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続・みんなでお仕事⑤

 

 翌朝――。

「先生ー、あっさでっすよー!」

 えぇ?

「起きろーーー!」

「ッ! グェッ!」

 突然天地が崩壊したかのような衝撃が、腹部を中心に全身に広がった。

 何!? 何が起きた!? ってか痛ッ! 何なんだ……。

「先生おはよー!」

「……フィリ、ア?」

 目を開くとフィリアが俺の上に乗ってニッコリ笑っていた。微睡(まどろ)む脳ミソを使って今の状況の理解に努める。結論はどう考えてもこの子が俺にボディプレスをしたとしか思えない。

「先生お寝坊だよ」

 俺の寝起きが悪いのは先刻承知のことだろうが、どうやらこの子はまだ知らなかったらしい。だったら体で覚えさせるしかあるまい。

「フィ~リ~ア~ッ」

 眉間にな並々ならぬ力を込め、獣の唸り声に似せた重低音をフィリアにぶつける。しかし――。

「先生が怒ったーッ!」

 と、まったく堪えた様子を見せず楽しそうにテントから出ていった。ハァ、朝から元気すぎだっつーの。まぁ昨日あんな早く寝たからだろうけど。

「くぁ……ぁふ」

 本当ならもう一眠りしたいとこだが――目が覚めてしまった。仕方ない、起きよう。俺は頭をポリポリ掻きながらテントを出た。

 外に出ると眩しい朝陽が視界に入る。まだ太陽が半分しか姿を見せておらず、世界はまだ半分寝ていた。しかし朝焼けに照らされた大草原の美しさは筆舌に尽くしがたいものだった。早起きは三文の得、なんて言うがこれはそれ以上の価値があるかもしれない。

「起きた?」

「ん……あぁ。ってか何でそんな格好してんの?」

 俺に声を掛けたルカは何故かこんな朝っぱらからエプロン姿だったのだ。

「いや、だってあの子達がお腹すいたって言うもんだから……」

「ハハハ、マジか」

 昨日夕飯をろくに食べずに寝たからしょうがない気もする。

「三人は?」

「そこら辺で遊んでるんじゃない?」

「えぇ?」

 辺りをぐるりと一周すると――いた。あろうことか、朝から楽しそうに鬼ごっこ的なランニングをしていた。

 ハァ――とため息を一つつく。早くやめさせないと下手したら三時のおやつ辺りでくたばってしまうかもしれない。

「おーい、朝御飯できたぞー」

 俺は口許に両手を添えて簡易拡声器を作り子供達を呼んだ。

「おはよーございます!」

 エルリックがとびきりの笑顔で挨拶してきた。可愛いいけれど、ちゃんとペース配分をビシッと教え――られるのだろうか……。

「おはよう。手、綺麗にしてからご飯食べるんだぞ」

「はーい」

 元気な返事は素晴らしいことだが……元気すぎというのも考えものである。

 各自ルカから朝食を配給されると無我夢中になって食べ始めていた。美味しい美味しいと言いながら咀嚼している。ルカは嬉しそうにその姿を眺めていた。

 朝食を食べ終えた頃になると太陽もようやく目が覚めたようで、太陽としての仕事を始めていた。雲一つ無い空を見ると今日もいい天気になりそうだった。

 テントを片付けて再び出発――と、その前に今日はちゃんとペースを守ることを伝えておく。子供達にちゃんと伝わったかは不明だが、相変わらず返事だけは良かった。

 そして――。

「しゅっぱーつ!」

「オー!」

 フィリアを先頭にアベルとエルリックが続く。俺はやれやれと肩を竦めその後に続いた。今日も忙しい一日になりそうだ。



 


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