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成人男性、魔王を倒す。  作者: マルク
第三.五章
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兄貴③

 

 地面に降り立った俺は一先ず背中に負ったダメージを回復した。

 デュランはと言うと――先程の落下で砂埃が舞ってしまったため今は姿が見えない。しかし長年の、と言うほど生きてはいないが今までの経験からして――。

「まだまだぁっ!」

 砂埃をブラインドに奇襲攻撃、ですよね。

「そう来ると思ってましたよ!」

「へッ、クソッタレが!」

 俺は全身の体重を乗せたカウンターをデュランの顔面に叩き込んだ。流石のデュランも奇襲カウンターは回避することは出来なかったようだ。

 肉厚な感触が拳から伝わってくる。全体重を乗せたと言っても言いはずなのにデュランの体に押し返されそうになる。

 しかしそこは男子。男子? まぁ、あまり関係無いように思えるが――ともあれ俺は腕を思い切り振り抜いた。

 すると僅かばかりデュランの巨体が後方へ吹き飛んだ。

「おっしゃーー!」

 会心の一撃に思わずガッツポーズをしてしまった。

「ッハハハハハハハハハハ! やるなぁショウ!」

 あれ? あまり効いていない?

「ツツ……おぉ痛ぇ」

 ふむ、一応は効いているようだった。と言っても鼻血が出るくらいのようだが。

「にしてもデュランさん硬すぎでしょう。手ぇすげー痛いですもん」

「へへへ、伊達に鍛えちゃいねぇよ。ふむ、で……どうだい。俺は」

「俺は?」

「だ~か~ら~魔王と比べてだよ」

「あ、あぁ……そういう――」

 しかしいきなり聞かれても困る。そんなのぶっちゃけ考えている暇などなかった。だが、とりあえずは考えてみる。

 考えて考えて考えて……出てきた答えは――。

「デュランさんも十分強いですけど、それでもやっぱり魔王の方が強いかもしれませんね」

「ふーん……そっか。やっぱまだまだつえー奴はいんだなぁ」

「いや、それでもデュランさん強いですよ。やっぱり」

「へへへ。やっぱり? ってかショウ、お前も随分動けるようになったじゃねーか」

 まさかのお褒めの言葉。心の準備ができていなかった分カウンターを食らった気分だ。しかし嬉しいカウンターだ。今まで色々お世話になってる分ちょっと嬉しかった。

「にしても、この分じゃ今度の代表選考会は危ないかもしんねーな」

 代表選考会?

「あの、代表選考会って何ですか?」

「なんだ、お前知らねえのか?」

 俺は小さく頷く。

「来月末志士の集い(デバルウィ)が開かれるんだよ。代表選考会ってのはそれに出場する人間を決めるギルド内の――まぁ予選みたいなもんだな」

「え、ちょ、あの待って下さい。出場ってなんですか?」

「あれ、もしかして志士の集い(デバルウィ)が何なのかってトコからわかってねえの?」

「いや、なんか会議みたいなものっていうことぐらいは……」

 消え入る様な弱々しい返答。

「おいおいマジかよ」

 デュランは呆れたように頭を掻いた。ってかそんな呆れられても……。

「ま、いいか。んじゃちゃんと聞いておけよ。あのな、志士の集い(デバルウィ)ってのは年二回ギルドの盟主がそれぞれ自分ントコのギルドが有利になる条例を議会で提案する。だが全部が全部採用されるわけじゃねぇ。各ギルドの代表者を戦わせて最後まで残った奴ントコの条例だけが採用されるって寸法だ」

「へぇ~」

「へぇ~、じゃねぇよ。お前もギルド内の予選に参加すんだかんな」

「マジっすか!?」

「当たり前だろう。お前もウチのギルドメンバーなんだぞ?」

 いや、そう面と向かって言われると少し恥ずかしいのですが……。

「でも、ということはもしかしたらそん時デュランさん――と?」

 デュランは笑顔で頷く。

 たった今酷い目に合わされたというのにまた同じ目に合う可能性があるということこか。ふむ、出来れば御免蒙りたい。

「ま、時期がくればわかんだろ。ってンなことよりトレーニングだトレーニング。な!」

「……ハァ。りょーかい」

 それから再びデュランとのトレーニングが再開――結局全身アザだらけで一日を終えた。が、トレーニングはこの日だけでなく、その後三日三晩続けられた。

 確かに時間制限決めてなかったけれども……兄貴元気すぎッス。

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