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終・スリフトの依頼⑥

 

 ベルガザールは魔法の詠唱と同時に魔方陣を描き始める。

「我、焔ノ王ニシテ地獄ノ主タル汝二請ウ。願ワクバ我ガ仇敵二汝ノ罰ヲ。願ワクバ我ガ宿敵二汝ノ業ヲ――」

 待て待て待て待て。それはいくら何でもマズイんじゃないか?

 俺はベルガザールの描く魔方陣に驚かざるを得なかった。それは隣に立っていたエルリックも同じだったようだ。

 これは魔法を、引いては魔方陣についてある程度かじった人間なら容易に理解出来ることなのだが、魔方陣は基本的にいくつかの魔方式(ルーン)から成り立っており、その魔方式が難解になればなる程魔法のレベルも上がっていく仕組みになっている。

 ということを念頭に、今ベルガザールが描いている魔方式を見てみると――。

「……どーしましょ」

 冷や汗と苦笑いしか出てこなかった。

 専門用語で説明するならばあの魔方陣は四方反転背理反言式魔方陣。円式(スラフィ)を核に北に反式(ジャリア)を、南に同式(ルーテン)を、そして東西にいくつもの助式(コンティル)をちりばめた魔方陣である。

 まぁ、分かりやすく簡単に言うと『どえらいこと』になっているのだ。言うなれば手に終えないレベルに達していたりする。

 正直あの魔方陣、最近少し勉強したのだがその難易度故早々に放り出したシロモノだったりするのだが、もうちょっと真面目に勉強していればと後悔の念が湧き上がってきた。ちゃんとやっていれば今対抗することが出来たかもしれないのに。

 まぁ余談になるが魔方陣というのは――詳しく言うとキリがないので端的に言うと、漢字と同じで書き順が存在し、正しく描かねば効力を発揮しない。つまり魔法を覚えるということはその書き順を覚えるのと同義であると言える。

 ではどうやって覚えるかというと、誰かに師事することはもちろん、魔法書を読んで自ら学ぶというのが王道だろう。

 しかし後者の、所謂独学には限界がある。今回の魔方陣の様に難易度の高い魔方陣ともなると魔法書に書き順が書いてなかったり、書いてあっても出鱈目だったりと、それはもうてんてこ舞いなのだ。

 ホント、読んでいて著者はどうやってこの魔方陣を描いたんだと問い質したくなる。

 ふむ、余談もここまで話すと余談ではない気がするが、とりあえずは遠回しにあの魔方陣が色々とスゲー難しい魔方陣だったということを理解して頂きたい。

「先生……」

「ハハハ、ヤバいなエルリック」

「うん」

 エルリックはことの重大さに気付いているようで、完全に怯えているようだった。

 俺はせめても、と思い三人を背後に匿った。焼け石に水にもならないことはわかっていても、である。

「――地二住マイシ怨霊ノ死怨。底二息ヅク死霊ノ怨念……」

 ベルガザールは着々と魔方陣を描き続けていた。あれが完成する時俺達はきっと生きてはいまい。どこからともなくヒーローが現れて助けてくれるんだったら話は別だが。

 まぁ、現実問題そんなことは俺にモテ期が来るぐらいあり得ないこと。ここを切り抜けるためには自分達で何とかしなければならないのだ。

 しかしこれと言える様な良い考えが全く浮かばない。誠に残念ながらベルガザールが魔方陣を描いている様をただ見守るしかなかっ――。

「――ぁ」

「先……生?」

「ハ、ハハハ――エルリック、何とかなるかもしれないぞ」

「え?」

「何とかなるかもしれないって言ってるんだ」

「あれを何とか出来るの?」

 俺は小さく笑って答えた。



 

 

 

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