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6月9日 雨上がる

PM1:00


「うなー」

「どうしたんだ梅雨?

ん?餌入れの周りをうろうろして、

お腹が減ったのか?

お、確かに全部なくなってる。

お前もよく食べるようになったなー。

よし、ちょっと早いがおやつをやろう。」




猫の鳴き声と女性の声がする•••、

って梅雨と梅原先生に決まっているか。


今、何時だ?

午後1時、ってもう日曜!

俺、ほぼ丸一日まどろんでいたのか。

うわ、体痛てー。

ずっと寝てた影響かな。


ああ、でも頭ははっきりしているし、

熱もひいたみたいだ。


何とか休み中に体調が戻って良かった。

梅原先生、ずっと看病してくれていたのかな。

本当に有り難い限りだ。

よし、取りあえず、起き上がってお礼を。

•••、ぐは!?




ベッドから起き上がった俺が目にしたのは

梅雨に餌をあげている白衣の天使、

ナースのコスプレをした梅原先生だった。


鼻血が出るのを必死に押さえながら、

俺は自分が本当に目覚めているのか、

若干不安になった。




「ん?清水、ようやく起きたのか?

お前今度はちゃんと意識はあるか?

んー、その様子なら大丈夫そうだな•••。

全くお前が今朝一回起きた時も夢見心地だったから、

心配にしていたっていうのに。

果穂に『どうやったら本当に起きているか分かるんだ?』

って聞いたらこの格好を勧められてんだが、

効果は確かだったようだな。

・・・正直自分がいけない領域に

足を踏み入れてしまったようでなんか嫌だが。」



ティッシュ箱を握りしめている

俺を見て、先生はどこか影のある表情でそういった。

影のある看護婦さん•••、

やべー、風邪が治ったと思ったら、

出血多量で死にそうだ。




「はー、アホやってないで、

一回シャワー浴びてこい。

多分一昨日も入っていないんだろ。

それまでに昼ご飯を用意しておいてやるから。」


そう言って梅原先生は俺を着替えと

共に脱衣スペースに押し込んだ。




先生、すでにうちのタンスの

中身把握してるんですね•••。

俺のパンツを見つめる梅原先生。

ボタボタボタ。

やばい、こんな想像していたら

身が持たない、さっさと入ろう。


何とか気持ちを切り替えると、

俺はいつ着替えさせられたのかも

分からないパジャマを脱いで、

風呂場へと入って行ったのだった。









「あー、ごはんがおいしい。

先生、おかわりいいですか?」


「いきなり、たくさん食べたら

胃がびっくりする。

晩飯は腹持ちのするものを

作ってやるから今はそれで我慢しておけ。」


「はーい。でも先生、俺がシャワーを浴びている

うちに着替えちゃったんですね。

折角なら憧れのお医者さんごっこならぬ、

看護婦と患者さんごっこしたかったのに。」


「•••、あー、なんで私はこんなド変態のために

稽古を休んでまで看病をしてやったんだろうか。

ほっといてのたれ死なせていた方が

世のため、人のためだったのではないだろうか。」




ワンピース姿になった梅原先生は

調子を取り戻した俺にあきれ果てたように

ため息をついていた。


「ひ、ひどい、ちょっとしたお茶目だったのに。

なあ、梅雨、お前はご主人様が元気な方がいいよな。」

「うなー」

「そうだよな、そうだよな。

お前は分かってくれるよなー。」


俺は珍しく膝に乗ってくれた梅雨を

わしゃわしゃしながら、食べ終わった食器を片付けていった。




「それでこの後はどうするんだ?

病院は休みだろうから、

明日の帰りにでも念のため行けばいいだろうが、

少し外に出るか?

雨も上がって、いい天気だし、

体を動かしてみたらどうだ?」


梅原先生に言われて外を見てみると、

昨日までの長雨はどこへやら、

快晴といっていい天気になっていた。


確かに体動かさなさ過ぎて

痛いくらいだし、散歩にでも行ってみるか。

そういえば梅雨がうちに来てから一週間だし、

一回クリニックに見せに行ってみるか。


「じゃあ、戸津先生の所に行きがてら散歩に

いきません?

一度梅雨のこと見せておきたいですし。」

「そうだな。元気に育ってるみたいだが、

まだまだ仔猫だしな。

よし、私は食器を洗っておくから、

清水はキャリーバックを出しておいてくれ。

あと梅雨が痛くないように下にひく、タオルもな。」




そう言って立ち上がった梅原先生は、

ちゃぶ台の上の食器をまとめると

流しへ持って行った。


俺はその後ろ姿に何かほっこりしながら立ち上がると

押し入れの中を物色しはじめた。








戸塚アニマルクリニックまで

二人でゆっくり歩きながら向かっていると、

『とうどう整体院』と書かれた看板が目に入った。


「整体か。

おい、清水、日曜も診療していたはずだし、

ちょっと行って来たらどうだ?

二日間も寝込んでいたから、体が痛いだろう。」

「そりゃ、痛いですけど。

でも整体院の先生っておっかないイメージがあるんですよね。」

「ははは、ここの藤堂先生もその例に漏れんがな。

しかも武道の有段者、かなりの使い手のようだ。

ただうちの生徒も何度もお世話になっているし、腕はいいぞ。

最近若い女の整体師さんも入って来たみたいだから、

お前としてはそちらに当たった方が嬉しいか?」


そう言ってこちらを見上げて来る梅原先生の

表情に嫉妬を見いだした俺は、

自意識過剰なんだろうか?

まあ、でも勧めてくれているのを

無下にするのもなんだし、

ちょっと行ってみますか?


「俺はもう梅原先生にしか反応しませんよ。

じゃあ、折角なのでやってきますけど、

先生はどうするんですか?」

「う、お前は良くそんな台詞真顔で吐けるな•••。

私は梅雨を連れて戸津先生の所に行ってくるよ。

多分お前の方が時間がかかるだろうから、

終わったらこちらに戻ってくる。

もし早く終わったら連絡をくれ。

よし、梅雨、行こうか。」

「うなー」




梅原先生は顔を赤くしたまま、

キャリーバックを俺からひったくると

そのまま走り去っていった。


さて俺もさっさと入るとしますか?

「お兄さん、見せつけてくれますね。」

「はい?」


俺が振り向くと筋骨隆々たる壮年の男性が

仁王立ちしていた。


「私はこの整体院の院長で

藤堂義幸(とうどうよしゆき)と申します。

いやいや、そろそろ閉めようかなっと思っていたら、

お客さんの声が玄関で聞こえていたのでね。

一声かけようと思って、近くまで来てみたら、

中々お暑いことで。

若いってのはいいですね。

それじゃあ、”みっちりと”ほぐしますので、どうぞこちらへ。」

「へ!?い、いや、確かにお願いしようとは思っていましたが、

藤堂さん、何か肩に手が食い込んでいるんですけど。」

「気のせいじゃないですか、今日は星野ちゃんもいないし、

静かに過ごせるなーと思っていたのに、

店先でいちゃいちゃ騒ぎ出したバカップルに

ちょっとイラッときたなんてことありませんよ。」

「絶対怒っているでしょーーー。」


俺は院長さんに引きずられるようにして

とうどう整体院に入って行った。






そこからの一時間で俺の体の痛みはすっかりなくなった。

ただし、その一時間の間で俺が味わった痛みは、

寝込んでいたことによる体の痛みの

数倍以上だった気もするが。


この院長先生、実はビストロ『流星』の

葛西先生のおじさんらしい。


また一人この町に俺が手も足も出ない人物が

現れた気がする。


シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


清水復活。そしてナース梅原投入。

梅原先生、だんだんコスプレに対して

抵抗が薄くなって来ています。

これからもどんどん着させて行きたいと思います。


綺羅ケンイチさんの藤堂先生お借りしました。

これくらいのお茶目は大丈夫ですかね?

日曜日は早めにしまるとのことで、

2時から4時の間くらいのお話ですが、

その点についても問題があったら

ご指摘いただければと思います。


本当は戸塚アニマルクリニックで

梅雨と時雨さんの出会いとかも

やりたかったのですが、

現在に追いつくためにまた今度にしようかと思います。


次は予告通り水曜日までビューンと飛びます。

この週は各地をほのぼの回るのを中心にしたいので、

他の作品の方との絡みを増やして行ければと思います。

みなさんよろしくお願いします。

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