続・代表選考会
代表選考会は第一ブロックの第一試合を皮切りに続々と試合が執り行われていった。
参加する者は皆全力でぶつかり合い、熱い火花を散らして散っていく。それはまるで夏の夜空を彩る花火の如し、であった。
『おっとーッ! ここでテスター選手の痛烈な一撃が決まったーッ!』
あ、そう言えば本大会はプリシラを解説席に招き試合の実況が行われている。実況はまぁ良しとしてプリシラの解説の適当さには些か驚かされるが、そこについてはいずれ紹介すると思うのでここでは割愛させて頂きたい。
さて、そうこうしているうちに第一ブロックではあの人達の出番がとうとうやってきた。
それはもちろん――。
『さぁ続いての試合は皆さんお待ちかねッ! 我らがギルドの兄貴と姉貴ッ! 昨年敵同士だった二人がとうとうタッグを組んだッ! 剛腕と女帝の最強コラボッ! 今回最注目にして要注意タッグの登場だぁッ! デュラン=ファガールッ、ミネルバ=フランシーズーッ!』
二人を紹介するアナウンスに会場の盛り上がりは最高潮に達した。斯く言う俺も自分の出番はまだだというのに血沸き肉踊る感じだった。
武舞台に上がるデュランとミネルバは威風堂々と、泰然自若としていた。その出で立ちからは言い様の無い強さを感じる。どうやら立ち向かうべき壁はなかなかに高そうだった。
すると武舞台に立った二人と目が合った。二人は挑発的な顔で此方を見る。しかしそんな顔されたというのに俺の心を埋める感情は――かっこいい、だった。
『さぁこのタッグに挑む恐いもの知らずはこの二人ぃッ! 我らが新星ッ! ジャイロ=フリース・エレナ=サイフォンだぁーッ! 初戦は先輩相手に見事快勝、成長を続けるその強さは今や本物か!? 第一ブロック屈指の好カードッ!』
ジャイロとエレナ――俺がこのギルドに入って以来若手の筆頭として走り続けている二人だ。そんな二人がデュランとミネルバに挑む。アナウンスに熱が籠るのも致し方ない。
『瞬き厳禁ぞ皆の衆ッ! ただ呼吸だけは忘れるな!? 第一ブロック第十一試合、レディーッ――』
会場全体が固唾を飲む。先程までの盛り上がりが嘘の様に静まり返っていた。
『ゴォォオーーーーーッ!!』
実況の合図と共に試合が始まる。と同時に緊張からとか放たれた観戦者から歓声が湧き上がった。俺も思わず体が前に乗り出してしまった。
が――突然会場がざわめいた。
大会ルールの一つとして『戦闘中武舞台から落ちた場合は場外負けとなる』というものがある。にも拘らずミネルバが突然武舞台を降りたのだ。
『お、おぉっとぉぉお!? ミネルバ一体何をしているんだぁ!?』
実況も困惑。観戦している此方も困惑。審判は困惑しながらもルールに従ってミネルバに場外負けを宣告した。
結局武舞台にはデュランが一人残る形となり、ジャイロ達と相対することとなった。これには流石の若手筆頭も困惑した様子で体が動かないようである。
すると久しぶりに解説のプリシラがその二人に向かって口を開いた。
『何やってんだいお前らッ! 相手は自分一人で十分だって言ってんだよ! 舐められたまま終わんのかい!?』
プリシラの解説にデュランとミネルバが不敵に笑う。そしてデュランはジャイロとエレナに向かって手招きした。完全に挑発している。
「ふ……ふざけるなぁぁぁぁぁあッ!」
怒号を上げたのはジャイロだった。ジャイロは顔を真っ赤に怒りを顕にする。そしてそのままデュランに向かって突進していった。
「へへ……悪いな」
言ってデュランの瞳がギラリと光る。刹那――ジャイロの体が弾き飛ばされる様に宙を舞った。