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11月30日 花嫁奪還大作戦その9 咲けよ、悪の華!海の奇跡に微笑みを。

PM2:47


「穴場を教えてください。オジーサマ。」

「へ?」

「フォフォフォ。ストレートな所もなおいいのー。

よしよし、ではあの子にも教えていないとっておきを教えてあげよう。」


ゆんわりとした雰囲気の中で山辺の成長を実感していたのだが、

当の本人はいたって自然に穴場を組合長から聞き出していた。



あれ?

山辺、普通にやる気満々だったのか。

・・・本当にこの年頃の女子の内面は読めない。

あー、桃香が大きくなったら一体どうなるんだろうか?



「ありがとうございました。じゃあ清水先生、急ぎましょう!」

「え、ああ。

って、ちょっと山辺!

腕を引っ張るなって!!」

「時間がないんですから、早く!!」

「頑張るんじゃぞー。」


まだ生まれてもいない長女の、

中学生になった頃に対する俺のアホな心配など完全に無視して、

山辺は組合長への礼をきっちり済ませると、

俺を引きずるようにして、

先輩たちの待つ浜辺に急いで駆けていったのだった。





「先輩たち、遅くなりました!

あの岩場の先がすごい穴場だそうです!!」

「おー、やるじゃん、あまねっち!

ホラ、知春、後輩が折角情報仕入れてきたんだから、

ヒトデと遊んでないで行くよ!!

レイちゃんたちもそっちある程度捕り終わったら、

手伝って!!!」

「えー、ひっくり返したコイツが起き上がる様子、

結構面白かったのに。」

「りょうかーい、燈♪

レーイ、こっちはそろそろ潮時じゃない?

向こうでもっとぶっといの取りに行こう!」

「る、ルナ、表現がチョット問題アリだよ!

先生、そろそろ芦屋さんが持ってきてくれた籠も一杯に

なってきたので、交換お願いします!!」



岩場についても山辺は勢いよく先輩たちに

新たなスポットを伝達し、

それを聞いた燈や如月達も反応良く、

そちらへダイブしていった。




唯一反応の悪かった高砂も、

「・・・よし。

おーい、そこのザーナヴァルク東野と吉島!」

「「な、なんだ、ザーナヴァルク高砂!」」

「我のシューテイングスターアローを喰らえ!!」

とヒトデを男子脳内小学生コンビに向かって発射。


「「ぎゃぐぁあっ!や、やられたー・・・」」

東野と吉島を撃沈させ、

ロボ軍団のバケツリレーを寸断させることに成功していた。



うん、アホはアホでもこっちの方がやはり一枚上手だな。

俺もいつまでもぼーっとしてはいられない。



「清水先生、捕った魚介類鑑定してもらってきました!

あと籠一杯分あれば向こうに追いつくそうです!!」

「よくやった芦屋!

新たに一杯になった籠は俺が持って行くから、

お前は山辺たちと潜ってきてくれ!!

海の妖怪たちを大掃除だ!!!」

「妖怪退治ですか!!

頑張ります!!!」


空になった籠を抱えて戻ってきた芦屋を、

妖怪ネタでやる気をアップさせて穴場ポイントに送り込むと、

俺も戦利品で一杯の籠を持って大将の所へ走り出していった。



海辺の3番勝負もいよいよクライマックスだ!








PM2:49


「あと一分ー♪」

「泣いても笑ってもこれが最後♪

どっちも頑張ってね♪♪」


ミニカラスたちのタイムリミット間近を告げる声に呼応する様に、

実況の澤宮さんの声にも改めて力が込められた。


「さて勝負もいよいよ大詰め。

前半はロボ軍団の圧倒的優勢で展開してきましたが、

途中から状況が一変!

陰陽師チームが大漁フィーバー状態となり、

一気にその差は殆どなくなっているようです!!

情報筋によると清水先生はなんと、

女子生徒を使って、

漁業関係者から穴場スポットを聞き出した模様!

セコイ、セコイぞ、マゾ清水!!!

美しい花嫁だけでなく、可愛い女子中学生とも

きゃっきゃうふふするなんて、

ギリギリギリギリギリギリギリギリ。」



澤宮さん、途中から完全に私怨が入っていませんか。

観客が歯ぎしりに引いてますよ。

・・・今度達也君達が合コンするらしいし、

誘ってあげるように言っておこうかな。



澤宮さんの激しい嫉妬に困惑しながらも、

俺は生徒たちがラストスパートで捕った戦利品を、

大将の元へ何とか送り届けることが出来た。



「こりゃまた大漁だ!

ついに先生たちが逆転かもしれんな♪」

「ありがとうございます!」


大将の言葉に俺が大きな手応えを掴んでいると、

「「「まだだーーー!!!」」」

ロボ軍団たちが最後ギリギリまで集めた籠を

、疲れきって岩場で倒れている青空以外の野郎全員で

必死になって運んでくるのが見えた。


籠の中身は結構な量であり、

こっちのチームは既に浜から上がってしまっている以上、

あれが届けられれば勝負の行方がどちらに転ぶかはまだ分からなかった。


残り時間は20秒ほど。

このまま行けばギリギリ間に合うが・・・。


この勝負の結末を左右する、

生徒たちの最後の頑張りに皆が手に汗熱くしていた、

丁度その時だった。




バシャーーン!!



遠くで大きな波音がしたのは。



その瞬間、浜辺にいた「彼女」に一番先に気づいて駆け出したのは、

浜辺に集まっていた漁業関係者でも、

日頃不測の事態に備えているライフセーバーのみなさんでもなく、

勿論俺でもなかった。









「「「「渚先輩ーーーー!!!!」」」」



ロボ軍団の男子連中は勝負のことなどどこへやら、

持っていた籠を放り出すと、

今まで以上の全速力で「仲間」の危機に走り出していた。




そんな姿を見せられたら、

俺も燃えずにはいられない。


ビーチフラッグの時とは違う、

本気の加速で砂浜を爆走し、

一気に生徒たちを追い抜くと

そのまま海に飛び込んだ。



身体を包む衝撃が止むと同時に、

視覚に全神経を集中させて流された青空を探す。


まだ浮かんできていない以上、

溺れている可能性もある。

海女としてプロ顔負けといっても疲れきっている状態では

どうなっているか分からない。

早く見つけてやらないと。


それは一瞬の様で、

非常に長い時間だったようにも感じる。


必死に周りを見渡し、

浜辺の方も目を皿のようにして探し、

再度沖の方に振り向いた瞬間。




「んぐぐ!!」


あまりのことに口に貯めていた息を全部吐き出してしまいそうになった。




なんと俺の目の前ではキラキラと輝く大きな魚?のようなものが泳いでおり、

そのヒレに青空が必死にしがみついていたのだった!



「青空!!!」



海中でまともに声が伝わるのかどうかもよく分からないが、

構わず腹の底から青空に叫ぶ。

口から空気が奪われ、

一気に苦しくなるがそんなことは言ってられなかった。



しかしそれが正解だったのだろう。


目をギュッと閉じていた青空がそれでこちらに気づいてくれたのだから。


その後自分が掴まっていた「モノ」に気付いた彼女がその手を驚いて話すと、

その不思議な巨大魚はまるで役目を終えたと言わんばかりの様子で、

悠然と沖の方に泳ぎ去っていった。


それが一体何だったのか、

確かめるような余裕は全くなく、

俺は何とか呆然としていた青空を抱き寄せると

空気を求めて必死に浮上していったのであった。








PM2:55



「うむ、どうやら特に問題ないようじゃのう。

本当に無事でよかった。

しかし我が愛弟子よ。

陸に上がっても海辺では決して気を抜いてはいけないと、

あれほど教えたはずじゃな。」

「・・・師匠、本当にごめんなさい。」


ここは傷病者用に浜辺に建てられていたテントの中。


目の前では組合長が孫の無事を心から喜びながらも、

同時に海の先達として、

今回の事故に繋がった新米海女の不注意をしっかりと戒めていたのだった。


その姿をどこか微笑ましく見ていたら、

「先生も海に慣れているのではないのですから、

先行して一人で飛び込むのは二次災害を生む危険があったのですぞ。」

と苦言を呈されてしまい、平謝りするしかなかったが。




あの後青空をライフセイバーさんに引き渡してこのテントにまで

連れて行ってもらったり、

自分たちも飛び込もうとして止められていた生徒たちに青空の無事を

伝えたりと少しバタバタしてしまっていたが、

少し落ち着いて青空の様子を見に来ることが出来ていたのである。





助けた時点で無事というか俺よりも平気そうだったから

大丈夫だと思ってはいたのだが、

改めて元気そうな姿を見ると改めて安心することが出来た。





それもこれもあの巨大魚?のおかげということで

一体何なのか聞いてみたところ、

組合長にはかなりお茶を濁されてしまった。


どうやらうろなの海での海難事故で度々遭難者を助けてくれる、

うろなの海の主のような存在らしいのだが、

詳しくは言えないのか、分からないのか、

とにかく

「申し訳ないが、内密にして欲しい。」

とのことだった。


うろなにはまだまだ俺の知らない秘密があるらしい。

釈然としない部分もあったが、

テントに青空を心配した

男子連中、女子連中、ミニカラス達が押しかけてきたこともあり、

この件は一旦保留という感じになってしまったのだった。



まあ、この町に来てまだ1年も経っていないのである。

俺が全てを知る必要はない。

それより何よりあいつらの絆と

あの「笑顔」を見れただけでよしとしておきましょうか。



一緒に場を盛り上げた後輩たちに囲まれ、

いつもの無表情とは違う、

柔らかな微笑を向ける青空を見て、

俺はこの海辺の騒動の顛末について、

とりあえずそう結論づけたのであった。

シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


何とか2ステージ目終了です。

結果発表と次のステージへのヒントについては次回に回したいと思います。

アッキさん、大変お待たせしましたが、

ネタ使わせていただきます。


話の展開上、

ネタ振りも兼ねて不思議生物を登場させてしまいましたが、

大丈夫ですかね?

こちらではこれ以上掘り下げる予定はないので、

良ければネタとして使ってみてくださいね。


中学生キャラをお借りした皆さん、組合長をお借りした小藍さん、

澤宮さんをお借りした菊夜さん、

ありがとうございました。

口調やキャラ付け等で問題がある部分がありましたら、

ご指摘いただければ幸いです。


それでは続きもよろしくお願いします。

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