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第三話−謎のメール−


 その図書館には、”メリンボラス中央図書館”という筆記体で書かれた金色のでかいプレートが掲げられており、建物の全体は石造りのゴシック建築だ。 図書館の脇にある駐輪場にマウンテンバイクを止め、駆け足で入り口へ続く階段を上ってゆく。



 ガラス張りの図書館の入り口を入ったところに、向かって左側、返却用のポストとIDカードの認識装置が置かれている。

 今までは、わざわざ受付の人に本を出しにいかなければならなかったが、新しくこんな設備ができてくれたおかげで、今までよりもスムーズに貸し借りができるようになった。


 僕はさっさと、図書館から借りていた4冊の本を返却用ポストに突っ込んだ。


「その本は面白かったかね?」


 不意にしゃがれたおじさんの声が後ろから聞こえる。


「ええ、もちろん」


 ……ノリで答えてしまった。 でも大丈夫。 いつものことさ。

 何も気にしないまま、僕は新しく借りたいと思っていた本を探しに行った。



 本は番号でジャンル分けがされており、僕がいつも住み着いているのは790〜810番のところだ。


 天文学や自然科学についての文書が並べられているところ。 あ、それと1410番の古代文明。 それ以外は、主にカバラだとか、歴史に登場した秘密結社、民俗学について調べている。


どうしてこんなことに興味を持っているのかって?

フフーン、確かに、はたから見れば変なやつに見えるかもしれないな。


でも、僕の場合、何故か知らないけど昔から"不思議なもの"に対して強い憧れをもっていたからだと思う。

いや? 父さんが同じような趣味を持っていたからかな。

父さんは天文学者だった。父さんが研究していたのは地球外の知的生命体について。しかしどんなに精力を注いだ論文を書いても、地球外に住んでいる知的生命体の存在を証明しても、「そんなものはインチキだ」と非難を浴びせられているばかりで研究の成果はなかなか報われずにいた。そして、ついに父さんは僕が八歳のときに、病気で他界した。


僕はそんな父さんの意志を継いだんだと思う。いつか父さんの目指していた、地球外知的生命体を発見できたら、どんなにすてきなことだろう。……そのためにも、僕は日々こうやって勉強している。まあ、楽しいから良いのだけどさ。



その日は一日中図書館で過ごした。

お昼ご飯を食べに途中で家に帰ったあとの午後も、僕は図書館で過ごした。

 だが、夢中になって調べ物にしていると、日が暮れるのがあっという間だった。

 不思議なことについてばかり調べていて、まさか自分の身に……それも本当に不思議なことが起こるなんて、このときは思いもしなかっただろう。


 それが起こったのは僕が夜、ベッドに入ろうとして靴紐を解いていたときだ。机の上に置かれていた携帯電話が、突然うなりだした。


メールだ。こんな時間にメールなんて一体誰だろう。メールの本文はこのようなものだった。


受信メール001

         10/16(日)22:37

送信者:little-vegney@abchotmail.com

添付:×

件名:緊急

――――――――――――――

シルヴァニア公園にこい。



   ---end---

――――――――――――――


……ずいぶんと怖いメールだ。 もしかして、間違いメールかな。

メール送信者の「little-vegney」は、たぶん"リトル・ビニー"と読むのだろう。

 リトル・ビニー……何の身に覚えも無い名前だ。思い当たるとすれば、おそらく悪友達のリップとケビンの仕業かな?


 あいつらはしょっちゅう、暇さえあればいたずらをけしかけてくる。

 だから、今回だってぼくのことをからかっているに違いない。



 それにしても、こんな時間にシルヴァニア公園に呼び出すとは……一体何を仕掛けているのだろう? 夜遊びかな。 夜遊びだったら、さんざん母にしかられたことがあるから御免だ。



 でも、このまま明日まで持ち越したらどうなるだろう……シルヴァニア公園に行かなかったことで散々たたかれるのだろうか。 そうだなあ。 やつらはいたずらっこである上に、クラスの中でも権力のある連中と係わり合いがある。 本当に叩かれるかもしれない……集団リンチされかねない。



 ……一層のこと、逃げるより変装しておどかしてやろうか。 そう思い当たってか、僕の胸は妙な期待で高鳴りはじめた。 

 そうだよ、僕のことをからかったことを理由に痛い目にあったと思わせれば、あいつらは僕のことをもうからかってこなくなるはずだ。 もう実行するしかないだろう!


 僕は、そんなことを勝手に妄想しながら、ひとりで舞い上がっていた。 なんと安易な考えだろうか……。



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