続・みんなでお仕事④
時折笑顔を交えつつ、反省会は滞りなく進められた。これは反省会というよりコミュニケーションを取るための談笑に近いかもしれない。
しかし三人と話をする中、ふと思ったことがある。それはこの子達がどこにでもいる普通の子供と変わらないということだ。
フィント司教はこの子達は力を持った子供達だと言っていた。俺は最初力を持つということは何かしらの対価なり、犠牲を払っている――つまりは普通の子供とは少し違うものだと思っていた。
だが実際は違った。普通の子供と同じで感情の起伏はあるし、思考レベルも大差無い。先程の戦闘も何か凄い箇所があったかと言われれば無いと答える。
アベルもエルリックもフィリアも皆純粋で、無邪気で、自由で、笑った顔が天使の様で――普通と違うところなんて何一つ無いのだ。
ただ、そう考えると一つの疑問が湧く。三人の持つ『力』とは一体なんなのか、ということ。しかし自分で問題提起しておきながら恐縮だが一つ思う節がある。
それは先程の戦闘直後俺自身が感じたことでるが、三人の『力』というのは何か特別なもの――それはそれであり得ることだが――というより、元々の潜在能力が高いのではないか、と考えている。
フィント司教が話してくれた中で『徹底した教育』という様なフレーズがあったと思う。子供達の力が完成されたものであれば教育は徹底しなくともいいはず。逆を言えば未だ未完であるが故にその様な教育を施さざるを得ないのではないだろうか。
だとすれば俺の考えもあながち間違っているとは思えなくもない。もしこの考えに問題があるとすればこの子達がどう育つかは全て俺次第だということぐらいである。
ふん、だったら立派に育ててみせようじゃないか!
俺は一人意気込むと立ち上がった。反省会は終了だ。
「そろそろ行こうか」
「はーい」
弾ける笑顔と共に元気な声が返ってきた。
ミルメースまでの道のりは長い。今日歩いた限りでは三分の一をいってくれれば御の字だ。子供達は俺が懸念した通り、夕方ぐらいになると目に見えて疲れた顔をしていた。
「ルカさん、どうします?」
「できればもうちょいなんだけどね~」
日が完全に傾いているとはいえ、遥か地平線にまだ半分ほど顔は出している。
俺はこれから歩むべき道のりを一瞥し、後ろに付いてくる小さな三つの影に目を落とした。
「……ハハハ」
見事な疲れ具合がちょっと可愛かった。本当に後先を考えないでいられるのが羨ましい。まぁ、そういられるのもこの年頃の特権か。
「どうするの?」
「いやー、もう無理だな今日は」
「フゥ……だね」
ルカは子供達の表情を見て、呆れながらも顔を綻ばせる。
「よし、じゃあ今日はここでキャンプだ」
「はーい……」
三人の体力はほぼ空っぽなのだろう。返事にすら力が無かった。明日はペース配分というものを教えよう。
俺は背負っていた袋からキャンプセットを取り出す。キャンプなぞ初めての経験だが、子供達の手前、然も手慣れたかの様子を見せつつ、チラチラ説明書を読んでなんとかテントを完成させた。
一方その傍らでは、ルカがそれこそ手慣れた様子で夕飯の準備を始めていた。相変わらず良い匂いをさせやがる。俺の腹の虫がグゥと鳴いた。
さて子供達はどうしているだろうか。辺りを見渡してみる。しかし三人の姿は見えなかった。おかしい……あんな体力ゼロの状態で何処に行けるはずもないのに。
と、テントの裏手に回った所で――。
「あ……」
思わず声が出てしまった。三人は仲良くテント裏でくたばっていたのだ。その寝顔の愛くるしさと言ったらもう――これぞ『親バカ』ならぬ『保護者バカ』丸出しである。
しかし本当ならこのまま寝かせておきたいのだが、ルカと相談した結果、軽くでもいいからということでとりあえず夕飯を食べさせ、今日は早めの就寝となった。