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6月17日 その1 森の幽霊救出大作戦

PM3:00


校門の前で待っていると呼び出したタクシーが

やってきたと同時にジャージ姿の梅原先生が

慌てて駆け込んで来た。




「し、清水。お前6時間目の授業はどうしたんだ!?」

「弁解は後で詳しく。

うちのクラスですし、とりあえず自習にして、

監督を木下先生にお願いしたので大丈夫です。

先生の方もこの後の予定は大丈夫ですか?」


「あ、ああ、この時間私は授業がないからな。

部活の指導も自主練になると部長に

伝えてもらえるよう、3年の先生に頼んで来たから

問題ない。

校長や教頭も『いいから行け』とだけ言っていたから、

一応謝って出て来たんだが、そもそも一体何があったんだ?

というか、なんだその荷物は?」


「なら出発していいですね。

よし、あとは車内に持ち込もうか。

とにかく車に乗ってください。

事情は道中で話します。

運転手さん、バス停『うろな家前』まで

大急ぎでお願いします。」


俺はトランクに荷物を詰め込むと

戸惑う梅原先生を強引に車内に押し込み、

運転手に出発を促した。




可能な限り大事にはしたくないが、

それも状況次第だ。

念のため一応用意していた”あの装備”が役に立つ可能性が

出てくるなんて•••。


まあ、それは最悪の場合だけだろうし、

それよりも保健室で調達したものの方が

使う可能性は高いだろう。


しかし学校だからトラブルで着替えが

急に必要になることもあるんだろうが、

ジャージの上下はまだしも、

昔使っていたらしい旧式の体操服やブルマ、

はたまた女性ものの下着まであったのは驚いたよ。


その他にもタオルや毛布、そして

解熱鎮痛剤や栄養剤、生理食塩水にスポーツ飲料まで

いきなりのお願いにも関わらず用意してくれた

保健の高橋先生には感謝だが、

あの人もホント何者なんだろう?

例の認定の件で一度挨拶をしていたけど、

絶対ただの保健の先生じゃないよな。

年齢不詳だし、あの泣きぼくろが

男心をくすぐると年配の先生方は言ってたけど、

俺には寒気しか感じないんだが。

萌ちゃんの件もあるし、

今後ともお世話になるんだろうが、

深入りしすぎないように気を付けよう。




ああ、もうそんなことは後回しだ。

とりあえず、病院、榊さん、田中先生、直澄の順に

電話だな。

梅原先生への説明はその後だ。

おっしゃ、久しぶりの人命救助頑張りますか!










「ということでベットを一つ空けていただけると

助かります。

あと、最悪の場合には消防署に救急車を要請しますので

その際に対応してくださる先生を決めておいていただけると。

ああ、先生自ら!本当にありがとうございます。

ではこの前お話ししたようにweb通信で中継したいと思いますので、

現地につきましたら、連絡を入れさせていただきます。

おそらく4時半から5時頃になるかと。」




「前田さんに、賀川さんですね。

現地に二人いらっしゃると。

ではどちらかにうろな家前まで

降りて来ていただくよう伝えてくださいますか。

こちらも土曜日に行きましたが、念のために

案内していただけると助かりますので。

ちなみに携帯の番号は•••、分かりました。

私の番号も教えておいてください。

何かあったら一報をと。

児童相談所にはあとでこちらから事情説明に

いきますので、一旦ストップで。

向こうから連絡が来たら『学校側で対応している』

でお願いします。」




「田中先生、急にすいません、

この前のお話で伺った、本来2年時に在籍しているはずの

宵乃宮雪姫(よいのみや ゆき)の情報お願いします。

•••はい、もちろん保護法の問題はありますが、

恐らく彼女の身が危ないんです。

•••ありがとうございます!

•••そうですか。やはり彼女が宵乃宮さんみたいですね。

母親と二人暮らしのはずだが、母親とも連絡が取れなくなっている。

中学からの申し送りでは美術で入賞レベル以上。

ビンゴ!直澄の言ってた『よいの ゆきひめ』ってやっぱり宵乃宮さんか。

あ、こっちの話です。

詳しくは後日高原直澄を高校に行かせます。

なんで彼がって?義兄弟だからです!」




「直澄、店番大丈夫か?

おじさんがリハビリがてら座ってるのか、

ちょうどいい。

この前言ってた『よいの ゆきひめ』っていうイラストレーターの

情報と作品を俺のパソコンメールに送ってくれ。

雑誌にも載ってたんだよな。

それなら雑誌社、雑誌名、掲載号、ページまでよろしく。

あと、それが終わったらうろ中まで来てくれないか。

剣道部の自主練の監督ともしもの時の要員として

待機しておいてくれ。

木下先生の車で北の森まで来てもらう可能性があるんだ。

ん?何か、報酬はないのかって。

聞いて驚くな。

田中先生とのデート権だ!

だから、大急ぎで•••、切れた。

しかしさすがだな、すでにメールが来ている。

ふふふ、あいつの田中loveもなかなかだな。

千秋君達に負けてなるものか、って感じか。

意外と借りではなくて貸しにできそうだ。」




「なあ、清水、流石にそろそろ説明して欲しいんだが。」

「あ、梅原先生、放っておいてすいません。

電話口で多少は事情分かりましたか?」


困った顔でコチラを見上げてくる梅原先生に

気づいて、俺は改めて今回のミッションに

ついての説明を始めた。

話が進むにつれて梅原先生の目がより心配げに

しかし真剣なものになっていく。

その目の鋭さは剣道で立ち会った時でさえ

軽く凌ぐレベルである。

困っている子のために駆けつける。

彼女にとっては真骨頂とも言える場面だろう。


そんな彼女の表情を見ていると

宵乃宮さんには悪いが、

今回のことをラッキーにさえ思えてしまう。

梅原先生の本気を是非この目に焼き付けたい。




さてさてそれじゃ良い所を見せられるように

俺もいっちょやりますか。

デスロードの疲れも昨日藤堂先生に施術してもらって

ほとんどとれているし、

情報も十分集まりそうだ。

最後の手段は流石に使わずに済むことを願いたいが、

手技の腕前も落ちてはいないはずだ。

最悪の事態になんか俺が絶対にさせない。

頑張って待ってなよ、ユキちゃん。

森の幽霊、ゲットしてやるぜ!


シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


この日のお話は桜月りまさんの「うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話」

とリンクしております。

是非そちらもお読みになってからご覧いただけると幸いです。


キャラとしては桜月さんのキャラのみなさんだけでなく、

シュウさんの榊さんには会話相手として、

とにあさんの千秋君、綺羅ケンイチさんの藤堂さんには

名前だけですがご登場いただきました。

問題がありましたら、気兼ねなく言っていただければと思います。


さらにオリキャラも久しぶりの登場の木下先生に、

名前は出ていないけど萌ちゃんの話で出した院長先生、

そして保健の高橋先生という完全新キャラまでだしてしまいました。


大事にしないつもりだったんですが、

清水は”生徒”の危機には準備で一切手を抜かないので

こんな感じになってしまいました。

最終的には助ける相手の希望に沿うよう軟着陸させる

のでしょうが、本当何をやるのにも大げさな奴です。


では実際の救出劇をお楽しみに。

梅原も活躍予定です。

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