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続・代表選考会②

 

 突然の出来事に会場は静まり返る。皆何が起こったのか理解出来ずにいた。

 もちろんそれは俺も同じで、デュランが何をどうしたのか皆目見当が付かない。しかし冷静になって考えれば練破動による肉体強化――からの目にも止まらぬ早業であることは予想出来た。

 そんな中、宙を舞ったジャイロはというとその勢いを保ったまま場外へと落下――そのまま立ち上がることはなかった。

「じょ、場外……」

 審判が唖然としながらジャイロに敗北を宣告する。武舞台に残ったエレナはただジャイロを見つめていた。

 もう勝負は着いていた。一人となったエレナは懸命に手に持つ杖をデュラン向けて構えるが、ジャイロの衝撃的なシーンを目の当たりにしたせいで震えが止まらなかった。

 その姿にデュランも一応反応は見せるが敵対心は既に無く、ゆっくりエレナに歩み寄ると口を開いた。

「――まだやんのか?」

 圧倒的なプレッシャー。エレナは目を潤ませながら、結局自ら敗北を宣言した。デュランはそれに頷くと踵を返し審判を一瞥した。

「しょ、勝者ッ! デュラン=ファガール・ミネルバ=フランシーズッ!」

 審判の勝者宣言に会場が再び湧き上がった。

 この試合を通してデュラン達は他の出場者に強烈なインパクトを与える結果となった。正に圧勝――他を圧倒するその立ち振舞いは下剋上なんて何のその、出る杭は自ら打ちに行く、強い奴……出てこいやッ! と言わんばかりだった。

 武舞台を降りるデュランとそれを出迎えるミネルバ。二人は並ぶと一瞬だけ此方を向く。そしていつもの様に不敵に笑った。

「まだまだ余裕みたいですね」

 アシュレイもじっと二人を見つめている。

「ハハ、そうでなくっちゃ困るだろ」

「……ですね」

 言って意趣返しに俺達もニヤリと笑って見せた。


 その後も第一ブロックの試合は恙無く進行していき、結果このブロックを勝ち抜いたのはやはりデュランとミネルバだった。

 俺達は祝勝と敵情視察を兼ねて二人の元へ赴いた。

「余裕じゃないですか。二人共流石ですね」

「ナハハハ、あたぼーよ」

「それにしても初戦はびっくりさせられましたよデュランさん。あれ――何したんですか?」

「……知りたいか?」

 俺の探る様な質問にデュランは嬉しそうに俺を見て笑う。

「えぇまぁ……教えてくれるなら、ですけど」

「どうすっかな~」

 言ってデュランはわざとらしく顎を指でなぞった。そしてややあって続ける。

「じゃあ交換条件だ」

「条件?」

「お前も俺と同じように初戦は一人でやれ。勝てたら教えてやるよ」

「ちょ、何言ってんですか!?」

「何って――条件だろ」

「そんなことはわかってますよ! じゃなくてそ、そんなのム――」

 無理と言いかけた所でいきなりアシュレイが俺の口を押さえた。そしてそのまま代わる様にして口を開いた。

「わかりました。その条件を飲みましょう。その代わり勝てたらちゃんと教えて下さいよ」

 え? 何言ってんのアシュレイ?

「……フハ……ハハハハハハッ! 面白れぇじゃねぇか新人。安心しな、男に二言はねぇよ」

 安心できねーよ!

「ですって」

 ですって、じゃねーよ! 勝手に話進めんなよ! ってか意外と力つえーな! 喋るってか息できねーよ!

「ムガガガ――」

「――先輩も了解してくれたみたいです」

 してねーよ!

「へへ、初戦楽しみにしてるぜ。またな」

 言って踵を返すデュラン。待ってデュランさーん! という言葉に出来ない俺の気持ちは彼に届かなかった。


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