代表選考会
アシュレイがメンバーに加わって一週間が過ぎようとしていた。
一週間も経つと彼も仕事に慣れた様で、一人で仕事を受けることも多くなっていた。それでも一応世話焼き係としての任務――と言っても殆ど無いが――は俺なりにこなしていた。
そんなある日――。
「先輩、ユンズ商店街のバリーさんなんですけど――」
「あ……また?」
「ハハ、すいません」
「わかった。俺から言っとくよ」
アシュレイとお得意様の話をしている時だった。
「ハイハイちゅーもーくッ――ちょっとみんな聞いとくれッ!!」
突然プリシラの声がギルド内に響き渡った。
ギルドにたむろしていたメンバーは何事かとプリシラに視線を送る。それを確認するとプリシラは話を続けた。
「みんな知っての通り来月末いよいよ志士の集いが開催される! 前回は準優勝だったが、この戦いは優勝してこそ意味がある! 今回は絶対獲りに行くよ!」
プリシラの熱弁にギルド内が沸き上がった。しかし俺は正直前回を知らない――というより志士の集い自体初経験なので若干乗り遅れた感があった。
「で、今回の大会形式はタッグ戦って決まった! だから代表選考会もタッグ戦にて行う! 選考会は来週! みんな気合い入れて挑みなッ!!」
と、ここで再び喚声が上がった。皆それだけ思い入れが有るということなのだろう。
「先輩、あの……でば、でばる――」
「デバルウィな。うん、簡単に説明すると――」
「つまりだな」
「ってデュランさん! いきなりびっくりするじゃないですか!」
「ハッハッハ、ンなんでビビるお前が悪いんだよ。へへ、よう新人。詳しい話は俺からしてやるよ」
言ってデュランは無理矢理アシュレイの肩に手を回すとそれについて話し始めた。ただ彼の説明がどこまで詳しいのか、一度彼から説明を受けた者としては怪しいものだった。
一通り説明し終わり満足したのか、デュランはアシュレイの肩を叩き俺に向き直った。
「話終わりました?」
「おうよ」
「で、何の用です? デュランさんがわざわざ新人に講義しに来たわけじゃないでしょ?」
「なんだよ、相変わらず疑り深いヤツだなぁ」
「じゃあその悪そうな笑い顔は何ですか?」
「ハッハッハ、やっぱ嘘はつけねぇな」
言ってデュランは一つ咳払いをする。すると口許は笑みを絶やしていなかったがいつものお茶らけた目付きが一変――獲物に狙いを定める様な鋭いそれになった。
思えば何度か仕事を共にした時に見たことがある。本気も本気、ヤル気満々の時にしか見せない瞳だ。
「宣戦布告に来たぜ……ショウ」
そっちで来るか。もしかしたらタッグのお誘いかとも思ったのだが。
「――俺に……ですか?」
「まぁ、最初はお前と組もうと考えたんだが、やっぱそれじゃ面白くねぇだろ」
「デュランさんが」
「おう」
デュランは満面の笑みを浮かべ頷く。ま、ここで受け流そうとしたところでこの人には無駄だろうし、何より男としてここで逃げるとは末代までの恥だろう。
「わかりました。受けて立ちますよ」
「ガハハハ、そう来なくっちゃなッ!」
「で~デュランさんは誰と組むんですか?」
「俺か? 俺はミネルバだ」
「……え?」
俺は自分の耳を疑った。今ミネルバという名前が聞こえた気がするが――。