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スリフトの依頼④

 

 宿を出発すると先ずは道具屋へ向かった。買う物は既に決めてある。簡易結界、傷薬、食材にエトセトラ――必要なものを取り揃え、その足で武器屋へ。理由はフィリアに新しい武器を買ってあげるためだ。

 何故か――今フィリアの武器は自動弓。しかし彼女は破力に目覚めたことで接近戦の専門家(エキスパート)となりつつある。だったらこれからは接近戦がこなせるようにグローブ系の武器に変えた方がいいだろう、と考えたからだ。店に行きレザーグローブを購入しフィリアに着けさせ――これで準備万端だ。

 意気揚々と歩を進める子供達の後ろに付き、ミルメースのトレードマークとも言える巨大門の脇にある小さな門をくぐりいざ西へ。予定では夕方辺りには到着するはずである。

 サンクの季節はそろそろ初夏に差し掛かっていた。そのせいか風が弱まると太陽が昇りきっていないというのに額にはうっすらと汗が滲む。背中と背負う荷物の間に熱が籠るのがわかった。

 太陽が背後から昇り始め、ミルメース付近に広がる大草原に俺達の影が長く写し出された。その遥か先にジェスラー山脈があり、その山奥に目的地のクラッススの滝がある。ラビリアからの距離を思えば大したものじゃない。俺は足取り軽く突き進んだ。

 一方子供達はというとフィリアを先頭に鼻唄混じりで行進中――聞いたことのない鼻唄だが元気が出る曲だった。

 歩き出してしばらくはミルメースの外壁が見えていたが昼にもなるとまったく見えなくなり、代わりに僅かであるが山の様なものが見え出していた。

 そして昼頃になるともう一つ変化が――それは気温である。体感温度は二十五六度、しかし荷物を背負って歩き続けるとなるとなかなか良い汗をかいてしまう。するとそんな俺に気付いたエルリックが声をかけてきた。

「先生、それ重たくない?」

「え? それって――荷物?」

「うん」

「ハハハ、大丈夫だよ」

 言って俺は軽く汗を拭い笑ってみせた。が、エルリックはまだ何か物言いたげに俺を見ている。

「どした?」

「……ねぇ先生。僕使ってみたい魔法があるんだ」

「ん? どんな?」

「この前先生の本読んでた時に見たんだけど――」

 そう言うエルリックの言葉に驚いた。俺の本とは本屋で買った魔法の専門書のことだろう。仕事との兼ね合いでまだ半分しか読んでない本だが、これが結構専門的で理解が大変な本なのだ。子供達には子供用の魔法書を買っておいたはずだが、エルリックはそれでは物足りなかったらしい。

「へぇ~。で、どんな魔法だい?」

「えと、荷物置いてみて」

 俺は言われた通り背負っていた荷物を地面に置いた。するとエルリックは荷物に魔方陣を直接描き――そして詠唱を始めた。

「現と幻の狭間にて、実は虚となり虚は実とならん。万象逆転の背理を我が手の内に……相反の法(リバースリル)!」

 すると俺の背負っていた荷物が突然目映い光を放ち始めた。その眩しさは目を細めてしまう程である。とは言っても荷物がどうなるかは気になるところ。薄目ながらそのシルエットを追った。

 シルエットはしばらく目映い光を放ち何の変化も無いように思えたが、光が弱まるにつれ次第に小さくなっていく。子供一人分はあろうかと言う大きさの荷物は最終的にはなんと掌サイズにまで縮んだのである。それはまるでジオラマを見ているかのような感覚だった。

 俺の知らない魔法――それをエルリックが使って見せた。つい最近まで魔法を使ったことの無かった子供がいつの間にかそこまで成長していただなんて……。

「やったー!」

 魔法の成功にエルリックは嬉しそうに両腕を空に向けて突き上げる。俺は違う意味でガッツポーズをしたくなった。

 

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