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終・島巡り⑤

 

 試験開始から三十分、この間結構な数の魔法をプレゼントしてみたがどれも気に入ってもらえず、結局魔法を使っては離れ使っては離れての繰返しを繰返していた。ただひたすら、まるでルーティンワークかのように繰返す。繰返す理由はただ一つ、新しいプランが全く思い浮かばないからだ。

 俺は本来、思考を巡らす際はゆっくりと落ち着いた状態で考えたい人間である。が、それをこのゴーレムが悉く邪魔してくるのだ。

 こう言うとまるで「モンスターが悪い!」と言っているように聞こえてしまうかもしれないが、ここで皆々様に正確な情報をご提供させて頂きたく、言い訳がましくも女々しい我が言に耳を傾けてもらいたい。

 不肖ながらこの弐鷹翔もそこそこの大人である。ゴーレムの行動が敵としては当たり前の行動であることは重々承知している。しかし一人静かに物思いにふけるためにも俺なりの努力をしている、ということについてご理解とご協力をお願いしたい。

 前述の通りこのモンスターは動きが鈍い。そのため動き回ることでモンスターの視界から外れることは可能であり、俺は幾度となくそれを為し遂げた。ゴーレムもその度に俺の姿を見失うが、数秒もしないうちにすぐ気付き平然と近寄ってくるのだ。

 別にこのゴーレムがメイジキラーの様に高密度の魔力体に敏感だというけではない。というより言葉は悪いが全体的にどんくさいのである。

 では何故すぐ気が付けるのか――理由はとてつもなく単純だ。

「後ろに回ったッ!」

 そう、本の妖精ことルカである。彼女は上空という安全地帯から俺の動向を逐一ゴーレムに伝えているのだ。

 これでは一対一(サシ)ではなく二対一。この戦いが試験であることを前提とするならば、これはアンフェアではないだろうか。

 というかあの妖精、一週間も寝食を共にし島一周という試練を乗り越えたにも拘わらず、まるで手のひらを返したかのようにゴーレム側に与していやがる。巷では真夏の氷像の様に儚くも繊細だと噂される俺の心は「妖精許すまじ! 裏切り者には罰を!」と叫び続けていた。了解である。

 斯くして敵は『一体』から『一体と一人』に増えた。否、始めからそうだったのだ。今更ながら気付いた。

 俺はとりあえずルカにも気を配りつつゴーレムの攻撃をのらりくらりとかわし、反撃の糸口を探すことにした。

「どうしたの~? そんなんじゃいつまで経っても倒せないよ~」

「んなことはわかってるよ――とッ」

 そう。わかっているのだ。わかっているがその先が……。

「ゴッ!」

「ぅおっ!」

 今のは危なかった。まさに紙一重だった。いや、よくよく考えると先程からゴーレムの攻撃を結構ギリギリで避けている気がする。と、ここでふと思い付く――それが現状打破の解決策でないのが残念だが――もしかしたらゴーレムのスピードが徐々に上がっているのかもしれない。

 確証は無いがこれが事実であれば戦いが長引けば長引くほど、俺にとってどんどん不利な状況に追いやられる可能性がある。こうなったら心機一転、従来の固定概念に因われない新しい考え方をするべきかもしれない。

 では具体的にどうするか――その答えは塾長に有り、だ。つまり、先程も言ったようにこの戦いはあくまで試験なのだから、この試験問題を作った塾長の立場から出題意図を類推するのだ。何故この問題を作ったのか、今の状況で言えば何故俺をゴーレムと戦わせたのかを考える。

 一応賢者見習いと言ってくれた塾長のこと、このモンスターを打撃で倒せとは言うまい。となると鍵はやはり魔法、そして……その応用に違いなかった。

 

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