5月27日 その1 彼女のずれた決意
AM12:30
今日の朝は色々楽しかった。
朝7時からは梅原先生と
マンツーマンの朝稽古である。
生徒達がまだ来る前ということで
梅原先生も全く遠慮なしに
俺を打据えて来た。
正直何回気を失ったか覚えていないが、
その度ごとに頭から水をぶっかけられて
起こされた。
30分くらいして朝練の生徒が来始めた所で
俺への指導は終了となったが、
準備室の長椅子に倒れ込みながら
今日一段と激しかったのはどうしてか
聞いてみたら、
「昨日色々うだうだしていたから、
最近行きつけの『流星』っていう
隠れ家風のビストロでどか食いしながら
ビールを飲んでうさを晴らしていたんだ。
いつもは他にあんまり客がいないのに、
ちょうど向かいの席で私よりちょっと
年上っぽい女性が食事をしていてな。
その人もため息をつきながら
お酒をのんでいたから、
何か通じるものを感じて
話しかけたんだが
その人も実に苦労しているらしいんだ。
彼女はどうにもあぶなっかしい年上の
上司を立派な前任者のように育て上げようと
苦心しているらしいんだよ。
それを聞いて
私が部下の扱いに苦労していると相談すると
『絶対になめられちゃダメよ!
バシッとやって自分が上位であることを
体に覚えさせてやらないと!』
と言ってくれてな。
その後も色々励ましてくれて
私たち二人は多いに飲んで語り合ったんだ。
まあ、ビストロの若い真面目そうなマスターには
閉店時間ギリギリまで粘って気の毒だったがな。
その夜私は心に決めたんだ。
「私が清水に嘗められているのは、
私の清水に対する接し方が甘過ぎたからだ。
明日の稽古で私の恐ろしさを骨身に刻んでやろう」とな。
どうだ、清水。これで少しは私の怖さが分かったか。
そうだったらこれからはちゃんと私に敬意を払うんだぞ。」
梅原先生はその薄い胸と低い背を精一杯そらして
実に自信満々にそう言った。
本当梅原先生って、体育会系単純思考だよな。
今まであんだけ痛めつけても動じなかった俺が
多少厳しくしたくらいでどうにかなる訳ないじゃないか。
しかも自分の意図を一番知られるべきでないはずの
俺に堂々と言っちゃって。
それある意味
「あなたのことが気になって仕方がない。」
って言ってるようなもんなんだけどな。
あー、ホントなんておバカでかわいいんだ。
お持ち帰りしてー。
しかも、あと少し、あと少しで。
「分かりました、梅原先生。
この不肖清水、これからは心を入れ替え
さらに梅原先生に尊敬の念を持つことを
お誓いします。
ですから、先生、もう少しその体勢でいて
くれませんか。」
「ふんふん、いつもふざけているお前も
あれだけやれば学習するということか。
これからはわたしをからかうことはやめて
•••、その体勢で?
この体勢がどうし•••、うーー!。」
彼女は完全に悦にいっていたが、
ようやく自分の状況に気づくと
真っ赤になって胸元を押さえた。
これ以上詳細に日誌に書くのは
武士の情けでやめてあげようと思うが、
簡単に言うと、
先生は剣道着を着るとき
下着は付けない派で、
さっきの稽古で先生も非常に激しく
動き回っていたから防具を脱いだ時に
剣道着が相当乱れて胸元がはだけていたということ。
そしてそんな状態で思いっきり
胸を反らしたりしたら、
いくらぺたんこな彼女といえども•••。
「こ、こ、こ、この大バカものーーーー!」
梅原先生は竹刀を引っ掴むと
面も着けていない俺の脳天に思いっきり振り下ろした。
その瞬間彼女の乱れた道着の隙間から見えた神秘について
俺は生涯忘れないことを心に誓いながら、
即座に意識を喪失した。
我が人生に一片の悔いなし。
シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。
彼女は色々”ずれて”いました。
くだらなすぎてごめんなさい。
綺羅ケンイチさんの「うろな町、六等星のビストロ」より
ビストロ『流星』、マスター葛西さんの話を使わせていただきました。
お酒は出さないとかあったら居酒屋とかに舞台を変えますので言ってくださいね。
また梅原先生の相談相手のモデルはシュウさんの「『うろな町』発展記録」の
秘書秋原さんですが、
彼女はこんなことは言わないとかあったら遠慮なくいってくださいね。
本当は、文芸部の生徒達を出したかったのですが、
おかしな盛り上がりを見せてしまったので
ここで一旦切ります。
こんなどうしようもない奴でよかったら使ってあげてくださいね。
コラボ作品一覧
うろな町、六等星のビストロ
http://ncode.syosetu.com/n7017bq/
『うろな町』発展記録
http://ncode.syosetu.com/n6456bq/