表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/144

島巡り

 

 ルカとの挨拶が済んだ俺は再び歩き出した。もちろん、島一周を為し遂げるためである。ルカはというと俺の肩に腰掛け軽快に鼻唄を歌っていた。

 これで全く重たくないのだから不思議である。レディに年齢と体重を聞くことは本来タブーとされているが、ここまで来ると逆に興味がそそられる。機会があれば聞いてみよう。

 

 リスタートしてかれこれ十分、現在俺は剥き出しになった大地――舗道なんてものが無いため――を歩いているわけだが、如何せん陽射しが強く、情けないことにへばってしまった。今はまだ一月なのにこの太陽はなんなのか、ってかこの島自体なんなのか、と責任を周りに押し付けてみたりしたが、なんだかんだで結局は日頃の運動不足が祟ってのことなのだろう。ここは我慢して大人しく前に進むことにした。

 しかしそんな健気な俺に追い討ちをかける様に新たなモンスターが二体も出現した。

「ったく疲れてるってのに!」

 先程のスライムとは違い今度は人型のモンスターだ。人間の様な背格好で丸っ鼻。身長こそ俺の腰ぐらいしかないが、それを補って余りあるほどの凶器――人間の二の腕くらいの太さはあろうかという棍棒を携えているのだから質が悪い。

「あ、ゴブリンじゃない」

 ルカが言った。

「ゴブリンだって?」

「そ、あの棍棒が特徴的ね」

 ふむ。ゴブリンと言えば名作『ファイナルクエスト』のザコキャラ。スライムと対を成すザコの代名詞と言っても過言ではない。

 しかし実物はどうだろう。なんと凶暴そうなことか。いや、その前にあの棍棒はいかんだろう。いくら体操着で防御力が上がったとは言え――これはこれで可笑しな話であるが――あれで殴られたら失神どこの騒ぎでは済まない気がする。

「あ~もう、チョー痛そうじゃん」

 言いながら俺は腰を低くして構えた。

「ねぇねぇ、ショウ」

「何? 話なら手短にな」

「武器は?」

「無いよ。見りゃわかんでしょ」

「ちょ、素手とか。アハハハハハハハ」

 ルカは腸捻転を起こさんばかりに俺の肩で笑い転げている。しかし武器が無いのは仕方ない。手ぶらでここに来てしまったのだから。とは言っても武器は欲しい。俺はダメもとでルカに聞いてみた。

「なぁ、武器とか出せないの?」

「ハハハハハハッ、ハ?」

 どんだけ笑うつもりなのか。

「だ~か~ら、武器とか出せないわけ? 体操着みたいに」

「なんだ、折角だから素手で戦えばいいのに」

 折角とは何だ。さっきまでスライム相手に素手で十分戦った。

「まぁでも一応そこまでは契約に入ってるし、ちゃんとやらせてもらいますよ」

 契約という言葉が少々気になったがそれは後で聞くとして……ここは注意せねば。先程の体操着事件の二の舞にならぬためにも、いつ記憶からデザインを引っ張り出されてもいいようにカッコイイ武器を想像する。

「よいしょっと。はい、これ」

 うそ? もう終わり? 早くね? 色々想像してたんだけど……うん、うわぁ……なんか魔法使いとか使ってるっぽい杖だぁ。

 ルカがものの数秒で具現化した武器は木の棒に赤い珠の付いた杖だった。

「どう? 見習いの魔法使いにはもってこいの武器でしょ?」

 ええそうですとも。別にカッコイイ剣とか全然考えてなかったですし。俺も杖が良かったと心の底から思ってましたとも。でも何だろう、この胸に広がる切なさは。

「さ、これで一式揃ったことだしチャチャっとやってしまおう!」

 何か釈然としないが……とりあえずゴブリンを倒してしまう事には賛成だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ