類理系研究者の薫姉さん27歳と

関西系おせっかいおばさんたる母清水瑠璃子(しみずるりこ)54歳の

二大巨頭。

口先で世の中渡って来たこの俺を遥かに凌ぐ、

超絶べしゃり母娘に俺一人でどうやって対抗すればいいのか•••

しかも司さんを人質に取られた状態で。

ああ、もう考えていても仕方がない、

とにかく、突撃だ。




ピンポーン。

「はーい。」

「おぎゃー!!」

「ほら、よしよし。泣かないでね。」


あれ、母さんでも姉さんでもなく、

何故か、愛しの司さんの声が。

しかもどんな幻聴なのか不思議でしょうがないが、

赤ん坊の泣き声のようなものが聞こえた気が•••

イッタイドウイウコト?



俺が大量の?を浮かべながら、

インターホン前で立ち尽くしていると、

パタパタとスリッパの音が近づいて来て、

玄関のドアが開けられた。


「えらく、早いな。

帰省ラッシュもあるからもう少し

かかると思ってたんだが。

まあ、いいか。

こう言うのもおかしな話だが、

とにかく上がってゆっくりしてくれ。

冷たい麦茶をいれてやるから。」




笑顔で俺を労う司さん。

体調も良さそうで、

本当ならそのまま抱きしめて

しまいたいんだが、

それをさせない’訳’が

彼女の背中にはあった。

つうか、それを見て俺の

思考はさらに大混乱。

ホントにイッタイドウナッテルノ!!



「つ、司さん。」

「どうした渉?

早くあがれ。」

「い、いつの間に産んだんですか、その子!?」



そう彼女の背中には可愛い赤ちゃんの姿があった。

しかも微妙に俺に似ている気がする。





一体、俺はどんな異次元にタイムスリップしてしまったんだーーー!!!





俺は実家に帰ったと思ったら、

とんでもない魔空間に迷い込んでしまったのかもしれない。

そんな風に思い込んでしまうくらい、

あのときの俺は冷静でなかったのだ。


久しぶりの予期せぬ里帰りは、

そんな驚きのプロローグで幕を開けたのだった。


シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


前回間違って「完結済み」にしてしまい、

申し訳ありませんでした。

二人の結婚式をやりとげるまでは死んでも

死にきれません(笑)ので、

今後ともお付き合いいただければ幸いです。


そして今回のお話は

12日のお話で書ききれなかった部分のフォローと

次回への繋ぎ話です。

桜月さん、賀川さんに回想部分で出演していただきましたが、

こんな感じでよろしかったでしょうか?




最後がどういうことなのか、

次の話で明らかにしたいと思います。

大したオチではありませんが、

清水が出ばなを挫かれたことを

感じていただけたら幸いです。



清水苛めの始まり、始まり〜

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