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終・スリフトの依頼⑦

 

「大丈夫なの?」

「フフフ、エルリックよ……先生を信じないのか? ん?」

 起死回生とはこういうことを言うのかもしれない。まさに九回裏ツーアウトランナー無しからの逆転劇。

 これが単なる事故満――いや、自己満足で終わっても本望と言えるレベルかもしれない。まぁ、全て上手くことが一番なのだが。

「どうするの?」

「フフフ。なぁエルリック、今奴が使おうとしている魔法の属性とそれに対して効果的な属性を答えてくれ」

「え? えとぉ……フラムの魔方式だから――ってことはあの魔方陣は炎の属性で、効果的なのは水!」

「その通り」

「でもそれがどうしたの? あの魔法に対抗するには難しい魔法じゃないと対抗出来ないよ?」

 そう。エルリックの心配はごもっともで、先程も述べた通り勉強途中で放り出したため今だかつてあの難易度の魔法を使えた試しが無いのだ。

 しかし――。

「わかったんだよ! あいつのお陰で!」

「わかった……て?」

「まぁ、見てなさい」

 俺は指先に魔力を溜め、魔方陣を描き始める。描く魔方陣はもちろん――四方反転背理反言式魔方陣。ベルガザールの魔法に対抗し得る魔法を生むための魔方陣だ。

 問題は二十九式から三十式に移行する魔方式だったのだが――まさかその答えを敵に教わることになろうとは。

 言うなれば英語のテストで消しゴムの綴りがわからなかったが消しゴムのカバーにそれが書いてあった様な。漢字のテストで『複雑』の複の字がなんだったか思い出せなかったが、問題用紙の片隅に『複製禁止』の言葉を見つけたかのような気持ちである。世の中何があるかわかったもんじゃない。

「青海の覇者、六海を統べし群青の戒律王。我古き契約に則り汝に願う。世の戒律を屠りし罪人へ、汝が慈悲深き断罪を以て討ち滅ぼせ――」

 あとはベルガザールが詠唱を終える前に此方も詠唱を終えられたら――いや、せめて同時にでも終えることができたら。

 俺はかつて無い集中力とスピードをもって魔方陣を描き上げていく。

 そして問題の三十式――ここで幾度となく苦汁を舐めさせられ、挫折させられたことか。俺はベルガザールに倣って魔方式を書き込む。すると魔方陣は一段と輝きを増した。

 よし、このまま!

「先生早く!」

 わかってる。わかってるぞエルリック。しかしこういう時こそ落ち着くことが大事なのだ。

「――深淵より生まれ普く罪を罰す。汝が矛、今我が矛となりて――」

 もう少し。もう少しだ。魔方陣の完成形なら完璧に頭に入っている。

「先生ッ!」

 エルリックが袖を揺すりながら終始ベルガザールの魔方陣を見ていた。今奴の魔方陣を一瞥する程余裕は無いが、エルリックの様子からだと本当にギリギリの様だ。

「――焦熱二抱カレシ業炎ノ剣、終焉ノ灯火ヲ切リ裂ケッ!」

 あれ? 何か言い切った感じがしたんだけど最後……もしかして出来ちゃった?

 俺は指先を動かしつつも視界にベルガザールとその魔方陣を捉える。するとそこには魔方陣を描き終えたベルガザールと限界まで魔力を蓄えた魔方陣の姿が映った。

 そして――。

「――終焉の大火(ブレイズエンド)ッ!!」

 ベルガザールは容赦なく魔法を放った。

 すると魔王の描いた魔方陣から赤々と燃えたぎる炎の刃が姿を現し、ベルガザールの腕が高々と天に向けられると炎の刃も高々と天に掲げられる。

 そしていよいよベルガザールが腕を降り下ろすと炎の刃がそれに呼応するかの様に俺達に向かって降り下ろされてきた。

「ひゃーーっ」

 エルリックが頭を抱えてしゃがみこむのが見える。それだけベルガザールの魔法には威圧感が有るということなのだろう。

 だが、それと同時に――。

「出来たぞエルリックッ!」

 此方の魔方陣も完成した。そして躊躇うことなく魔法を解き放つ。

「――蒼碧の海震(タイダルウェイブ)ッ!!」

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