5月31日 その5 痴漢プレイ
PM6:15
若干雨あしは弱まっていたが、
まだ警報も出ていることもあり、
電車にのって直帰ということになった。
ホームで電車を待っていると
梅原先生が俺の方を向いているのに
気がついた。
それが
「キャー、さっきの清水かっこ良かったーーー」
みたいな視線だったら良かったのだが、
先生の視線はどこまでも冷たかった。
「梅原先生、そんな目で見ないでくださいよ。」
「この詐欺師。女たらし。
私に言ってる言葉も
田中先生に言ったような嘘八百なんじゃないのか。」
うわー、やっぱりあれが結構与太話まじりの話術で
あることに勘付かれてるー。
いつもならセーブしてやるんだけど、
今日は梅原先生に触発されて久しぶりに全力を
出しちゃったからな。
変な言い訳をしても無理そうだし、
よし、ここは思い切って攻めよう!
「梅原先生、今日はすごくかっこ良かったです。」
「ふん、お前のおべんちゃらなど今は聞きたくない。」
「先生の教師としての心構え、本当に感動しました。
俺も教師としてまだまだだと気づかされました。
あそこから田中先生を説得しようと頑張れたのは
すべて梅原先生のおかげです。
ありがとうございました。」
俺が先生に頭を下げながら、ちらっと先生の顔を盗み見ると
すでに怒った顔は大分、緩んでおり、
ほのかに顔が赤くなっていた。
「そう言うお前は本当にずるいな。
そんなこと言われたら邪険にできないじゃないか。
私だって色々言ってしまって恥ずかしいんだ。
あんまり思い出させるな。」
そう言ってもじもじしている先生の姿を見ていると
色々たまらなくなって来た。
「梅原先生、俺、あなたのことが改めて好きになりました。」
「!!!。いきなり何言い出すんだ。こんな時に冗談はよせ。」
「いえ、本気です。今日の先生の姿を見て惚れ直しました。」
俺は先生との距離を詰めると、
逃げようとする先生の手を掴んだ。
「お、お前はいつもそんなことを言うが今回はだまされないぞ。
大体私とお前では10歳も年が離れているんだぞ。」
「年齢なんて関係ありません。
先生はいつも綺麗で、凛々しく、頼りになって、
それでいて守ってあげたい。
俺にとってそんな存在です。」
「ちょっと、お前、ホントに本気で•••」
このまま押し切ってやれ。
俺が心の中でそう決意した瞬間だった。
「いや、年齢は気にしてください。
女子高生相手に何やってるんですか?」
後ろから肩をつかまれながら声をかけられ、
びっくりして振り向くと、
そこには怖い顔をした駅員さんが立っていた。
「えっと、どんな御用で。」
「他のお客さんからサラリーマンが
女子高生に迫っているって通報があったんですよ。
あなた、10歳”年下”の学生に迫るなんて何考えてるんですか?
とにかく駅長室でお話を伺いますからご同行ねがえますね?」
「いや、彼女は同僚で。」
「うろな高校の制服着た同僚がいるわけないじゃないですか。
いいから来てください。」
し、しまった梅原先生がうろな高校の制服を
着たままであること完全に忘れてた。
そりゃ端から見たら、ロリコンの変態だよな。
やべー。
「ちょっと梅原先生、助けくださーい!」
「あ、あ、あ。」
「怖かったですよね。もう大丈夫ですよ。」
「い、いや、ちが。」
「何も言わなくていいですよ。痴漢は捕まりましたから。」
梅原先生は混乱した上もう一人の駅員さんに
引き止められてしまっていた。
このままだと本気で痴漢で逮捕されるーーー!!
「俺は無実だー!!!」
テンプレのような台詞を叫びながら
俺はうろな駅の中を衆人環視のもと
駅員さんに引きずられていった。
ちなみに俺の容疑が晴れ、
無事に釈放されたのはそれから2時間後の
ことであった。
「せ、先生がかばってくれたおかげで助かりました。」
「•••」
「いや、勘違いするなんてひどいですよね。
真剣な告白だったのに。」
「•••」
「ちゃんと言い訳しても聞いてくれなくて
おかしな理由に落ち着いてしまいましたけど、
べ、別に記録に残る訳ではないでしょうから、
大丈夫ですよ。」
「•••(プルプル)」
「いやー、『彼女に制服を着せての合意の上での痴漢プレイ』
なんて理由を信じるなんて、お前らの方が変態だろって
感じですよね?
せ、先生?聞いてます?」
「•••、う、うー!!!」
俺がそう聞いた瞬間
どうやら梅原先生の堤防が決壊してしまったらしい。
「バカ。アホ。痴漢。ロリコン。大変態ーーー!!!
お前のせいで私は
『彼氏に頼まれたら公衆の面前で痴漢プレイにも応じる変態痴女』
ってことにされてしまったじゃないか!!!
私もう駅員さんの目が気になって電車に乗れないよ!!!
うえーん。」
先生は大声で泣き出すとそのままどこかに走り去ってしまった。
俺の周囲では乗客達がひそひそと内緒話を始めている。
うわー、こりゃ明日のペットショップの件は無理だな。
というか、そもそも、こんなことが学校や生徒達にしれたら•••。
ま、梅原先生と俺が恋人同士っていう噂が伝わったんだとしたら、
それでもいいか。
さてさて梅原先生を慰める手段を考えましょうかね。
しかし、すでに平常運転に戻っている
俺にとってその状況は大したことではなかった。
俺は周りの客に、どうもー、と手を振りながら、
家へ向かう電車のホームへと移動して行った。
シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。
長かった高校訪問の締めは完全なバカ話です。
痴漢は犯罪です。
駅員さんのシフトが分からなかったので、
誰なのか一応性別も分からないようにしましたが、
おじぃさん、もしよければ補足話とか書いてもらえるとすごく嬉しいです。
次回は予告していたように
清水と梅原で綺羅さんの『流星』へ行きたいと思います。
お騒がせしますがよろしくお願いします。