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島の夜

 

 ルカの野宿宣言に俺はテンションを落としていた。そう、何を隠そう俺は生粋の都会ッ子であり現代ッ子なのである。事実、野宿はもちろんキャンプなどしたことがない。これを聞いて「野宿もできん軟弱者が!」と思われるかもしれないがこれから成長していくことを前提に受け入れて頂きたい。

 しかし俺とて二五にもなる大人である。そんなことでいつまでもウジウジしている程落ちぶれてはいない。ということで俺は早々に腹を括ることにしたのだった。

 さて、今辺りはどうなっているかというと太陽が完全に沈みいよいよ暗闇が島を包み始めていた。こうなってしまうと前に進むことは非常に困難になってしまう。俺達は結局月が見える開けた場所を寝床にすることにした。

「疲れた~」

 今日の疲れを背伸びと共に吐き出す。と、そこであることに気付いた。

「あのさ、野宿は良いとして飯とかはどうなってんの? その辺何も考えないで来ちゃったんだけど……」

 今日一日を振り替えると朝飯しか食ってなかったことを思い出した。色々あったので腹が空いたことなどすっかり忘れていたのだ。

「そこは基本プランに入ってるからご安心を」

「良かった~、これで飯まで自分でどうにかしろって言われたら俺泣いてたかもしんない」

 その瞬間ルカがニヤリと笑った。何を考えているかわかるので敢えてここはスルーする。

「俺焚き火用の枯木拾ってくわ」

「あいよ。じゃこっちはその間に夕飯の仕度をしておくよ」

 まるで夫婦の様な会話を交わしつつ薪集めに出発した。薪自体探すのに苦労しなかったが集めている最中火を着ける道具が無いことに気付いた。が、自分が火の魔法を使えることを思い出し思わずにやけてしまったことはルカに内緒である。

 必要と思われる量の薪を集め終わるとルカの元へと戻った。寝床に近付くにつれチーズの香ばしい香りが漂ってくる。俺の胃袋はカロリーを感じ取りにわかにざわめき立った。

「ただいま~。こんなもんでいいかな? ってかチョー良い匂いじゃん。マジ腹へったわ」

「へへ、でしょう。私特製のチーズピザでーす」

 美味そうだ。空腹は最大の調味料なんて言うがこれはそんなものが無くてもきっと美味いと思う。俺は腰を下ろすと焚き火などすっかり忘れて無我夢中でピザにかぶりついた。明かりは月の光のみだが気にしない。ピザを両手に持ちごくりと喉を鳴らす。これこそ舌でなく喉で感じる美味さ――そして全て食べ終わると身も心も満たされたのだった。

「ごっそさん」

「お粗末様でした」

 食後の挨拶を終えるとようやく薪に火を着けた。ボウッと柔らかい火が灯る。すると辺りがぼんやりと見えてきた。先程も言ったようにここは開けた場所――言っても猫の額程の広さしかないが――で、俺達を中心に腰を下ろすには丁度良い大きさの岩が散在している。そしてこれから俺達が進むべき方角には茂みがあった。

「はいこれ」

 言ってルカがコーヒーを淹れてくれた。これもまた美味い。もしかしたら彼女は意外と料理上手なのかもしれない。

「なぁ、今夜ここで寝るわけだけど……寝てる最中にモンスターに襲われないかな」

「大丈夫だよ。寝る時はこの水を周りにまくの」

 ルカが懐から透明な瓶を取り出し、俺に手渡した。

「それまくとモンスターは内側には入ってこれないんだ」

 ルカのサイズで瓶と呼ぶ大きさなので俺にしてみれば目薬ぐらいの大きさしかないが――なるほど、便利なものである。

 そして俺が物珍しそうにしげしげと瓶を眺めていた時だった。茂みの方からがさがさと何かが動く音が聞こえてきたのである。何だろうと見てみると茂みの中から一匹のゴブリンが姿を現した。しかし背格好こそ昼間のそれと変わらないが、肌は黒く瞳は怪しげな赤色だった。

 もしかしたらこいつがゴブリンの夜仕様なのかもしれない。

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