7月6日 その1 グレイトソウル
AM7:00
今日は町役場主催の夏祭りである。
朝から設営を手伝い、
昼からは見回り、
そして夕方には小林拓人先生と
ちょっとしたミニライブをやる予定だ。
何度か二人で練習をしたが、
拓人先生のギターの腕前はまさに
プロ並みであり、俺みたいな素人が
ボーカルでいいのかと思ったが、
『梅原さんにいいところ見せられるんじゃない?』
と言われて俄然やる気になった。
企画課の達也君に演出の仕込みもしてもらったし、
それなりに盛り上がるライブになるだろう。
会場で梅原先生や小林夫妻、
二人の娘さんである果菜ちゃんと美果
ちゃんの姉妹と合流した。
「渉おにいちゃん、始めまして。」
「はじめまちて。」
「どうも果菜ちゃん、美果ちゃん、よろしくね。
二人ともその金魚と朝顔の浴衣可愛いね。
でもなぜ梅原先生はジャージ•••」
幼女達の浴衣姿を褒めながら、
浴衣姿でない梅原先生を悲しい目で
見ていると
「設営の時にそんなもの来てられるか!」
「安心して清水君。
ちゃんと設営後にはこの子着飾ってあげるから。
浴衣だけではなく、色々アイテムがあるから
楽しみにしておいてね。」
と反論する梅原先生を、
果穂先生がやんわりと制して嬉しいことを言ってくれた。
それなら問題ない。
先生の艶姿を楽しむためにも
早々に設営を終わらせよう。
PM12:30
設営後のミーティング、
町長の開会の挨拶、
カラオケ大会午前の部、
などのイベントが終わり、
全体が一段落ついた所で、
俺は達也君達が作っていた
お好み焼きや焼きそばなどを買って、
梅原先生と二人でお昼ごはんを食べていた。
「おー、このお好み焼き、
広島風も関西風もおいしいな。
どうしたんだ、清水?
箸が止まっているが。
口に合わないか?」
「いや、梅原先生に見とれていただけです。
もう先生、夏祭りはいいからホテル行きませんか?」
「何発情してるんだこのアホはーーー!!!」
先生の全力パンチも俺の興奮を止めるには至らない。
いや、だって今日の先生、いつもにも増して最高過ぎますよ。
果穂先生、マジ超グッジョブ。
「その藍地に梅の花をあしらった浴衣はもちろん、
いつもよりもはっきりとつけたルージュの唇に
吸い寄せられそうです。」
「は、恥ずかしいんだからあんまりじろじろ見るな。」
綺麗におめかしした先生は赤くなって、
そっぽを向いてしまった。
いつもより大人っぽいようで、
履いた下駄をぶらぶら
させているのはどこか子どもっぽくて、
そのギャップも可愛い。
それに加えて、
「その髪飾りとイアリングも凄く素敵ですよ。
この前ユキちゃんとお買い物に行った時に
買ったんですよね?」
「ああ。これ、ユキとお揃いなんだ。
梅と雪のイメージなんだって。
ユキは朝タカさん達にごはんを届けた後
一度帰ってしまったんだが、
午後から賀川さんが連れて来てくれるらしい。
あいつの綺麗な白い髪にどんな風に
髪飾りが映えるのか楽しみだな。」
「先生の黒髪にもしっかりマッチしてますよ。
本当に今日の梅原先生はたまらなく綺麗です。」
「だから顔が近いって!」
俺は恥ずかしがる梅原先生にぐいぐい近づきながら
彼女の晴れ姿を思う存分愛でた。
よし、じゃあ俺もかっこいい所を見せないとな。
「そういえば商店街のおじいさん達の要望で
何故か私もカラオケ大会に参加することに
なってしまったんだが、
お前も出しものということで
拓人先生と何かやるんだよな?」
「はい、某有名ロックバンドのコピーを。
拓人先生のギターテクニック凄いですよ。
俺も頑張って歌いますので、
是非聞いてくださいね。」
「ああ、頑張れよ。期待しているからな。」
そう微笑んでくれる梅原先生の顔を見ていると、
もうアドレナリンが止まらなくなりそうだ。
よっしゃ、いい所見せて、
最後の花火辺りでバシッと決めてやるぜ。
そう決意を新たにして、俺はエネルギーを溜め込むために
焼きそばをかき込んでいった。
PM3:30
会場は町長のマジックショーでまったりとした
感じになっていたが、
響き渡った俺のシャウトが
その空気を一変させた。
「みんな、今日は来てくれてアリガトーーー!。
これから短い間だが、リーダー兼ギターの小林拓人と、
ボーカル清水渉で送る、"K'z"のライブを楽しんでいってくれ!!
じゃあ、さっそくいってみよう。
曲名は"グレイトソウル”。
みんな、盛り上がっていこう!!!」
俺のテンションの高さと
いつもとのキャラの違いにびっくりしている
梅原先生を始めとした観衆を尻目に、
拓人先生の超絶ギターテクが炸裂する。
おー、と湧く観衆を俺がステージを走り回りながら
さらに煽っていく。
そして俺は歌い出しながら視線を梅原先生にロックオンさせると
そのままサビに入っていく。
俺の全力シャウトが会場を熱く
燃え上げていく。
梅原先生も手を叩きながら乗ってくれている。
「グレイトソウル!!!」
「「「「ハイ!!!」」」
ボン!!!
会場の横から爆発音と共に
花火が吹き上がる。
観客は驚きながらも大喜びだ。
うん、達也君にお願いしていた甲斐があった。
あ、勝手に花火を使うなと秋原さんに
怒られてる。
ホントごめんな。
そんなバックステージの状況を
横目で見ながら、
俺は来ていたYシャツを脱ぎ去り、
上半身はランニング一丁になって
2番を歌い出す。
会場の熱気は高まるばかりで
まるでライブ会場である。
河野を始めとした文芸部の生徒達も
「清水先生、素敵ー」とか
「部活指導もそれくらい、真剣にやりなさーい」とか
「これからはロック清水と呼んでやるぞー」
なんて冷やかしてくれている。
「グレイトソウル!!!」
「「「「ハイ!!!」」」
2番のサビの最後の決めフレーズで
振り回していたYシャツを梅原先生に
パスする。
梅原先生が見事キャッチすると、
周りから
「「ヒューヒュー!!」」
と囃す声がして、梅原先生が
「うるさーい!」
と叫んでいた。
最後のサビ前の間奏は拓人先生の独壇場。
彼の指先から放たれるグルーブ感が
会場中に伝播していく。
「パパかっこいー。」
「パパしゅごーい。」
「あーもう、拓っくんサイコー!!
今夜もその指でイカせてーー!!!」
と家族からも黄色い声援が飛ぶ。
最後の果穂先生の台詞は教育者として
流石にまずい気がするが、
会場は興奮しすぎて誰も気にしていない。
あ、台詞の意味に気づいて真っ赤になっている
田中先生を直澄が宥めている。
あの二人も大分ススんだ気がするが、真相はいかに。
とにかく最後のサビ全力で行くぜ!!!
俺はステージを飛び出し、会場中を駆け回りながら
観客をラストの高みへと導いていく。
そして最後会場の興奮が最高潮に
高まった所でステージに戻り、
会場中と一緒に、
「「「「グレイトソウル」」」」
一体となってシャウトして1曲目が終了した。
拓人先生に続けていって大丈夫か
目線で確認し、了解が得られた所で、
「みんな、盛り上がってくれてサンキュー。
このノリで続けていこうぜーーー!!!」
そのまま2曲目に突入していった。
うろな夏祭りはその瞬間、
野外コンサート会場と化していった。
シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。
ワープして来ました(笑)
夏祭りその1清水と小林先生のライブです。
盛り上げすぎてしまって大丈夫でしょうか?
問題だったらシュウさんいってくださいね。
夏祭り話では
少しずつ色んな方のキャラを
出せればと思います。
問題があったら言ってくださいな。
本当なら元ネタの歌の替え歌もやりたかったのですが、
なろうの規定上まずそうだったので、
例のフレーズだけで。
後半のカラオケ大会どうしようかなー?
次はカラオケ3連発です。
とりあえず、梅原に何歌わせようか?