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6月19日 その2 妻と娘と妹と

PM5:30


「それでね、そこの清水先生が

涼の手をいきなり握り出したんだよ!

萌ちゃんも気を付けないと襲われちゃうよ!!」

「香乃子。恥ずかしいからあんまり人に

その話しないでよー。」

「まあ、清水のセクハラはほぼ挨拶みたいな

ものだしな。

安心しろ、あいつは鬼小梅命だから、

生徒に実際に手を出したりはしないさ。

多分•••」


おい、水野、そう言いながらもの凄く

疑わし気に俺を見るな。

当たり前だろ。




「ふふふ。やっぱり中学校楽しそうだな。

ねえ、もし学校に通えるようになったら、

萌も文芸部に入っていいですか?」

「もちろんよ。萌ちゃんなら大歓迎よ。」

「萌ちゃんはどんなジャンルが好き?」

「そこの顧問があんまり来ないから

好き勝手できるぞ。」




朗読会終了後、

文芸部の3人を連れて

鹿島萌の見舞いにやって来た。


始めはお互い緊張気味だったが、

萌ちゃんが俺のことを褒め出して、

桜沢が「そんなわけない!」

と噛み付き出した辺りから

大分盛り上がって来たようだ。


まあ、仲良くなってくれるなら、

俺をダシにしても全然いいんだが、

折角俺を尊敬してくれている

子に変なこと吹き込まないで

くれよ。

鹿島兄に伝わったら、

マジで排除されかねないだろ。




「気があったようで良かったよ。

先生はちょっと野暮用で席を

外すから、しばらく

中学生同士で話をしておいてくれ。」

「清水先生、本当にありがとうございました。

萌、こんなにお友達ができてすごく嬉しいです!」

「あー、もう、萌ちゃん可愛いー。」


桜沢が萌ちゃんに抱きつき頬擦りしていた。

恥ずかしがっている萌ちゃんと

その横で笑っている河野と水野。

うん、この組み合わせも意外と

悪くなさそうだ。


もちろん彼女の病状が良くなって

学校に通えるようになるのが

ベストだが、時々この3人を

連れて来てやるか。

まあ、気のいい奴らだから、

自主的に見舞いに行っても

くれそうだが。

さてさてでは

もう一人の見舞いに行きますかね。




俺は和気あいあいとした

中学生組の様子に目を細めると

病室を後にした。






「失礼しまーす。

梅原先生、ユキちゃんの

お加減はいかがですか?」

「お、清水か。

朗読会行けなくてすまんな。

またユキが点滴抜いちゃって

さっきまで大騒ぎだったんだ。」

「だって動きたかったんです。

司先生、騒ぎ過ぎ。」

「いや、ユキ、あれ、

心臓の動きを整えるやつだから、

間違ったらまた心臓止まるんだぞ。

担当の看護婦さん、大分やつれていたし、

全くこの子は本当に手がかかるな。」


そう言いながらも梅原先生は

優しく微笑みながら、

ユキちゃんの頭を撫でていた。

その姿はまるで駄々をこねる

娘を宥める母親のようである。




ここ2日間、梅原先生は

放課後毎日彼女のお見舞いに行っている。

金曜日の町役場訪問にはついて

来てくれるようだが、

それ以外は久しぶりに

単独行動が増えそうだ。

少し寂しい気持ちもあるが、

母性溢れる梅原先生を見られるのも

非常に胸がポカポカする。

こんな彼女の姿を見られるのも、

頑張ってユキちゃんを助けた

ご褒美なのかもしれない。




「まだ、退院は先なんですか?」

「いや、さっき宮崎先生が来てくれて

話をしたんだが、

回復自体は非常に順調で、

肺炎はほとんど治ってきているし、

病状だけならもう来週頭に退院しても

大丈夫くらいならしい。

もちろん体力が落ちているから、

そんな訳にもいかないだろうが。」

「仕事早く再開しないと•••」


ユキちゃんはすぐに退院出来ない

ことに不満であるようだ。

脱走されたら大変だから

少し安心させておくか。


「ユキちゃん、雑誌社の人や

合同展の担当者には連絡入れておいたから

大丈夫だよ。

締め切りは多少延ばしてもらえるらしいから

心配しないで。」

「勝手なことしないでください。

あー、でもやっぱりパソコンくらいは

欲しいな。」

「ほらほら、そろそろもう一度横になれ。

寝てばっかりもつまらないだろうが、

休んだ分だけ退院が早まるんだ。

今日も賀川さんが来てくれるかもしれないんだろ。

それまでゆっくりしておけ。


清水私はもう少しユキの所にいるから、

生徒達のこと頼むな。」

「了解しました。

ではユキちゃんまた来ますね。

お大事に。」




そう言って俺は特別室から出た。

うん、色々危なっかしい子だけど、

梅原先生がいれば何とかなるかな。

とはいえ、メールで宮崎先生から、

起こしたトラブルや検査結果の

異常さなんかも聞いているから、

こちらとしても対処してあげないとな。


それに退院後どうなるにしても、

先立つものが必要だろう。

週末の教育を考える会で

彼女の作品の売り込みでもしてみるかな。







そんなことを考えながら

萌ちゃんの病室まで

戻ってくるとさらに

騒がしい声が聞こえて来た。


「どうだい、萌ちゃん、

今日の’オオカミ美女’楽しんでくれたかな。」

「オオカミ大王の大活躍も

その目に焼き付けてくれたかい。」

「何、美女とか自分で言っているんですか、

高城先輩!

香月先輩もあなたは単なるやられ役じゃ、

ないですか!

萌ちゃんごめんね、アホな高校生が

変なお話しちゃって。」

「ううん、すごく面白かったよ、綾瀬お兄ちゃん。

綾瀬お兄ちゃんは高城お姉さんの本物の

恋人さんなの?」

「ふ。そうさ。彼は私の愛の奴隷さ。」

「そして俺は肉奴隷だ。」

「中学生に何を吹き込んでるんだ、

あんたらは!!

萌ちゃん、全部嘘だからね。

なるほど、みたいな顔しないでよ!

中学文芸部のみんなも引かないでーーー!!!」


どうやら高校文芸部のメンツも

来てくれたらしい。

まあ、賑やかで何よりだ。

ユキちゃんは本来なら高校生だし、

今度高校の3人を見舞いに誘ってみようか。

このおかしな連中と会えば、

暇がまぎれるだけではなく、

なんかインスピレーションが湧くかもしれないし。

田中先生に相談してみますか。




病院にあるまじき騒がしさを

俺は逆に頼もしく思いながら、

生徒達のいる病室へと入って行った。

シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


引き続き深夜さんから中学文芸部の3人を

シュウさんから高校文芸部の3人をお借りしています。

何かあればご連絡を。


また桜月りまさんからユキちゃんをお借りしています。

母親モードの梅原ですので、どつき漫才はしませんでしたが、

いいですかね?

これじゃ不満だ、という場合はご連絡ください。

もっとカオスにします。


是非みなさん、うちの可愛い妹とも絡んであげてくださいね。

男性があまり構いすぎると、超絶シスコン兄貴が

ショッピングモールから飛んでくるかもしれませんが。


次は21日金曜日に町役場にお邪魔したいと思います。

企画課のみなさん、町長さんお待たせしました。

是非、清水•梅原と遊んでやってください。

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