11月30日 花嫁奪還大作戦その2 小天狗仮面参上!そして『あいつ』まで•••
PM0:45
「待てや、こらーーー!!」
「えっ、もう追いついて来たのか!」
「流石ドクター渚、
あの自転車の方も手を抜いていないって訳だね♪」
「•••確かに試作品もすごかったけど、
車にこんなに早く追いついてくるって
いくら何でも早過ぎだろう!」
「化物退治でマゾ清水超パワーアップ
しちゃったからね♪
でもその方がうろラジさんでやってもらっている
完全生中継も聴取率ぐんぐんアップだよ、きっと。
ネットの方でのラジコン飛行機を使った
映像生配信もいい感じだし、
コメント欄も大盛況♪♪
総督、第一チェックポイントまでもう少しなんで、
上手く距離を保ってでお願い。」
「任せておけ!」
「•••澄兄、ここまで計算してたっぽい。
あの人マジ悪魔。」
なんかブツブツ言っているのが微かに聞こえて来るが、
大分距離を詰められたぞ。
渚ちゃんの自転車は恐ろしくなるくらいに
スピードを上げることができ、
早々にカラスマント達が乗る車に追いつくことが出来た。
オープンカー風のその席には女の子や
ウェディングドレス姿の女性の姿も見える。
これなら追いつくのは時間の問題。
•••とはいえ、
このまま終わらせる気なんてないんだろ、悪ガキ共。
お前らの『出し物』楽しみにしてるからな。
何だろうとかかってこい!!
フルスロットルでペダルを漕ぎながら、
俺は彼らの車に先導されるように、
うろなを北上していったのだった。
PM0:50
「おいおい、校庭にそのまま車で侵入かよ!」
追いかけていた車が左折していったのは、
うろな北小学校の校庭へと続く校門。
ちゃんとあいつらが許可を取っていることを祈りつつ、
俺も続いて校門をくぐったのだったが、
その歩みはすぐに目の前に現れた人影によって
止められてしまったのだった。
「はっはっは、待たれい、待たれい♪
花嫁達を追いかけたければ、
華の特攻隊長こと、
このシーレディー様を倒してからにしてもらおうか♪♪」
「•••やっぱりあなたもグルだったんですね、海さん。」
俺の色々理解した呟きを聞いて、
すっと俺の側に寄って来る、
仮面舞踏会みたいなマスクを付け、
ボンデージっぽい服にマントを羽織った海さん。
「もー、そこは『な、なんだって!』みたいな反応してくれないと
困るよ、センセ。
鎮たちも頑張ってんだから、ノリ良く付き合ってやってくれよ。」
「いや、ここまでして祝ってくれるっていうのは
教師冥利に尽きるなと思うんで、
ありがたくは思っているんですよ。
想像以上の規模になっていることに面食らっているだけで。」
「現在うろラジさんとネットで絶賛生配信中だから、
その辺りの本音は全部終わってからしてやってくれよ。」
「•••直澄、成長しすぎだよ。
じゃあ、そちらが攻撃して来て、
こっちがやり返した感じで続けましょうか。」
「了解♪」
「たあ!!」
「ギャーーー♪♪」
見事に、しかし楽しそうに
弾き飛ばされていく海さん。
天晴な跳躍力。
結婚式での青猫さんへの攻撃も
打合せ済みたったんだろうなー。
全員がちゃんとあの展開を分かっていたかは、
確認できなかったろうし、
他の人が近づくのを防ぐ意味で
彼女が間に入ったんだろう。
•••だったら痺れ薬はいらなかっただろとは
正直言いたいが。
「やるな、流石はマゾ清水。
しかしこれなら手が出せまい。
いでよ、小天狗達よ!」
「「「「「「やーーーー!!!」」」」」」
海さんことシーレディーの指示により、
わらわらと集まって来る天狗の仮面を付けた
体操服姿の小学生達。
すげー、動員力。
見た感じ男の子中心かな?
あ、真ん中にいるのは
いつか天塚君達と勉強を教えた子たちだ!
その横にいる二人組が南小のゴールデンコンビって
子達かな?
居並ぶ小学生達の様子を観察していると、
すっと中心にいた4人が前に出た。
彼らだけ天狗仮面と同じ唐草模様のマントを付けており、
それがリーダーの証みたいなもんなのだろう。
他の子達に整列の指示なんかもだしてたっぽいし、
日頃からリーダー役なのかもしれないな。
「我らは天狗仮面の直弟子、
小天狗仮面4人衆!」
「師匠に成り代わり、
そなたに試練を授けに参った!」
「この簡単汁粉を乗り越えた時!」
「そんな楽で甘くちゃ試練にならないよ、ダイサク。
艱難辛苦だよ。」
「う、うるせえ!
あんまり辛くちゃ、先生が可哀想だから、
優しくしてやったんだよ!!
こ、この艱難辛苦を乗り越えた時!」
「天狗の祝福がそなたを花嫁の元へ導くであろう!!」
「小天狗達よ、試練の準備だ!」
「「「「「やーーーーー!!!」」」」」
小天狗仮面の口上が終わると、
その他の小天狗達はちりじりに走り去ってしまった。
パチパチパチ。
周りから起こる拍手。
どうやら保護者の方の見学付きらしい。
なんかどんどん人が集まっているみたいだし、
どうなっていくんだ、これ?
周りの雰囲気に俺が少し押され気味になっていると、
小天狗仮面の一人が落ち着いた声で
詳しいルールの説明をしてくれた。
「試練の名前は『天狗隠し』です。
宝探し•かくれんぼ•鬼ごっこを組み合わせたものと
考えてもらえればいいです。
すでにカラスマントさん達は逃走してしまっていますが、
彼らの目的地を書いた紙を校内のある場所に隠しています。
その場所のヒントは僕たち小天狗仮面4人が知っていますが、
いくら先生でも僕たちをそう簡単に捕まえることはできないでしょう。
ですからハンデとして、先ほど校内に散っていった小天狗達に
僕たちの居場所のヒントと、
僕たちの動きを止める呪文が書かれた紙を持たせてあります。
彼らを先に捕まえた方が僕らを捕まえやすいでしょう。
校内を探して『小天狗見ーつけた。』と言ってもらえれば
紙を出してくれるはずです。
僕らについては呪文で動きを止めるか、
または実力で追いついてタッチしないとヒントは渡しません。」
「自信があるならおっかけっこしてやってもいいぜ♪」
「ユウキ君、ルール通り、校内で走ったり、階段を使ったりしちゃ、
ダメだからね。」
「分かってるよ、タッキー。」
「ということで僕たちも小天狗達も校庭か校舎の1階のどこかに
いますので、頑張って探して下さいね。では。」
「「「「試練開始!!」」」」
そう言って別々の方向へと走っていく小天狗仮面達。
実に手が込んでいるなー。
沢山の子が参加出来る様に色々考えたんだろう。
•••はあ、もおこれ、完全に小学校の先生達も
一緒になってやってるよな。
というかトラブルが起こった時のためなのか、
校庭の端にはテントが張られて、
北小の先生だけでなく、
南小の田村先生や山崎先生まで座っているし•••
まあ、小学校連携の一環と思えば
素晴らしい取り組みだから、いいか。
とはいえ小天狗君達だけでも20名以上はいたよな。
別にそこまで急がなくてもいいんだろうけど、
流石に時間がかかりすぎる気が•••
「はっはっは。
手も足も出まい♪」
「•••まだいたんですか、海さん、
じゃなかったシーレディーさん。」
「そうつれなくすんなって♪
みんなが敵とは限らないぞ。」
「それはどういう•••」
小天狗仮面達が散った後、
こちらをからかう様に近づいて来た海さんに、
恨み言を言った直後、
背後からまた新たな口上が聞こえて来たのだった。
「待ちなさい、シーレディー!
うろなの平和と恋人達の愛を遮る不届きものは、
このうろなタンが許しません!!」
おいおい、直澄。
ついにこのネタまで引っ張り出して来たのかよ。
俺はその聞き覚えのあるフレーズに若干頭を痛くしながらも、
覚悟を決めて後ろを振り返ったのであった。
シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。
今週は忙し過ぎて、昨日は昼からダウンしておりました。
一つの場所、一話で終わらせるつもりが
最後だと思ったら色々詰め込んでしまっております。
•••皆さん、本当にごゆっくりお待ちいただければ幸いです。
次で第一ポイント消化できればと思います。
うろなタンの中の人は誰だ?




