1章4
続きで~す
春は眠いですね^-^
「そんなことしたって無駄だよ」
彼女はこちらを向いて笑いながら言ってくる。
「何で決めつけられるんだよ? 可能性は確かにあるだろ」
俺の言葉を聞いて、彼女は一瞬にして真剣な顔になる。
「そんなものがあれば、とっくに探し終わっているの。ここに来た大半が同じことを思って沢山のことをしてきているの。それに、このゲームの開発者は各部門の天才なの。しかも、今生きているのはたったの5人。その人達ならどうにか出来ると思うけど、どこを探しても見つからない。一応この町に全員住んでいるらしいんだけど」
「そんな……」
俺の考えていたことの全てが、彼女の言葉に一瞬で捻じ伏せられた。
「分かったでしょ。私達が天才を超えていない時点で、開発者を見つけるしかないの。そのためには時間がいる。だから、ここで教えてあげる。もう諦めて、人を殺しなさい。そうしないとあなたは殺される。そして、あなたが思っていることは叶わない。多くの人を助けたいなら、矛盾しているだろうけど、人を殺していくしかない。自分が現実に戻れれば、このゲームについて報道できるんだから」
彼女は最後に畳み掛けるように、俺に人を殺せと言ってきた。俺はそんな残酷なことが出来る人間ではない。そんな俺に向かって、彼女はただ真剣に言ってくる。しばらく考え込んでいると、彼女は急に話しかけてきた。
「隣人を自分のように愛しなさい」
彼女が言ってきた言葉は、何時も巴菜が語ってくるのでよく知っていた。
「隣人愛か。もしかしてクリスチャンか?」
「違うけど、隣人愛の言葉は好きなの。でもね、この隣人愛って自分がいないと他人は愛せないの。だから、その中心の自分がいなくなって、そこから抜け出すためには人を殺さないといけなかったら、私は他人を最小限に殺す。矛盾するかもしれないけど、この世界から出られるなら、私は手段を選ばずに出たい。それが、結果的には多くの人を助けられるのなら」
彼女の言葉はとても重いものだった。他人を愛すためには自分が必要、要するに自分第一というわけだ。だが、この状況でも他人のことを少しでも思っている者は少ないだろう。彼女はその数少ない1人なのだ。
「あのさ、このゲームって協力とか出来ないのか? 俺は君に協力する」
俺の言葉に、彼女は驚いてこちらを向いてくる。
「そんなに信用していいの? もしかしたら殺すかもしれないのに」
彼女の言葉は、何だか否定してほしいような言葉だった。
「そのときはそのときさ。今は君が一番信用できる。それ以上はなにもないよ。それに、仲間がいた方がこのゲームって有利なんだろ? お互いに良い協力関係になれないか?」
俺の言葉を待っていたかのように、彼女は即答する。
「分かった、協力しましょう。でも、あなた、本当に人を殺せるの? もし出来ないのならこの協力はなかったことにするよ?」
「それは、今度の回に見ていてくれれば分かるよ。それまでの時間は開発者を探そうぜ。何時かは見つかるだろうし」
俺と彼女はこの瞬間から仲間になった。互いの存在を認め合う仲間に。
「そういえば名前知らなかったな。俺は肌勢健汰、これからよろしく」
「健汰、ね。私は柊木優香。よろしくね」
「よろしくな、優香」
優香、そう名乗った彼女と俺は、開発者を探すために町を探し回った。
明日もがんばるぞ~