終・島巡り③
時に俺は――弐鷹翔は思う。物事にはすべからく因果がある……原因があるから結果があり、理由があるから結論があるのだ、と。これはいわゆる原則的な自然の流れと言えるかもしれない。
これをテストに当てはめれば、日程を告知するという原因を踏まえてこそテストを実施するという結果が得られる筈であり、このような抜き打ち式は流れに反するのではなかろうか。
いや、面倒だ。この際はっきり言おう。俺は抜き打ちテストを認めない!
「認めない!」
「……何を?」
「え? あ、いや何でも……」
おっと、思ったことが口から零れてしまった。
「あっそ。んじゃちょっとそこに立ってて」
言ってルカはヒラヒラと俺の頭より少し高い位置に移動する。俺は言われた通りに直立した。これが試験と何の関係があるのだろうか。
パタパタと羽を忙しなく動かしながらルカは携帯を取り出した。そして画面を見ながら口を開いた。
「オッホン……弐鷹君、とりあえず島一周お疲れ様でした。途中で諦めず最後までやり遂げてくれて心より嬉しく思う。さて、ゴール早々申し訳ないがキミにはこれから最終試験を受けてもらいたい」
最初は突然何事か、と思ったが程なくして理解した。言葉遣いがルカのそれでなく、塾長に近い。だからおそらくだが、彼女は塾長からのメールを読み上げているのだろう。
「昨晩ルカからゴールの目処が立ったとの連絡があり、その際現在のキミの力を事細かに報告してもらった」
うん、やはり塾長だった。
「報告を見る限りよく成長してくれたと思う。そしてそれを参考に今のキミに合った試験を用意させてもらった。試験終了と同時にこちらに召喚する予定だから頑張ってくれ……霧岡、と――オッケー?」
「あぁ。わかった」
「よろしい。では早速始めます! 試験は……ダラララララララ――」
ルカは自らドラムロールを奏で携帯をいじりだす。まさか携帯から試験問題が出てくるのか?
というか全体的に試験というわりには緊張感に欠ける気がするが、何はなくとも最終試験、心して真剣に臨もう。
「こちら!」
言ってルカが携帯の画面を空に向けた。すると携帯から「シュー」という音が聞こえ、それと共に眩いばかりの光を放ち始めた。なんだかもう携帯ではない気がする。
俺があまりの眩しさに目をつぶっていると突然ドシンッという音と共に激しい地響きが足に伝わってきた。何事かとうっすら目を開けると目の前には今の今まで無かった土色の壁が……。
「ん?」
下から上へと視線を移す。おや? 上の方に何か頭の様なものが見えた。何だろうと思い少し後退りしてその全体像を視野に収めた。
「こ、これは――」
壁かと思った部分の両側には腕の様なもの、そしてその下には足の様なものが生えていた。待て、待て待て……どっかで見たことあるぞ、これ。
「ジャジャーン! 土巨人でーす!」
ルカが両腕を広げて、マッドサイエンティストよろしく悪い顔でお披露目してくれた。
やっぱり……どうりで見たことある気がするわけだ。ちなみにこのゴーレムというモンスター、ゲームでは序盤から中盤にかけて出てくるちょっと強めのモンスターである。
「……俺にこいつを倒せってか」
「そのとーり! ショウへの最終試験はこのゴーレムを倒すことでーす!」
試験としてはありがちなパターンだと思うが、実力を確かめるにはやはり持ってこいだと思う。
「しゃーない。やりましょう」
最後の最後、逃げ道などない。いや、逃げる気など毛頭ない。俺は杖を構える。
「フフン――行けッゴーレム!」
ルカの声に反応したのかゴーレムの目が怪しく光った。