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島の夜④

 

 反撃の第一段階。それは仮説を実証することだ。ということで一つ目の仮説、ゴブリンの視力は低い説の実証を始める。だがその前に何故この仮説を思い立ったか説明しよう。まぁ説明と言うほど大それたものではないが。

 俺がこの仮説を思い立った理由はゴブリンが俺を殴り飛ばした後追撃を仕掛けてこなかったことによる。そもそも吹き飛ばされたと言ってもアニメの様に遠く空の彼方へ消えたわけではない。言っても十から二十メートル――以外と飛んだのかもしれないが――ぐらいである。

 普通これぐらいの距離であれば攻撃した相手を見失うことなく追撃出来るはずだ。にも拘らず追撃は愚か何かを探す素振りを見せていたのだから、結論として視力が弱いのだろうと考えた。

 では実証だが、これはルカに手伝ってもらう。ルカならたとえ見つかったとしても空に逃げられるので俺が近寄るより遥かに安全だからだ。

「ルカ、頼むぞ。危なかったら直ぐに逃げろ」

「了解」

 言ってルカは力強く頷いた。そして体に力を込めたと思うと一瞬にして遥か上空まで昇っていた。やはり只者ではないのかもしれない。

 ルカはそのままゴブリンの真正面に向かって飛び、目測で二十メートル程の地点で降下した。ゴブリンはというといまだ気付く気配が無い。

 俺はルカにゆっくり近付くよう合図を送った。ルカは無言で頷きゴブリンに近づいていく。

 十五……十四……十三……そして十メートルを切り、おそらく俺が初めてあのゴブリンと遭遇した時の距離、約七メートル――ぐらいだったと思うが――にまで近付いた時、突然ゴブリンがルカに向かって走りだした。そのスピードは俺を襲った時と変わらぬ速さで一瞬ヒヤリとしたが彼女自身いつでも逃げれる様に準備していたのだろう。ゴブリンが攻撃する直前に上空へ回避していた。するとゴブリンはルカを見失ってしまったようでその場をうろうろし始めた。

 任務を終えたルカは急いで戻ってくる。戻ってきた彼女は少し興奮気味だった。

「ヤバかった~! 見てた? 見てた? シュッて来たよね! 怖かったー」

「見てた見てた、でも少し落ち着いてくれ。まだ検証中なんだ」

 するとルカは「わかった」と深呼吸をして静かになってくれた。

 これで第一の仮説の検証は終わった。結果は仮説の通り、目はそれほど良くなかったようだ。では、引き続き第二の仮説に入ろう。ただその前にこの仮説を思い立った理由の説明をさせて頂く。

 その理由とは、簡単に言えば魔法の詠唱中は攻撃されず、ルカとの会話も気付かれなかったからである。本当に単純な理由だ。

 さていよいよ実証に移るが、その前に仮説の名前に若干の訂正を加える。視力でなく聴力が低い説、改め実は目も耳も悪い説に変更だ。

 ん? 今一瞬縁側でお茶を啜るおじいちゃんの小さな背中が見えたような……気のせいだろう。というか第二の説に訂正を加えたらほぼ第三の説に近付いてしまった気がする。だからといって何か問題があるわけではないので話を進めよう。

 今回はルカに頼らず自分で実証する。やり方は至ってシンプル。ゴブリンの近くに物を投げ、その反応を見るだけだ。

 俺は手近に落ちていた小石を拾いゴブリンに直撃しないよう注意しながら投石する。石は弧を描きゴブリンが立っている近くに落ちた。その際岩場にぶつかったのか、カトゥーンという小気味好い音が辺りに響き渡った。

 音は俺のところまで届いた。ということはゴブリンにも聞こえたはずである。しかし――。

「全く反応しないね」

「あぁ」 

 どうやら第二の仮説も正しかったようである。結論――夜仕様のゴブリンは目も耳も悪かった。 


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