表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/124

6月21日 その3 町長お命覚悟!

PM4:30


「清水先生、お久しぶりです。

活躍は聞いていますよ。

この前は人命救助までされたそうで。」

「いやいや、住民課の榊さんが

連絡してくれたからですよ。

流石、できる町長の下には

できる部下の方が集まるんですね。」


町長室に入ると町長が笑顔で

こちらを迎えてくれた。


忙しい中でもこちらの活動を

把握している辺りやはり

油断できない相手だ。

今回の報告と提案において

町役場側にリスクは殆どないが

心してかかるとしよう。




「梅原先生もお疲れ様です。

今日もお綺麗ですね。」

「そ、そんなありがとうございます。」

「そちらのソファにお座りください。」


この野郎、いきなりうちの梅原先生に

ちょっかいかけやがって!

梅原先生が可愛くて凛々しくて、

ちんまくて反応が面白くて、

単純なようで深く物を考えていて、

豪快なようで母性的で、

冷静ぶろうとしているけど、

どこまでも情熱的で

生徒のことを第一に考えていて、

猫に対してはダダ甘で、

いい匂いで肌がすべすべで、

もうとにかく食べちゃいたいくらい

魅力的なのは当然のことだろう。


そしてそんな梅原先生とこの1ヶ月

この連携担当になったおかげで

大分親密になれたから

この町長に少しは感謝しようかと

考えていたが、気が変わった。

やっぱり対決姿勢でいってやる!




俺は表情を一切変えずにしかし

メラメラと嫉妬の炎を大噴火

させながら町長に勧められた

ソファに座った。

ちなみに隣には梅原先生が

座っているが、その距離は

1ヶ月前に比べてかなり

近くなった気がする。


ふふふ、町長、梅原先生に対して

机を挟んで座っているあなたと

すぐにでも触れ合えそうな位置にいる俺、

この差が大きいんですよ、分かりましたか。



俺がそんな意味不明な理屈で悦にいっていると、

美人秘書の秋原さんが町長と

俺たちにお茶を出してくれた。


「秋原さん、ありがとう。」

「ありがとうございます。」

「秋原さん以前はお世話になりました。」


秋原さんは町長をちらりと一瞥した後、

こちらに笑顔を向けるとお辞儀をして

町長の後方に下がった。

見事な所作である。




な、もしかして自分には秋原さんが

いるから余裕ってことか!

梅原先生は所詮愛人候補に過ぎない

というわけですか!!

町長ーーー、この鬼畜野郎!!!

絶対に一泡吹かせてやるからな。




「それではここまでの連携活動についての

ご報告と今後に向けた幾つかの提案を

させていただきます。

どうぞよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。」


俺は勝手な妄想で町長への敵意を

さらに募らせると、

早速本題を切り出した。


町長、目にもの見せてやりますよ。

お命覚悟!!!

俺はいつもより笑顔を3倍増しにして

全力で説明と提案を進めていった。












「いやー、連携担当を

清水先生にお願いして良かったです。

わずか1ヶ月でここまでの成果を

出していただけるなんて。

小中高のネットワークづくりに加えて、

明後日には地域の人も参加するケイドロ大会

を開いていただけるみたいですし、

すごい実行力ですよね。

学校間での連携の一環として

部活動交流や病院へのボランティアも

やっていただいた上に、

商店街の活性化に向けたキャラクターの提案や

このうろな連携マップまでプロの画家さんに

作ってもらうなんてすごいとしか言い様が

ありません。

本当にありがとうございました。」




話し合いを終え、ニコニコ顔で俺を褒め称える

町長を前にして、俺は笑顔を維持しながらも

忸怩たる思いを噛み締めていた。




この人本当に手ごわい。

こちらの成果を基本手放しで

褒めてくれるんだけど、

こちらの考えている改善点を

的確に指摘してくるし、

こちらの切り札だった

高速道路建設計画についても、

すでに鹿島と連絡を取り合っていたなんて。

あの件に関して今後は町長が思うようにしたら

いいと考えていたが、ここまで自分の手の中に

収めていたとは予想外だ。

あれで一気に勢いを削がれてしまった気がする。


何とかユキちゃんの地図については

使用料は取らない代わりに、

それなりの原作者料を頂いた上に、

明日の会議や広報課を通して

彼女の作品を売り込んだり、

新作の依頼を募ることができるような

形に持って行けたが、

その他の点については大体相手の

ペースでやられてしまった。


もちろんこの人、町のことを

第一に考えているから

問題のあるような内容は

全くなかったが、

こちらの提案を上回るアイデアを

提示され続けたのは、

正直悔しい。




あーー、ギャフンと言わせるはずが、

相手の力量を見せつけられてしまった。

やはり俺の最大のライバルはこの人のようだ。

明日の会議でも今日の提案を練り直して

何とか一矢報いてやりたい。

今日は俺の負けだが、まだまだ

俺たちの勝負はこれからだ。

梅原先生に一番いいところを見せられるのは

俺なんだということを必ず証明してやるからな。



「いや、全ては町長があの場で連携担当についての

提案をしてくださったからですよ。

今日もこっちの用意した提案の更なる改善点を

ご教授いただけましたし、私もまだまだこれからです。

今後共よろしくお願いします。」

「そんなことないですよ。先生が実際の活動を元に

アイデアを出してくださるから、こちらとしても

意見が言いやすいだけなんです。

私も町長としてもっと町について知って勉強して

いかないといけないと改めて感じました。

これからうろな町をさらに素敵な町にするために

是非今後共ご協力ください。」



頭を下げる俺に対して町長は謙遜した上で、

こちらに握手を求めてきた。


俺はその手を握りながら、

負けん気と同時に久しぶりに、

本気で張り合いたい相手に出会えたことに

対して大きな喜びも感じていた。




この人とこの町を盛り上げていくことを通して、

自分はさらに成長できるんじゃないか。

そうすれば俺は梅原先生に対して

大事なもう一歩を踏み出せるのではないか。

最後の最後で望むものに手を伸ばせなかった

俺の何かを埋めてくれるものがこの町にはある。

そんな期待を抱かずにはいられなかった。




ニコニコ微笑む町長と不敵に笑う俺の二人を

秋原さんと梅原先生は優しい笑顔で見守ってくれている。


うろなの女神達の祝福を受けて、

決意を新たにした俺たちは

明日の教育を考える会に向けて

最後の詰めを進めていった。


うろなの未来は俺たちが育てる。


そんな熱気が夕方の町長室に

満ち満ちている気がした。

シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


前半で町長への被害妄想を爆発させていた清水ですが、

やり取りの中で町長を改めてすごい人だと尊敬し直しました。

やはり町長さんがいてこそのうろなですね。

これからはいい意味でのライバル意識を町長さんに

持って清水は頑張ってくれると思います。


それでは次に第二回教育を考える会の様子を簡単に書いて

夏祭りへとワープできればと思います。

次も町長に登場していただくと思いますが、

シュウさんよろしくお願いしますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ