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第十七話−宣言−


 木曜日。 僕はケビンが教室に入ってくることを心待ちにしていた。

 なぜなら、今日、父さんの日記を返してもらうとともに、ラテン語で書かれた内容を翻訳してもらう日だからだ。


ケビンが教室に入ってきたとき、僕は早速父さんの日記のことを聞いた。


「ね、教えてよ。なんて書いてあったのか」

「……」


 僕は、いつ、ケビンが言葉を返さんとワクワクしながらケビンを見つめた。

そこへリップがやってきた。


「お、ケビンか。 おはよう! 何を話しているんだよ?」


「あ、リップ」


横から入ってきたリップに、ケビンが目を向けた。


「いや、ちょっとね。二人だけのことなんだ」と、僕。


「なんだよいちゃついちゃって。 おかしな奴だな」


 リップが僕たちに愛想笑いして、リップが立ち去るのを見届けた後、もう一度ケビンに日記のことを聞いた。

 すると、ケビンはスクールバッグの中から父さんの日記を取り出して、僕に返した後、こう言った。


「その日記は、最初のほうは何もしなかった、とかよくわからないことが書いてあったけど、

 主に瞑想だとか、儀式についてばかりがかかれていたよ。

 魔術師かなんかの日記じゃないか?」


「え……?」


まさか、僕の父さんが魔術師? そんなワケない。 だって、父さんは……


「まって、僕の父さんは天文学者だったんだよ?」


「お前の父さんなんか、知ったこっちゃねぇよ。

 とにかく、そういうことについてが書かれていたんだ。 文句あるか?」


そう言って、ケビンがリップたちのところへ行きかけたときだ。

何かを思い出したのか、彼は突然、僕のほうへ向き直った。


「それと……。 そうだな。 すごく言いづらいんだけど……」


「何?」


「もしかしたら、大量殺人が起こるかもしれない」


そういったあと、ケビンはいつものようにリップたちのところへ混ざっていった。

大量殺人が起こり始めるかもしれない?!

どうして、そんな意味深なことを……

僕はケビンに聞きたいことが山ほどあった。 でも、これはケビンが友達と話しているところで聞くことではないだろう。 聞くのはあとにしたほうがよさそうだ。


その後、僕はいまかいまかとケビンを隙を狙った。

ケビンが一人になるたびに、ケビンのほうへ目が行く。 大量殺人だとかいう、よくわからないけどすごく恐ろしいことが気になって仕方が無い。


そして、お昼休み。

やっとのことで、僕はケビンを捕まえられた。


「あのさ。 朝ケビンが言ってたことなんだけど」


「何だ?」


「大量殺人が起こるってどういうこと?」


ケビンは急に冷や汗を掻いて、黙り込んでしまった。

めずらしく、ケビンが僕に向かって気まずそうな顔をしている。

ケビンは目を一瞬、横にそらしてから、緊張した面持ちでこう答えた。


「あのさ……お前、夢魔って信じるか?」


僕は唐突な質問に唖然とした。

ケビンが、そんなオカルト的なことを聞いてくるなんて、珍しい。


「夢魔? それって、インキュバスとかサキュバスのこと?」


「そう。 でも、それは伝説上の話だ。 本当の夢魔だよ」


僕は何のことだかさっぱりわからなかった。

 インキュバスやサキュバスが本当の夢魔じゃないとしたら、一体なんのことなんだ?


「奴等は人の肉体と生命力をつなぐ部分が大好物なのさ。なんていったらいいかな……うーん、そうだ。吸血鬼の夢バージョンみたいなモンだよ」


「それがどうかしたの?」


「そいつらが、もう活動し始めているかもしれないんだ。 このままだと、いずれ皆が夢魔に殺されてしまうかもしれないってことさ」


ケビンは真剣な目で僕に訴えかけてくる。


「ちょっとまって。 ケビン。 さっきからおかしいよ。 夢魔だの吸血鬼だのって。

 頭でも打ったんじゃないの?」


「違う! これは本当のことだ」


するとケビンは急に剥きになって、僕を怒鳴りつけた。

そして僕に迫ってきて、上から下までにらみつけながら、こう言った。


「もうリップがお前に告知(ちく)っているだろうがな。最近、俺の様子がおかしいって」


「ど、どうして知っているの?」


「どうしても何も、全部お見通しさ」


すると、ケビンは鼻で不気味に笑い、天井を眺めながらニ、三歩あとずさった。


まさか。 紙に書いてひそかにやりとりしていた内容を知っているだなんて……

恐ろしい。 ジェシーのことといい、リップのことといい、ケビンはなんでもかんでもお見通しのようだ。

ここは、嘘をつかずに、本当のことを言ってしまったほうが良い。


「……そっか。 なら、仕方が無いや。 あのね、確かにそうだよ。リップは理科の時間のとき、僕に手紙を回してきた。 最近、ケビンの様子がおかしくない? って。

 僕は、オカルトに詳しくなってるの?って聞き返したけど、リップは……」


「どうせアイツのことだ。 何も信じてないさ」


僕が喋りきる前にケビンが口を割ったので、僕はそのまま黙り込んだ。

ケビンは続けた。


「現に俺の兄貴だって、何も信じちゃいない。 俺の兄は……ほんとうは言っちゃいけないことなんだけど」


ケビンは一旦そこで区切り、僕の目を見つめて「お前を信じている」と言うように視線で訴えかけた後、口を開いた。


「ケレックは最初、俺の家の魔術師として後継することになっていたんだ」


「え、魔術師?」


「詳しい内容は、あとだ。 それで、ケレックが魔術師になるはずだったんだけど、アイツは最初から魔術なんてまったく信じていていなかった。

 面倒くさがって、権利を放棄したんだ。俺はそのことを最初から予測していた。 アイツのことだからな。 それで……ケレックに変わって、俺が魔術師になろうと思ってるんだ。

 俺がおかしくなったって言うのは、急に魔術師らしくしたからだろう」


ここで、ケビンはフンと高々に鼻息をついて、皮肉たっぷりに言った。


「そのうち、無知な人間な皆滅びるのさ。だらか、俺がさきがけて、皆のことを救おうと思ってる。わかるか? 世の中は、目に見えるものだけじゃ保っていけないんだ」




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