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「フィ~」

 俺は額に滲む汗を拭う。そして買い物袋を今一度持ち直して帰路を急いだ。早く帰らないと……子供達が腹を空かせて待っている。

 太陽が最も空高く昇る昼時――雲ひとつ無い晴天の下、ミルメース中央通りは道行く多くの人々でごった返していた。

 季節もいよいよ夏らしくなってきており、陽射しも段々と強くなってきている。草木の葉色が一段と力強く感じられるようになったのもそのせいだろうか。

「ショウ! 何か買ってっておくれよ!」

 顔馴染みとなった商店の女将さんからお呼びが掛かった。

「もう今日は荷物持てないよ!」

「ハッハッハ! だろうねぇ!」

 女将さんは大口を開けて笑うと手を振って他のお客の接待を始めた。それを見て俺は一つ会釈をすると再び歩き出す。

 しばらくして通りを抜けるとそのまま妖精街への入口をくぐり抜けた。ここまで来れば羽根が使えるため移動が楽になる。

 とは言え妖精街も外と変わらぬ暑さだ。俺は今一度汗を拭うと間借りさせてもらっている『幸福絶倒』へ急いだ。

 宿に着くと玄関先で女将のジュランさんが掃除をしており、軽く挨拶を済ませると部屋へ直行する。そしてドアをノックすると可愛らしい声の返事が帰ってきた。

「はーい」

「フィリア早く開けてくれぇ。荷物重たいぞー」

「待って待って!」

 ややあってドアが開いた。

「はい、ただいま~」

「おかえりなさ~い」

「おかえり~」

 とフィリアとルカが迎えてくれた。はて、残る二人は何処へ。

「アベルとエルリックは?」

「ん? 外で遊んでるよ」

「マジか……」

 こんな暑い中よく遊びに行く気になるものだ。まぁそれだけ体力が余っているのだろう。

「今日仕事は?」

 ルカが昼食の支度をしながら問いかけてきた。

「今日は午後から。飯食ったら行くよ」

「んじゃ仕事頑張ってもらうためにも張り切って作りましょうッ!」

「いや……そんなプレッシャーいらないから」

「そう?」

 ルカは徒に笑って見せた。


 午後――昼食を済ませた俺はギルドへ向かった。

 ギルド内は空気がヒンヤリとしていて心地良く、道中かいた汗もみるみるうちに引いていく。そして掲示板の前に立って早速仕事を探した。

 何となくこんなシチュエーションが最近あった気もするが、デュランさんにしてみれば気のせいと言うかもしれない。

「さ~て、今日はどんな仕事があるのやら……」

 と、いよいよデジャヴュな感じが強まってくるとそんな俺に声を掛けてくる輩がいた。まさか――と思いつつ振り返る。

「ッ!」

「……何を驚く」

「なんだプリシラさんかぁ」

「何だいそのガッカリ感は」

「いや――ちょっと。ハハハ。で、何か御用ですか?」

「ん、ああ。ちょっと紹介したい奴がいるんだ。付いてきな」

 俺は言われるままプリシラの後を付いて行った。はてさて何処に連れていかれるやら。

 そんな事を考えている内に目的地に到着。目的地はどうやらギルド内に有る休憩室だったようだ。こんなとこで紹介した人物とは一体どんな人物だろうか。俺は何となく緊張しながら部屋に入った。

 休憩室には向かい合う様にソファーが二つ置かれており、その間に小さなテーブルが一つ。待ち人は手前のソファーに座っていたため顔は未だ見えない。

「待たせたね」

 部屋に入るなりプリシラは挨拶を済ませた。するとソファーに座っていた人物はくるりと顔だけ振り返る。そして此方に気付くと素早く立ち上がりお辞儀をしてきた。俺も思わずそれにつられてお辞儀をしてしまった。

「まあまあ、二人共そう畏まんなって」

 言ってプリシラはソファーに腰を落ち着かせ、懐から煙草を取り出すと美味そうに吸い始めたのだった。


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