6月12日 発展途上
PM0:30
「ごちそうさま。」
今日も梅原先生の愛妻弁当は美味だった。
カボチャの煮物の甘さがたまりません。
おかげで週末のダメージからは
ほほ回復出来た気がする。
先週までかなりのハードスケジュールで
挨拶回りを進めてきたおかげで、
とりあえず挨拶しておくべき所は
大体回れた気がする。
あとは会議の前に町長の所に一度
挨拶に行かなければならないだろうが、
それは来週会議の直前あたりでいいだろう。
そこまでの報告もした方がいいだろうしな。
ということで今週は誰かに挨拶をするというよりも
うろな町の周辺各地をまわろうと考えている。
各学校での活動や合同企画の開催場所としても
周辺部について色々知っていた方がいいだろう。
東西南北の代表みたいな人たちからは
「本業が忙しいから直接会えないけど、
好きに回っていいよー。
話を通しておくから。」
と快い返事をもらった。
梅原先生と二人で自由に散策させてもらおう。
回復したとはいえ病み上がりだからゆっくり
各地を見て回ろう。
しかし昨日、一昨日は休憩も兼ねて
久しぶりに文芸部にいったけど、
みんなひどいよなー。
俺が自分から姿を見せるのが
そんなにおかしいかよ。
ちなみに
「槍でも降るの!!!」
と叫び出した桜沢や
「ついに鬼小梅に愛想を尽かされたか。」
とぼそっと言った水野の反応よりも、
目をパチクリさせて目の前の状況が信じられない
という感じの河野の反応が一番傷ついた。
涼、お前だけは快く迎えてくれると思っていたのに。
まあ、その仕返しではないが、
高校文芸部との連携の話や
病院学級への朗読ボランティアと萌ちゃんとの懇談など、
今後の活動予定をしこたまぶっこんでやった。
桜沢は
「なに、勝手に決めてるんですか!!」
と激怒していたが、
萌ちゃんの事情を話したら、
ほとんど泣きながら同意してくれた。
気が強い割に涙もろいな。
よし、来週も色々忙しそうだし、
今週は目一杯羽を伸ばしますか。
その前に午後の授業頑張ろう。
PM5:00
南うろなから地下鉄に乗換え、
二人で一番南の沿岸部にある工場地帯までやってきた。
まだまだ工事中の場所も多く、
産業の集積が十分であるとは言えないが、
食品加工工場や精密機械部品工場、
石油タンクに穀物サイロなど
なかなか色んな施設を見ることが出来る。
代表者の人に聞いたら工場見学などを
させてくれる施設も多いらしい。
「うちの学校でも毎年どこかの施設で
社会科見学させてもらっているぞ。
生徒達には見所が多い製鉄系や
お土産が嬉しい食品系が人気だな。」
梅原先生の話では、すでに色んな
施設との連携が行われているらしい。
何でもこの辺りは本来はもっと開発が
進んでいる予定で、
当初の計画ではより埋め立て地を
広げて何と
「うろな空港」を作ろうなんて案まであったらしい。
さすがに環境を壊しすぎるしやりすぎだ
と前町長が止めたらしく、
工場地帯の発展がまだまだ途上にあると
いうことで企業の人たちも
積極的に地域と結びついて、
人材の確保や工場拡大への地域の理解を
深めようとしているらしい。
ただもっと急激に発展させたいという
人たちもいるようで、
その人たちが町議会の反町長派と
結びついて、先週握り潰した
「高速道路建設計画」などに結びついて
いったようである。
なるほどこの南の地域はうろなの発展の
キーであると共に、
緑豊かなうろなの現状を脅かす存在でも
ある訳だ。
今後の連携を考えて行く上では、
この南地区の発展の歴史についても
もう少し考えて行く必要がありそうだ。
ブオー。
「お、船が出港するみたいだな。」
梅原先生の声に振り向くと、
原材料や製品の積み出し港となっている南うろな港から、
大型タンカーが出港しようとしていた。
うろな町から世界へと運ばれて行く訳か。
そういう原材料や製品の世界的な移動を追う
とかいう授業を社会科の先生と一緒にやれたらいいな。
「おい、清水、夕日に工場群が映えて結構きれいだぞ。」
海の近くの手すりにもたれかかった梅原先生が
俺を手招きする。
今週の東西南北デートの中では
一番地味になってしまうかと思ったが、
これはこれで味があるな。
今度観光課の人に
「カップルで行く夕方•夜の工場ツアー」
とか提案してみようかな。
夕日の中で工場をバックに佇む梅原先生に
姿に半ば見とれながらも、
俺はこの地区をうろな町の魅力としてどのように
アピール出来るかについて思いを巡らせていた。
折角各地域を回るのだから、
「うろな観光マップ」みたいなものの試案を作りたい
ものだ。
金曜に行く予定の東の沿岸部はうろな観光の拠点だが、
それ以外の地区とも組み合わせて
「住むうろな」だけでなく、「来るうろな」としての
発信方法を考えておこう。
「高速道路建設計画」を潰しちまったんだから、
それくらいの罪滅ぼしはしてやっていいだろう。
よし、今週も楽しみながらやって行きましょう。
俺は今週の目標を改めて確認すると
梅原先生の方に歩いて行った。
海風によって運ばれる潮の香りが
俺の気分をどこか高揚させてくれる気がした。
シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。
今週(正確には先週ですが)はゆんるりと行けたらと思います。
水曜日は南の工場地帯。
出身が関西の港町(工業系)だったので、
思い入れはあるのですが、
とりあえずこんなもので。
他の地区はみなさんが色々書かれているので、
この地区舞台にした話を本作ではどこかで考えていこうかなと思います。
深夜さん、中学文芸部のみなさんお借りしました。
色々連れ回してしまう予定ですが、
大丈夫ですか?
問題がありそうだったら、言ってくださいね。
あとシュウさん。
舞台設定に「南:埋立地で工事中だったり、工場が立ち並んでる」
とあったので、沿岸部の工場地帯って感じにしましたがいいですか?
東にも港があると思うので、一応「南うろな港」とか名付けましたが、
別の構想があったらご連絡ください。
修正します。
次は金曜日に東の砂浜へ行きます。
天狗仮面との出会いは三衣さんが書いてくれたので、
その前後でも書きましょうか。
海の家にも行きたいですね。
とにあさん、よろしくお願いしまーす。