6月22日 うろなお助け隊
PM5:30
「ということでこれからもうろな町の
各所を繋いで、町を盛り上げて行けたらと
思います。ご清聴ありがとうございました。」
パチパチパチパチ。
俺の今月の連携担当としての
報告が終わると会場から
大きな拍手が沸き起こった。
今日の会議は前回に比べると人数も
少なく来ているのも若手主体だが、
その分だけ実際に動く人、
すでにこれまでに交渉を重ねた人たちが
来ているので反応も上々なようであった。
「それではそれぞれご提案やご意見が
あったら伺いたいのですが。」
前回の会議ではこういう時に
なかなか意見が出なかったが、
今回は矢継ぎ早に手があがっていった。
まずは小林夫妻が
「小学校では明日のケイドロ大会を
足がかりに、南北小合同で週末の
運動やお祭りのイベントを企画していまーす。」
「ショッピングモールさんへのお仕事見学では
南北小混合のグループ分けで活動出来ないか
検討中です。」
続いて梅原先生も
「中学校も先日の文芸部の交流に
引き続き、剣道部で高校との合同練習を
企画している。
また商店街、スーパー、ショッピングモール
での職場体験に加えて、金融や食育に関する
実地授業の開催も検討している。」
田中先生は
「こ、高校としても生徒の校外での活動を
上手く進路に生かしていきたいので、
店舗さんだけでなく、小中学校や病院に警察署、
町役場などでも、本格的なインターンシップを
お願いしているところです。
また『放課後学びの場』ということで
生徒が小中学生の勉強を放課後に
お手伝いする計画も進んでいます。」
と学校関連が先陣をきった。
続いて商店系も
愛しの田中先生に負けじと直澄が
「商店街では高校料理部と
協力して現在商店街がうろな校外の
農家から仕入れている野菜や果物を
使った
『特製うろなミックスジュース』を
開発中でーす!
これ試作品ですので是非皆さん
ご意見くださいなー。」
と笑顔でサンプルを配っていたかと思うと
笑顔を取り繕った鹿島が
「ははは、商店街さん必死ですね。
ショッピングモールとしては
派手な商品開発は行っていませんが、
小学校への出前授業や一日店長企画
などでしっかりと地域に貢献出来ればと
思います。」
と多少挑戦的なアピールをして
直澄と火花をバチバチとばしていた。
その姿を見てあきれた直樹さんが
「恥ずかしいからこんな所でやりあうなアホども。
スーパーとしては総菜コーナーのパートさんと
小中学校の給食スタッフが連携した
『なつかしのうろな給食弁当』を夏休み頃には
だせそうだ。
漁協さんとも連携して、昔懐かしいクジラの竜田あげ
とか再現できないか試行錯誤しているんだが、
おばちゃん達の熱気に少しやられ気味だ。
将来的には生徒の開発する弁当や総菜なんかの
販売もできればいいがな。」
と二人に突っ込みつつ現状の報告と
今後の展望を話してくれた。
その他、警察署から来てくれた池守さんという
警官の方が地域での非行の防止や見回りについて提案してくださったり、
宮崎院長の推薦で来たという若手医師の神原さんという男性が
学校での『朝ご飯を食べよう運動』や地域での認知症のお年寄りも見守り活動
などについて意見を言ってくれた。
その他消防署などまだ訪れていない機関からも
意見が出たのはとても有り難かった。
まだまだ公共機関については十分意見交換ができていなかったが、
積極的に参加してくれる姿勢を見せてくれているし、
今後改めて挨拶に行かないといけないな。
「本当に多種多様な貴重なご意見•ご報告ありがとうございました。
私の力不足でまだ十分にご意見をお聞き出来ていない機関からも
積極的な提案をいただけたのには本当に感謝しております。
今後改めて訪問させていただいた時にはよろしくお願いします。
そしてこれまで訪問させていただいた各学校、商店さん達とも
継続して情報の共有を図ると共に、それぞれの機関だけでは
対応出来ないお悩みの解決に向けて、連携担当として協力していければと
考えております。
町長からは先日『うろなお助け隊』の称号を正式に
認めていただきましたので、是非困ったことがおありでしたら、
私清水と横にいる梅原先生のコンビをお気軽に御呼びください!
二人で迅速に駆けつけさせていただきます!!」
俺は皆さんの提案に対してお礼を言うと共に、
今後の更なる活動の方向について
梅原先生の手を握って、皆さんに示しながら
高らかに宣言した。
梅原先生は
「ちょ、ちょっと恥ずかしいから離せ。」
とはいうものも無理矢理に引きはがそうとはしてこない。
本当この考える会での活動に感謝だな。
「清水先生もお集りいただいた皆さんも
ありがとうございました。
うろなを住民のみなさんが主体的に盛り上げようと
していただけているのは本当に嬉しい限りです。
町役場としても全力でサポートしていきたいと
思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。」
町長さんの締めの挨拶に対して
会場中から大きな拍手が送られ、
第2回の教育を考える会は
前回を遥かに超える大盛況で
幕を閉じた。
今後は町で起こる問題等も
議題に上がってくるだろうから、
和気あいあいとした雰囲気だけでは
終わらないかもしれないが、
この盛り上がりを生かして
頑張って行けたらと思う。
PM8:00
その後小林夫妻、田中先生の
学校組と飛び入りで参加した
直澄と流星で晩ご飯を食べながら、
今日の労をねぎらうと共に
明日のケイドロ大会や
来月始めの夏祭りについて
話し合った。
現在小林夫妻、そして田中先生を
押し切って車で送ることにした
直澄と別れて、
梅原先生と二人でゆっくりと
家路についている所である。
「今日は上手く意見が出て良かったな。
ユキの作品についても、
商店街のマップも作ってとか、
ショッピングモールのギャラリーで
個展を開くのはどうだとか、
学校や病院で何枚か作品を買わせて
欲しいとか引き合いがあって良かった。」
「ユキちゃんも病み上がりですから、
すぐに制作にかかるのは難しいでしょうが、
すでにある作品の購入依頼だけでなく、
新作の話も来たのは良かったですね。
明日はケイドロ大会がありますから、
24日にお見舞いに行って、
その際にこの点については伝えましょうか。
何にしろ、彼女の住む所などが決まれば、
生活に困ることがなさそうなのは良かったですね。」
「そうだな。タカさんが一度来た時に
『大丈夫だから安心しろ。』とか言っていたから、
何とかなるとは思うんだが。
まあ、行く所がないなら私の家に来たらいいさ。」
そんな風にユキちゃんの今後についても話したりした。
彼女の話をする時には梅原先生はいつも以上に
優しく頼りがいがある様子になる。
ある意味母は強しみたいな感じなのかな。
俺はそんな梅原先生の手をそっと握ると
「そうなったら梅雨も含めて3人と1匹で
暮らせる広い家を探しますか。」
「へ!な、お前、何を言ってるか分かってるのか!!」
「まあ、学生時代にそれなりの蓄えは作っていますから。
古い一軒家くらいなら何とかなりますよ。」
「ほ、本気なのか?」
「俺はいつも本気ですよ。
あなたがユキちゃんの幸せを願っているように、
俺の幸せはあなたの幸せだっていうだけです。」
「•••。も、もしそんなことになったら相談する•••」
先生は俺のど直球に真っ赤になって黙り込んでしまった。
実際にはタカさんが色々動いているみたいだから、
そんなことにはならないはずだが、
これは覚悟の問題だ。
それくらいに想っているのだということを伝えたかっただけ。
夏の日はさらに暑さをましており、
この時間になっても涼しさはあまり感じられない。
それでも俺たちは繋いだ手を離さない。
この繋がりが、感じる温もりが、
夏の気だるさに負けることはないだろう。
二人の仲を近づけたひと月は終わりに近づいているが、
来月以降も二人で動いていくなかでこの関係を
さらに深めていき、どこかで一歩踏み出せたらと思う。
そんなことを考えながら、俺は繋いだ手を握り直した。
彼女も握り返してくれたのは気のせいではと思う。
さあ、来月も楽しみますか。
その感触に決意を新たにして、
二人で我が家へと向かって行った。
シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。
作ったオリキャラを一気に出した上に、新キャラまで簡単にですが
出してしまいました。
彼らとの話も他の作者さんのキャラとの絡みに加えて少しずつ
入れて行ければと思います。
あとほとんど名前だけですが、稲葉孝太郎の池守さんをお借りしました。
遠坂さんと葦原君とコンビニで鉢合わせする時にはもう少し絡ませますね。
では一気にワープして夏祭りへと参ります。
ハッスルする清水と着飾った梅原をお楽しみに。