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みんなでお仕事②

 

 買うものは決まった。残るは支払いだけだ。

「おいくらですか?」

「へへ、本来なら五千ピラー貰いたいとこだが――五百いいぜ」

「おぉ!」

 ピラーとはサンクで流通する金の単位らしいが、その値下げには驚いた。しかしあまりにも俺が考えなさすぎたのか、ほぼ「即決!」ぐらいの勢いで金の入った革袋を取り出した時だった――。

「待て待てーい!」

 ルカがいきなり耳を引っ張ってきたのだ。

「イテテテテ、な、何すんだよ」

「ちょっと待ちなって。ねぇ、お兄さん」

 ルカは鋭い眼光を店員に向けて放つ。店員の顔が一瞬固まった。そして次第に変に引き攣った笑顔となっていく。言うなれば『蛇と蛙』だ。

 実際ここからが凄かった。ルカはアベル達の武器を指差し値段の不当を説き始めたのだ。店員は最初それに抵抗を見せていたが、あれよあれよのうちに崖っぷちに立たされていた。まぁルカに口で勝負を挑んだ時点でこうなることはわかっていたが。

 何にせよルカの猛抗議で俺は余分にお金を払わずに済んだ。というかタダになった。時折ルカから脅し文句が聞こえてたかもしれないが、結果オーライである。まぁ、一通り事が済んだ後ルカから「もう少し物事を疑え」とお叱りを受けたりした。

 ともあれ、武器を揃えた後はミルメースまでの僅かな旅路で必要な道具を買いに行った。俺も一応回復魔法が使えるが念のために傷薬なんかも買っておいたりした。

 ただ、買い物をしてわかったことがある。何かを買うとお金は減るのだ。当たり前のことだが大事なことだある。そしてもう一つ――今の俺はサンク・シャンディア(この世界)での収入源を持っていない。つまりは使えば使うだけ金は減り、増えることはない。加えて言うならシスターから頂いた子供達の所謂養育費が全財産なのだ。これは早急に手を打たないと後で皺寄せが必ず来るだろう。

 こんなことが店を出た瞬間ふと頭を過った。俺はルカに相談してみた。すると呆気ない程に直ぐ答えが返ってきた。

「あぁ、それなら大丈夫」

「大丈夫って?」

「うーん……話すより見た方が早いかな。付いてきて」

 言ってルカは俺の肩から飛び立った。俺と子供達はその後を追う。やはり元の大きさだと飛ばなくても追いかけるのは楽だ。

 しばらくするとルカは一つの建物の前で止まった。建物自体は他のそれと同じ赤レンガ――しかし漂う雰囲気は明らかに違った。

「……ここは?」

「ここはギルドよ」

「ギル――ド? ギルドってあの、仕事の依頼とか受ける?」

「え? 知ってるの?」

「いや、まぁ……」

 たまぁにゲームに出てくるからどういう所かぐらいは知っていた。しかし本物のギルドに来ることになろうとは――。

「でも少しでも予備知識があるんだったら話は早いわ。仕事は至って簡単――依頼を受けてこなすだけ。そしたら結果をギルドに報告して報酬を受け取る。でも誰でも仕事ができるわけじゃない――ちゃんとギルドメンバーに登録しなきゃいけないの」

「なるほどね――で、俺達はメンバーに登録しに行くってことか」

「その通り」

 ルカは人指し指をビシッと伸ばす。

「よし、行ってみよう」

 俺は子供達を連れ立って建物へ入った。

 建物内部は採光が少なく薄暗い。しかし教会のそれと違い他を寄せ付けないような威圧感を覚える。そして何よりギルドでたむろする面々の、その外観の恐ろしいこといったら……。あれはもう何とか会系うんちゃら団に所属しているに違いない。こんな人達と一緒に仕事するのだろうか。そう思うと俺の気はげんなりせざるを得なかった。





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