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続・先輩と後輩と

 

 ひとしきり思いの丈を文面に起こした俺は携帯の画面に付きっきりだった顔を空に起こした。しばらく下を向いていたせいで首はガチガチになっていた。

「……テテテテ」

 おっさん臭い台詞が溢れる。戦う前からいかんだろ、俺。

 見上げた空はすっかりどっぷり夜の闇に染まっており、その暗い海に浮かぶ月は優しく静かに光を湛えていた。どうやら長いこと携帯に夢中になっていたようだ。しかし良いカンジで時間を潰せたしリラックスも出来た。

 時計に視線を落とし時刻を確認する。フム、そろそろ奴も姿を現す頃だろうか。俺はゆっくりと立ち上がり一人寂しくストレッチを始めた。

「フン、フン、フン――」

 山脈と月をバックにストレッチをする一人の男。何とも言えずシュールである。

 ただやはりツッコミは欲しい。一人だとどうしても投げっぱなしジャーマンになってしまう。守備範囲の広い拾える相方がいれば――そう、例えばアシュレイの様な。これも無い物ねだりの内に入るのだろうか。甚だ疑問である。

「ふぃ~」

 ストレッチが終わり心地好い汗以上の汗をかいて若干後悔した所で携帯から軽やかなメロディーが聞こえてきた。メロディーからして電話である。こんな時間に電話とは一体誰だろうか。ルカは基本的に仕事中は連絡してこないし――そう思いつつ携帯を開く。そしてナンバーがディスプレイされて僅かながら目を見張った。

「……塾長?」

 塾長とは珍しい。一先ず通話ボタンをプッシュなう。

「もしもし?」

――あ、もしもーし。久しぶりぃ。元気にしてたかい?

「あ、はい。ぼちぼちです」

――ハハハ、重畳重畳。にしてもあれだねぇ、そっちの生活にも随分慣れたろう。

「……えぇまぁ」

 果たして何の用事があっての電話なのだろうか。しばらく他愛ない世間話が続く。

――ところで、だ。

 と、いきなり塾長は本題に入ろうと話題を変えてきた。俺も慌ててそれに付いていく。

――あの~、島の件――覚えてるかい?

「えっと、一時閉鎖した?」

――そうそう。随分と時間掛かって悪かったが、やっとあの原因がわかったんでね。

 なるほど、それが本題であったか。それにしても本題に入るのに随分と回り道をした気がするが。

「そうなんですか?」

――あぁ。ざっくり言うとそっちの世界で異変が起こっているみたいなんだ。

「え?」

――ふむ、もうちょい詳しく言うと世界的に魔王の数が増えているみたいなんだ。そのせいで世界的に――何て言うか、マイナス? みたいな。そうだな……俗に言う負のエネルギーみたいなものが増えてるんだよね。

 なるほど。うん、なるほど――しか出てこないのですが……塾長。

――でまぁそのせいかもしれないが、結果として負のエネルギーが俺の結界を侵食してたらしいんだよね。結界は強化しといたから島はもう安全だけど――気を付けた方がいいよ弐鷹クン。悪い予感がする。それにキミは時折周りが見えなくなるからね。

「……はい。ありがとうございます」

――それと、魔王の増加についてはまだ調査段階だからはっきりとしたことは言えないが――魔王にも完全不完全があるらしい。俺としては急激に増加した分は皆その不完全な奴だと踏でいるけどね。でも、不完全とは言え魔王に変わりはない。出会したら十分気を付けてくれ。

「わかりました」

――うん、そいじゃまたなんかあったら連絡するよ。んじゃね。

 言って塾長は電話を切る。同時にブツリという音が聞こえてきた。それにしても――。

「不完全な魔王――ね」

 何が足らなくて不完全なのか、何をもってして完全と称せるのか――要点を見事に省いてくれた塾長の説明に「ったく」と、不満が言葉に変換されそれをポツリと呟いた時だった――。

 突然今まで感じなかった殺気を感じた。俺はハッとして空を見上げる。すると月の中に一つのシルエットが浮かび上がっていた。黒く、大きな翼を広げたシルエットが……。

 シルエットは翼を羽ばたかせるとゆっくり地上に、俺の目の前に降りてきた。

「――待っていたぞ」



 

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