11月30日 花嫁奪還大作戦その8 君があ○ちゃんだ!その目に映る世界の色は・・・
PM2:40
「それでは最終対決の寒中水泳でーす♪」
「とはいっても普通に泳ぐには寒すぎるので、
チーム対抗でこの岩場と周辺の浅瀬において、
10分間の海産物ゲット数を競ってもらう、
『海女さん対決!』となりまーす♪」
「今回はブラックビーチレディも直接参戦して
海の愛娘としての実力を遺憾なく発揮してくれます♪♪」
「ちなみにチーム陰陽師&マゾ清水には、
超性能ウェットスーツや万能銛ハンド等の素潜り用スペシャル装備が貸与されます♪♪」
「ロボ軍団はぶっちゃけ海パンのままなので、
凍死したくなかったら、岩場でチマチマ捕っててくださいね♪♪♪」
「「「「「俺らの扱い、相変わらずひどい!!!」」」」
3種目目は近くの岩場に移動しての勝負となった。
ロボ男子達の抗議をさらっとスルーして、
「漁業関係の権利や安全性とか大丈夫なのか?」と確認すると、
ビーチレディからの
「•••師匠から許可は得た。」との言葉と共に、
ミニカラス達からも
「この勝負は漁業組合の全面協力の元に行われます♪」
「ゲットした海産物の判定はARIKA常連の大将さんたちが
やってくれます♪
捕った海産物も後もみんなで美味しくいただきますので、
お楽しみに♪♪」
「安全性についてもライフセーバーさん達監修の元、
安全な区域を選定、仕切りしましたし、それぞれに
複数のライフセーバーさん達がついていてくれるので、
万全です♪♪」
との詳細なフォローが。
必要な部分はちゃんと大人達の力も借りているんだな。
ならば結構!
冬の磯遊び、存分に楽しもうぜ!!
「では互いに5分間の作戦タイムの後、
決戦スタートです!!」
「今度は負けないよ!」
「アホ共に海牛でもぶつけてやろうかな。」
「この装備すっごく温かいし、
普通にシュノーケリングと考えれば楽しみだよね。」
うちのチームは和気あいあいといった感じである。
さてさて。
向こうで海の中に入れるのは
実質青空だけとはいえ、
あっちはプロだからな。
せっかくこっちは中学生女子が多数なんだから、
いっちょかましてみますか。
『あの人』も含み顔で見ているし、
愛弟子の成長に協力してもらいましょう!
「•••みんなで頑張ろう。」
「次も勝つぞ!」
「「「「おーーーー!!!」」」」
またもや円陣を組んで気勢を上げているロボ軍団を
微笑ましくそしてニヤリと見つめながら、
俺は場を盛り上げる策を練り上げていったのだった。
PM2:45
「それでは勝負スタートです♪」
「大将のいる計測ポイントまで持って来て
始めてポイントになりますので気を付けて♪」
「「それじゃ、レディ、ゴー!!♪」」
「さていよいよ始まりました勝敗の決まる3種目目、
最初に猛ダッシュしていったのはロボ軍団の面々です。
ビーチレディーを先頭に一列になって、
おや、途中で間隔を空け始めました!
先頭のビーチレディーは既に浅瀬にダイブしていますが、
他のメンバーは地上で長い列になって立ち往生。
一体どうするのでしょうか?」
ロボ軍団達の不思議な動きに実況の澤宮さんは首をかしげていたが、
その意味はすぐに明らかになった。
「おっとー、何とすぐさま海中からビーチレディーが浮上して参りました!
そして背中の網かごの中身をロボ軍団の持つ籠の中へ。
その籠をロボ軍団、見事な連携でバケツリレーしております!!
スタートダッシュを決めたのはロボ軍団の方だーー!!!!」
どうやら奴らは青空の海女としての実力を信じ、
その力を最大限引き出すためのフォロー役に回ることにしたらしい。
受け渡し役の稲荷山が給水なんかもしていたし、
青空は捕ることだけに集中することが出来るだろう。
ロボ軍団、いい「チーム」になってきたじゃないか。
こっちも負けてられないな。
「一方で何ということでしょうか!
陰陽師チーム&マゾ清水は未だに
岩場にすら行っていません!!
これは相手が凄すぎて戦意喪失か!!?」
大分好き放題言っている澤宮さんの絶叫をスルーして、
「当初の目的」を遂行する俺たち。
この短い時間じゃ、
適当に探してもポイントが分かっている上に捕り慣れている青空に敵いっこない。
・・・ならば穴場を「知ってる人」にを教えてもらうに限るじゃないか。
「先生、漁師のお兄さんから、オススメポイント聞き出したよ!」
「よっしゃ、燈!じゃあ、高砂と二人で籠もって先に行っててくれ。」
「了解!行くよ、知春!!」
「私は出来れば大量のクラゲがいるっていうデンジャーポイントに行ってみたいんだが。」
「そんなのは後で向こうのアホ達でも誘っていきゃいいっしょ!」
そう言ってうちのオシャレ番長はアホな友人を引きずりながらも岩場に向かっていったのだった。
「おっと、ついに陰陽師チームも動き出したが、
既に開始から3分以上経過している!
果たして20個近くの漁獲高を上げているロボ軍団チームを追い上げられるのかー!?」
なおも実況は煽り立ててくるが、幸先は決して悪くはない。
そろそろあっちも潮時だな。
「大将さん、ありがとーー♪」
「る、ルナ、いくらなんでもひっつき過ぎだよ!」
「何言ってるの、レイ。スペシャルスポットを教えて貰ったんだから、
これくらいサービスしておかないと。」
「さ、サービスって!!」
「あっはっは!思い切りのいい嬢ちゃんじゃねえか。
もってけドロボー!!」
「サンキュー♪じゃあ、レイ、早速捕りに行こう!!」
「待ってよ、ルナ!大将さん、ありがとうございました!!」
「頑張りなよー!」
よっしゃ、大将クリア。
これは結構いい所、教えてもらえたんじゃないか。
可愛い系姉妹?を向かわせた甲斐があったな。
「さあ、勝負時間も半分を過ぎたところで、
漸く陰陽師チームも岩場での獲物探しが本格化。
しかし既にロボ軍団との差はかなり開いてしまったはず・・・、
な、なんといつの間にかその籠に大量の牡蠣や鮑が入っているではありませんか!!
どうやら大漁ゲットポイントを漁業関係者から聞き出した模様です!!!
これは勝負が分からなくなってきました!!!!」
「おい、そんなのありかよ!!」
「生徒に色仕掛けで聞き出させるってそれでも教師か!!!」
「後で鬼小梅に言いつけてやるからな!!!!」
必死で籠を運ぶロボ軍団から苦情コールが起こっているが、
ミニカラス達はダメだとは言っていないし、大丈夫のようだ。
まあ、穴場を知っていそうな人をすぐにピックアップできたのは、
連携担当として関係者の人に挨拶回りを欠かさなかった
成果でもあるんでな。
そもそも別に色仕掛けってわけではなく、
若い女の子に「どんな所なら沢山捕れますか♥」
って可愛く聞いてこいって言っただけだし。
だから司さん、この件が耳に入ったとしても、
晩御飯抜きくらいで許してくださいね。
心の中で多分やりすぎだと怒るである奥さんに謝罪しながら、
俺は最後の砦の行方を確認していた。
「あの人」が切り崩せれば、
一気に勝利を手繰り寄せられるんだが・・・
時間もないし、直接出馬と行きますか!!
「芦屋、もう大分籠が一杯になっているみたいだから、
新しい籠と交換してやって来てくれ。」
「分かりました!山辺さん、後はよろしくね!!」
「・・・頑張ります。」
走り出した芦屋を見送って、
先程から説得を続けていた山辺と共に
最後の砦たる漁業組合長に向かい合う。
さてさてどうやって言いくるめようかと思っていると、
先に山辺の方が口を開いた。
「組合長さん。」
「お、夏休みにARIKAを手伝っていた娘さんじゃな。」
「その節はお世話になりました。」
あ、山辺、面識あったんだ。
その割には会話は弾んでないって、
そういうのを山辺に求めるのは酷だよな。
青空と雰囲気が近いからいけるかなって思って、
アタックしてもらったんだけど。
「お前さんはうろなの海が好きかい?」
「・・・今年来たばかりでまだ分かりません。
でも好きになれそうな気はします。」
「ほほお、それは嬉しいのう。
どうしてかな?」
「みんな楽しそうだから。
それに何かが見つかりそうな気がするんです。
渚先輩を見ていて改めてそう思いました。」
「ほお。」
組合長こと青空源海さんは、
孫娘の話を出されて思わず唸った。
山辺は彼が青空のおじいさんであることを知っていたのだろうか?
俺もその辺りから攻めていこうとは思っていたが、
いずれにせよ、彼女が狙って言ったとは考えにくい。
でもその分、とても実感が篭っていた。
「何が見つかりそうなんじゃ?」
「分かりませんが、
楽しいイメージが膨らむこと自体、
いいなって思います。
・・・ロマンがあって。」
「・・・浪漫か。ふふふ、それは素晴らしいのう!
儂もまだまだ若いもんから学ぶことがあったようじゃ♪」
よく分からないが、色々感じるところがあったのだろう。
山辺の答えを聞いた源海さんはとても愉快そうに笑い出したのだった。
それを見て山辺もどこか恥ずかしそうに、でも微かな笑みを浮かべていた。
山辺ってぼそっとキツイことを言っているイメージが強かったけど、
感性が鋭いだけで実はすごく温かな部分を持っているのかもしれない。
その辺り、青空と雰囲気が似ているっていうのは間違いじゃなくて、
根っこの部分でどこかに通じる部分があるのかもしれないな。
どっちも言葉で語る以上の強い意思を感じるし。
子供たちはいつでも大人の想像を超えてくる。
彼女たちにしか分からない世界の美しさ、
それを慈しむことができる教師でありたい。
周囲の喧騒も、
勝負のことも忘れて見入ってしまう、
とても穏やかな光景がそこに広がっていたのだった。
シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。
すいません、決着までもう少しかかりそうですので、
一旦ここで切ろうかと思います。
とにあさん、変なキャラ付けをしているようだったら言ってくださいね。
今回渚ちゃんに焦点を当てようと思ったら、
天音ちゃんまで輝きだしてしまいました。
小藍さん、次話では渚ちゃんに
しっかりとスポットライトが当たる予定なのでお待ちくださいね。
源海さんのキャラも気になる点があればご連絡ください。
ではビーチ編決着は次回となります。
もうしばらくお待ちください。




