第十九話−沈黙の月曜日−
人によっては嫌悪感を抱く内容かもしれません。
ご注意ください。
「おはよう! レンディ」
「おはよう、ジェシー」
今日も、いつもどおりの一日が始まった。
ケビンは欠席している。
リップが一人だと、いつものように調子が出ないらしく、どこか顔色が悪かった。
何か有ったのかと思い、僕は休み時間に、リップのところへ話しにいった。
「リップがひとりでいるなんて珍しいね」
「あいつが学校を休むこと事態珍しいよ」
リップもケビンの欠席する理由がわからないらしい。
その後は、いつものように巨人のうめき声を聞いて、いつものように授業を受け、いつものように僕は昼寝をしてジェシーにあきれられ、いつものように家に帰った。
そして、いつものように携帯電話を開くと、いつもの男からメールが届いていた。
受信メール001
11/7(月)16:37
送信者:
little-vegney@abchotmail.com
添付:×
件名:何か
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忘れていないか?
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リトルビニーだ。 何か忘れていないかだと? ……そうか、今日は……。
まさか。 リトルが言っていたことは、冗談じゃなかったのか?
フン、そうだ。 そうに決まっている。 それでも僕のことをもて遊んでいるつもりか?
送信メール001
11/7(月)16:39
宛先:
little-vegney@abchotmail.com
添付:×
件名:何?
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知らないよ
そんなもの
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その後、僕は彼からの返信を待たず、近くのコンビニへ買い物に出かけた。
そして、一応、携帯電話は持っていく。
お菓子の陳列した棚からチョコレートバーを取ろうとしたとき、リトルからの返事が来た。
受信メール001
11/7(月)16:41
送信者:
little-vegney@abchotmail.com
添付:×
件名:来るのか?
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来ないのか? はっきりしろ。
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そういえばリトルは、月曜日(今日だ)の午後6時にシルヴァニア公園で落ち合おうと、あの時言っていた。
だとしたら、彼は既にシルヴァニア公園で待っているのかもしれない。
またリトルと会うのか……あの恐ろしいホッケーマスクと。
送信メール001
11/7(月)16:46
宛先:
little-vegney@abchotmail.com
添付:×
件名:×
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じゃあ、いく
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あくまで好奇心だ。
これで僕がシルヴァニア公園に行かなかったら、なんてこっけいだろう。
期待させておいて、奴は待ちぼうけだ。
でも、やっぱり行ったほうがいいかな……という良心が、僕の中で、”そうはさせない”と言っている。
そう考えてみれば、あの時、リトルが「今のお前は何も信じてくれなさそうだからな」と言った真相がわかるかもしれないチャンスだ。
いくら、僕だって不思議なことへの関心は、少なからずとも、ある。ケビンほどではないけど。
別にいいじゃない? 聞くだけの事を聞いておいて、あとで逃げたって。本気で彼を信頼しようだなんて、馬鹿げているじゃないか。
その後、僕はコンビニへ行った足でシルヴァニア公園へ向かった。
家の近くにあるコンビニからシルヴァニア公園までは、30分ほどでたどり着けた。
ジェシーの家からシルヴァニア公園まで行くのに1時間も時間がかかったのは、彼女の家がシルヴァニア公園とは反対方向にあるからだ。
僕が、シルヴァニア公園にたどり着いたのは、五時三十分頃だった。待ち合わせの六時まで、あと三十分ある。
とりあえず、近くにあった、メッキがはがれてさび付いている白いベンチに腰掛けて待つことにした。
しかし、さっき買ったポテトチップスを全部食べ終わって、三十分経ってもリトルの姿が現れない。
時々、すぐそこまで来ているのではないかと、ベンチをたってあたりを見回したりもしたが、彼の姿は何処にも見当たらなかった。 ただ、一台の車が僕の目の前を過ぎ去ってゆく。
ああ! そういえば、彼はひだまり広場で待ち合わせをしようといっていたじゃないか。
じゃあ、ひだまり広場に行かないと!
僕は急いでじめついた公園の中に進んでいった。
心なしか、以前この公園にきたときより、いくらか不気味さが和らいでいるような気がする。 前に来たときは、夜も遅くてあたりは真っ暗だった。
でも、今はまだ六時を少し過ぎただけだから、そんなに真っ暗というほどでもない。
まだ、空が濃紺色に染まりきらないうちだから、足元にはそれほど注意を払わなくても大丈夫だ。
相変わらず、人は一人もいない。
こんなに人気の無い公園も、そうそう無いだろう。
リトルと会うのは、これが二度目だけど、前にきたときも同じようにまったく人気が無かった。
これは、ワナか? 偶然か……?
広場についたとき、朱色の時計台のもとに人影があることに気づいた。
どうやら背格好からしてリトル・ビニー本人のようだ。
すれ違いだったのかな……
彼はふと、僕のほうに顔を向けた。
「すみません、待たせましたか?」
リトルは、フッと鼻で笑ったあと、いいや? と首を振った。
「それよりもレンディ君、心中を決めてこられたかな?」
「いえ、今は……あの、それよりも、もし僕が”はい”と言ったら貴方は何をしてくれるんですか? と、言うより、何をするつもりなんですか?」
「……」
リトルは僕のことを、しばらく見据えた。
何を答えようかと、考えているところなのだろう。
しばらく僕と見つめ合うと、不意に彼が口を開いた。
「ふうむ、つかぬ事を聞くが、お前は不思議なものを信じるか?」
「は?」
しかし彼は僕の返答にも動揺せず、答えをまった。僕は、少し考えてから返事をした。
「目に見えないものは信じられません。」
「……そうか。
しかし、安心せよ。 お前には魔術師になる素質が有る」
……え?! 何を言い出すかと思いきや、そんな馬鹿げたことを……。
こいつはケビンと同じか?
「僕のことをからかっているつもりですか?」
「いや? 決してお前をからかってなどいない。
むしろ、希望の選択肢を与えてやったんだぞ」
リトルが何を言っているのかわからない。
とりあえず、信じたら自分はケビンと同類決定だ。
「フン、何が魔術師だ。そんなの現実にありっこない……」
「では、仕方が無いな」
リトルはけだるく溜息をついた後、ポケットから細長い布を出し、うでをコマ送りにしたかのごとくすばやく動かして、僕の目を隠した。
「ちょ……! 何をするんですか」
しかし、彼は無視して、僕の両腕を背後にまわし、ロープのようなもので何十にも縛った。
そして、彼は僕のことを押し倒すと、今度は足をロープで縛りつける。
僕は、必死になって、むがむがと抵抗したが、手も足も封じられているため、のた打ち回るだけで、身動きの取り様が無かった。
「い、いやだ……っ やめてよ! 嫌だって言ってるだろ?!」
しかし、彼の怪力の前では僕もひれ伏すしかなかった。いくら抵抗しても、無駄だ。
「痛くはしない。 おとなしくしろ」
絶対、無理だって。
何をされるのかもわからないのに……!
僕が完全に身動きを取れなくなったところで、彼は僕の体をひょいと持ち上げ、どこかへ持ち去っていった。 まるで、僕がおもちゃのようだ。
それよりも、一体何処へ行くつもりなんだ?
このまま僕はどうされるのだろう……身代金にされて何日も家族や友達と引き離されるのか? もしかしたら、臓器売買に巻き込まれることだってあるかもしれない……嫌だ、そんなの!
僕はありったけの声を振り絞って助けを呼ぼうとした。
ところが、肝心の声が出ない。
あまりの恐怖で声が出せなくなってしまったのだ! むなしくも、涙だけが頬を伝って流れ落ちる。
しばらく、リトルに担いで歩かれた後、ふと立ち止まったと同時に、車のドアを開ける音がした。
きっと、さっき通りかかった車に乗ってきたのだろう。 あの時気づいていればよかった!
その車の中に無造作に押し込まれたあと、足元にあるドアを勢いよく閉められた。
しばらくして、前方でも、ドアを開ける音が聞こえた。 奴もこの車に乗り込むつもりだ。
僕のときと同じように、勢いよくドアを閉める音が聞こえ、まもなく車にエンジンがかかった。
そして僕は、不思議な運命へと導かれてゆくのである。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!
もう少しで第一部が終わります。レンディはどうなってしまうのでしょうか……。この続きも頑張って書きますので、今後ともよろしくお願い致しします。




