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出会い③

 

 目の前にいるルカ――どう見てもその頭は俺の肩に届きそうな高さにあった。ここに来て突発的に成長期にでも入ったのだろうか。

「フフーン、驚いた?」

「驚くもなにも……何で身長が伸びたんだ?」

「それが違うんだな~」

「違う?」

「実は――」

 ルカの話によれば、身長の小さい妖精が他種族と生活を共にする際、街に妖精専用の生活空間を作るのだそうだ。先程の門はその入口、そして今いる場所が妖精専用の生活空間になるらしい。

 ただ、専用と言っても妖精しか入れないわけではなく、あの鏡を通過することで誰しもがこの専用のテリトリーに入ることが許されているらしい。その際妖精族以外の種族は鏡の魔力によって妖精族と同程度の大きさに変化し、サービスとして羽根を貰えるらしかった。俺も背中を振り替えるとルカと同じような羽が生えていた。

 何故この様なシステムが産まれたのか――それは妖精族の生活を知ってもらうことで偏見や迫害から身を守ろうとしたためだとか。先人はいつの時代も後の事を考えて行動してくれるようだ。

 しかし現在はそんな理由は殆ど知られていない――にも拘らず他種族と平和的に共存出来ているらしいが、それはこの場所を行き交う人々を見れば十分伝わってくる事実だった。

「なるほどね~。やっぱこっち来て良かったわ」

「お、そう言ってもらえると嬉しいね」

「うん、マジでそう思う。ってかルカ、そろそろ教会行かない?」

「あ、あぁそうね。行きましょ」

 言ってルカは先に飛び立った。しかし先程までの軽やかさは影を潜めた様な気がしないでもないが、おそらく気のせいだろう。というか俺も羽があるわけだからもちろん飛んでみようと思う。

「――うしッ」

 気合いを込めて背中に力を入れてみる――が、うんともすんとも動かない。もしかして何かコツでもいるのだろうか。と、そうこうしている内にルカがどんどん離れて行ってしまう。仕方ないので俺は再び走り出した。

 周りに歩く人や走る人がいないため障害となるものは少ないが、如何せん走っているのが俺だけという現状故に、周囲から好奇の目が飛んでくる。飛ばすなら目でなく俺を飛ばして欲しい。

 そんな俺の頑張りにようやくルカが気づいてくれた。

「何やってんの!?」

「ハァハァ、えぇ!? 何ッて――ハァハァ、走ってんのさ」

「いや、飛ぼうよ!」

 ごもっともなツッコミだ。

「飛び方……が、ゼェ、わかん、ない」

 ルカは顔を手で抑え、明ら様に呆れていた。俺からしてみれば先に飛んでいったのがそもそも問題だったのだ、と言いたいが……。

 この後ルカは呆れながらも飛び方を教えてくれ、斯くしてようやく俺も空を飛べる様になった。

「いやぁ、悪いね」

「飛べないんだったらちゃんと言ってよ」

「だから、ごめんて。ってかさ、教会はどこ?」

「ハァ……こっち。今度はちゃんと付いてきてね」

 ルカはそう言うと再び空に舞い上がっていく。今度は無事にその後に付いていけた俺だった。

 しばらく飛ぶとやがて人通りが少ない一画に到着した。パッと見閑静な住宅街といった雰囲気である。もしかするとここに住む妖精はセレブな妖精なのかもしれない。

 しかしそんな雰囲気を醸し出す家屋が建ち並ぶ中、少し頭がニョキッと伸びた建物があった。外壁の一番高い所に時計が備えられその下には美しいステンドグラスの装飾が施されている。

 もしや、とルカに訊ねてみた。

「おそこか?」

「う、うん」

 どうしたのだろうか。先程からどこかルカのキレが悪い気がする。まぁ、それは置いとくとしてようやく目的地に到着したわけだ。

 俺の受け持つ子供達との出会いも近い。

 


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