終・代表選考会
その後は色々と紆余曲折があったものの早いもので気が付けば――。
「いよいよ決勝だな」
俺は武舞台へ出る門を前に、遂にこの時が来たか――と全身に気合いが充ちてくるのを感じた。
「……先輩」
「どうした?」
「随分と省略し過ぎじゃないですか?」
「……ハ、ハハハ。いきなり何を言い出すんだアシュレイ」
「まぁ百歩譲って各ブロック戦をカットしたことについてはいいでしょう。しかしッ!」
「な、何だよ」
「僕が一人で戦った試合まで割愛とはどういうことですかッ!!」
「……え?」
「え? じゃないですよ! 納得行きませんッ! ちゃんと説明して下さいよ! 僕がどれだけ活躍したのか、どれだけ頑張っ――」
割愛。
さてさて話を戻すがいよいよ決勝。泣いても笑っても最後の最後である。大会を通じて何度もこの門の前に立ったが今までとは比べ物にならないくらい緊張している。
アシュレイはまだ立ち直れていないようだが試合が始まればちゃんと試合に集中してくれるだろう。
『さぁさぁ――来たぜ決勝! 決まるぜ代表! 俺達の未来はお前等に託された!』
決勝を彩るアナウンスが聞こえてきた。鼓動が一段と速くなる。
『先ず紹介するのはこのタッグ! 今大会一番のダークホースだぁッ! 初戦に続き二戦目も見事なパフォーマンスを見せてくれた! その実力は間違いなく本物ッ! 今や誰も疑う余地は無ーいッ! 史上最強の新人! ショウ=ニタカッ、アシュレイ=メルクリウスゥーーーッ!!』
この誇大表現にも慣れた。寧ろかっこよく紹介されて嬉しいぐらいである。アナウンスが終わると同時に門が開き始めた。初めて立った時とはまた別の新鮮さがある。
「うし、行きますか」
「ハァ……了解」
俺達は互いの拳を軽くぶつけると花道を歩き出した。
会場の熱気は決勝を前に最高潮に達している。これが単なる予選の決勝だと思うと本戦――所謂志士の集いが開催されたらどうなってしまうのだろうか。
などと考えている内に武舞台へ辿り着いた。後は対戦者を――デュランとミネルバを待つのみである。
『続いて紹介するのはこの二人ぃ……初戦から他を圧倒するは鬼神の如くッ、他を蹂躙するは悪鬼の如しッ! 今大会大本命の最高にして最凶のタッグゥ……デュラァァァーン=ファグァーーールゥッ、ミネルバァァア=フランッシーーーーーズゥゥゥゥアッ!!』
二人を紹介するアナウンスが終わり向かい正面の門が開く、その瞬間――。
例えるなら爆発音――体の芯を揺さぶらんばかりの大歓声が会場から溢れ出し、俺達の対戦相手であるデュランとミネルバを出迎えた。
やはり人気で言えば実力の差以上にその差があるのだろう。
デュランとミネルバは悠々と、応援する者に笑顔を振り撒きながら此方に向かって歩いてくる。今から相手取る敵であるにも拘わらず、相変わらずかっこよく見えた。
二人は武舞台に上がると俺達の目の前まで歩み寄り、ふてぶてしいまでの不敵な笑みを浮かべる。見下ろしてくるデュランに対し、見上げる形で睨み返した。
「お互い全力でやろうや」
「――当たり前です」
「楽しませておくれよ? 新・人」
「――ご期待に添えるよう頑張ります」
アシュレイの様子は窺えないが既に熱い火花が散っているらしい。
『既に武舞台では舌戦が繰り広げられているようだが、決勝戦を始める前にここでプリシラさんから一言頂きましょう!』
『お前達、これが最後の最後だ。出し惜しみなんてするんじゃないよッ! 全力でやんな!』
『ってなわけでいよいよ始めるぞ! 一応言っておくが決勝戦に限り武舞台は強力な結界で覆われている! だから思う存分戦ってくれ! んじゃ行くぞッ! 泣いても笑ってもこれが最後ッ! 運命の決勝戦、レディーーーッ!』
会場全体がアナウンスと声を揃える。俺達は互いのセットポジションで臨戦態勢に入った。
『ゴォーーーーーーーッ!!』