島巡り④
突然の申し出。とうとう俺にも魔法デビューの機会が訪れてきた。 俺としたことが昂る気持ちを抑えるので精一杯である。
「マジで?」
「うん。ある程度戦闘はこなしたし、ってか賢者見習いのクセにいつまでも肉弾戦てのも大変でしょ?」
ヤバい! テンション上がる!
「んで今んトコ使えそうなのがこれかな」
ルカは何処からともなく一枚の紙切れを取り出した。そこには塾長に見せてもらった様な魔方陣が三つ書いてあった。
「おお! これが!」
「まぁそう慌てなさんな……魔法は使い方次第でおっきな事故に繋がりかねないんだから、しっかり話を聞くこと」
「あぁ、はい」
いつになく真面目に話すルカに少し気圧されてしまった。
「いい? まず魔法ってのは体の中にある魔力を源にすることで使えるようになるの。でも使い過ぎると魔力が枯渇してしばらく使えなくなってしまう。魔法をメインに戦う者としては避けたい状況ね」
ふむ。ゲームの話と似ているな。
「でももし魔力が空になってしまった場合は大人しく休憩すること。ま、寝るのが一番なんだけどね。ちなみに何で回復するのかって言うと大気中に魔力の源になる成分が含まれていて、呼吸を通じて体内に入ってくるからなんだけど……まぁそれはいいとしてもう一つ、魔力が無い時に無理して魔法を使うと命に関わるから気を付けてね」
まるで取って付けた様な設定だがなかなかわかりやすくて良いと思う。
「んでその魔法だけど、基本的には呪文を詠唱しながら魔方陣を描いてそこに魔力を込めることで発動するわ。ま、いずれショウも立派な賢者になるだろうから先に言っておくけど、魔方陣を理解することが出来れば自分で魔方陣をアレンジ出来るようになるの。つまりオリジナルの魔法を使えるようになるわけ」
なんと! そんなことまで出来るようになるのか!
「さぁ、いよいよ本題よ! これを見て」
言ってルカは先程の紙を改めて俺に見せた。
「これは何の魔法なの?」
「ふふん、読めるんだったら読んでみて」
「ええ?」
さて俺に魔方陣が読めるのか。一度塾長に見せてもらった魔方陣は読めたのでイケそうな気がするが。
「頑張って」
女性に応援されるなんていつぶりだろう。とりあえず一番上の魔方陣から読んでみる。
「えっと……岩を砕き、えぇ、地を駆ける。で、昂る炎我が、敵を弾け……と。炎弾?」
「すごいすごい! やっぱ読めるんじゃん!」
「あ、あぁ。ありがとう」
ここまでストレートに言われると恥ずかしいものだ。
「んじゃいよいよ使ってみよう」
俺はルカに促され立ち上がると杖を構えた。特に言われたわけではないが、なんとなくイメージである。
まずは呪文を詠唱しながら魔方陣を書く、だっけ。
「岩を砕き地を駆ける……」
と、そこでふと思った。魔方陣ってどうやって書くのか、と。それに感付いたのかルカが見本を見せると言い出した。
「岩を砕き地を駆ける、昂る炎我が敵を弾け……」
おぉ、っぽい! 詠唱を始めるとルカの指先が淡い光で包まれ、指を動かすとそれに合わせて光の軌跡が描かれる。それは最後には魔方陣を形作り、出来上がったそれにルカが手を当てた。おそらく魔力を込めているのだろう。そして――。
「フレイムバウンド!」
魔法の名前を高らかに言うとその魔方陣から真っ赤に燃えた火の弾が飛び出したのだった。
「おぉ! やんややんや!」
ルカは若干得意気に落ち着けと手でアピールする。
「ま、こんな感じかな」
「なるほどねぇ……これはスゲーは」
「そんなことないって。ショウも出来るから」
「マジか。んじゃ最後にもう一つ聞きたいんだけど」
「ん?」
「指先どうやって光るの?」
「あ~あ……そこから」
何だかすみません。