第十一話−空き巣?−
家につく頃には、既に午後九時を過ぎていた。 思ったよりも長居していたらしい。 緊張していると、つい時間の流れに疎くなるものだ。
僕は、誰もいない家のカギをあけて、中へはいった。 きっと猫が出迎えてくれる……。
しかし、そんな期待も裏腹に、猫はどこにも見当たらなかった。 一体、どこへいったんだろう……? もしかして、夜のお散歩かな? いやいや、まさか。
その後、僕はしばらく猫をさがしてみたが、猫のいる気配がしなかった。 ミルクでおびき出そうとしても、だ。 ……夜の散歩説が有力になってくる。
いや。 それでも、家にはカギが掛かっていたはずだ。 リトルのところへ向かう前に、僕は家に立ち寄って、猫を家の中へいれた。 その後、きちんとカギを閉めておいたはず。 外から掛かっているから、中からはあけられない。 中から開けられるのは、窓だけだ。 だが、窓だって、猫に開けられるような構造ではない。 そうさ、あんなに小さくて、非力な仔猫に、何ができるというのだろう。 カギをかいくぐるなんて、化け猫みたいじゃないか。 きっと、家のどこかにいるはずだ!
だが、数十分たっても、一向に猫は姿を見せなかった。 なんだか、寂しくなってきた。 本当に、猫はどこかへ行ってしまったのだろうか……。
不安になってきたので、僕は急いで自分の部屋へと向かった。 予想が当たっていれば……。
そうだ、やはり。 窓のカギがあいている。 おかしい。 僕はきちんと窓をしめてカギもかけたはずだ。 なのに、何故窓のカギが開いているんだろう……? もしや、今度こそ本物の空き巣に入られたんじゃ!
僕は、盗まれているものが無いか、家をすみからすみまで捜査した。 キッチン、リビング、母さんの部屋……だが、キッチンやリビングには荒らされた後などないし、通帳などはきちんとしまってあるままだ。 母さんのクローゼットのなかにも、みっしりと服が入っている。 盗まれたものは一つも無いようだ。 ……あるとすれば、あの猫ということになる。 まさか? 猫を盗んだ犯人……一体何故、猫を盗むんだろう。 猫が大好きなのかな。 そうだとしたら、ジェシーに謝らなくちゃいけないことになる。 嫌だなあ。
そんなことをしているうちに、母さんが帰ってきた。
「おかえり、母さん」
母さんは、リビングまで来て、僕にこう言った。
「そういえば静かだけど、あの猫はどうしたの?」
そういわれて、僕は焦った。 まさか、帰ってきたら窓が空きっぱなしになっていた、だなんていえない……。
「わからない。 たぶん、散歩に行っているんだ」
「あらそ。 まあいいわ。 さっさとなんとかしてくれないと困るんだから」
その後、僕は夕食を作って、それを母さんと一緒に食べた。
なんだか、今日は色々なことがあった。 ほっと一息ついた頃に、疲れがどっと出てきた。
部屋に戻った後、僕は着替えないままベットに倒れこんだ。