終・スリフトの依頼④
「みんな、最初っから全力でいくぞ」
「はい!」
俺、アベル、フィリアは練破動をもって身体能力を上昇させ、前左右の三方向から一気にベルガザールへ詰め寄った。
「ハァァァァアッ!」
破力を込めた俺の拳、フィリアの脚、アベルの剣――三種の攻撃が一同に放たれた。
しかし――。
「フッ!」
ベルガザールは不敵な笑みを浮かべると翼を広げ空に飛び上がりそれを交わした。練破動で身体能力を上昇させているにも拘わらずその上を悠々行くスピードだった。
「――フレイムバウンドッ!」
だが此方は四人。前衛三人の攻撃が文字通り空振りしても四人目が――我らが小さな魔法使い、エルリックが穴を埋める。
「ム……」
火球はベルガザールに迫っていた。が、黒き魔王は慌てる様子もなく一瞥すると左手で虫を払うかの様に火球を払った。直撃すると思われたエルリックの魔法は遥か上空に撃ち上がると花火の様に弾けとんだ。
「まだまだぁあッ!」
前衛三人は跳躍し、上空へ回避したベルガザールを追撃する。そして再び破力を込めた攻撃を繰り出していった。しかしその全てを、ベルガザールは難なく交わしていく。
一撃でも、いや一瞬でも――触れることが出来れば破力によるダメージが与えられるのに。クソッ! 掠りもしねぇか!
瞬間、俺は攻撃が当たらないことへの苛立ちから力任せの一撃を放ってしまった。
「フハハハハッ!」
ベルガザールは大きく口を開けて笑うとその隙を逃すはずもなく、ジャストなタイミングでカウンターの右ストレートを俺の顔面に叩き込んできた。
その衝撃は一瞬世界が真っ白になってしまったのかと思うほどで、数瞬遅れて顔に鈍痛が走った。しかも戦っていた場所が空中ということもあり、パンチの勢いそのままに地に叩きつけられた。
頑丈な袋が爆発したかの様な破裂音が聞こえると直ぐ様全身を打ち付けたことによる激痛が俺を襲った。
「クッ――ハァッ」
背中のダメージが体内を通じて鳩尾を殴られたかの様な錯覚を覚える。横隔膜がその衝撃によって動きを止めてしまい呼吸が出来ない。
しかし――。
「――キュアフェザー!」
地上で待機していたエルリックがすかさず俺を回復してくれた。
「助かったよエルリック」
「はい!」
「引き続き援護よろしく」
「了解!」
「うしっ!」
言って再び俺は前衛としてのポジションに戻った。
上空では引き続きアベル・フィリアのタッグがベルガザールとの激しい攻防繰り広げている。子供タッグは相変わらず全力で戦っていると言わんばかりに険しい表情をしているが、ベルガザールは相変わらず笑みを絶やさずと言った具合だった。
俺はそこに参戦するにあたりベルガザールの隙を狙っていた。隙を見つけて全力の迅衝波をぶちこんでやるつもりである。何せいくら実力が上だとしても本気で戦わねば隙の一つや二つは生まれるはずなのだから。多分だけれども。
「やぁッ!」
フィリアの渾身の一撃――破力を内包した右足による蹴りがベルガザールの首筋へ放たれる。しかしベルガザールはスウェーでそれを交わすとそこへ追撃として放たれたアベルの突きを首だけで交わした。
戦闘が始まって未だにベルガザールの体に触れることすら出来ていないでいる。三人で無理なら二人では尚更である。
ところが、だ。ここで僅かながらベルガザールに隙らしい隙が初めて出来たと言えるかもしれないのだ。この判断はあくまで俺の判断であるため本当に隙なのかはわからないが、アベルの突きがベルガザールの顔を掠め空を突いたせいで剣の刀身がベルガザールの目を隠したのである。
則ち、アベルの攻撃は空振りだったが結果としてブラインドななったのだ。
俺はここぞとばかりに全身全霊、渾身にして会心、全力の迅衝波をベルガザールのガラ空きとなった腹部へ叩き込んだ。
大きな爆発音と共にベルガザールの体は吹き飛ばされ、そのせいでバランスを失ったのか地に落ちていった。




