新メンバー②
とりあえず俺はプリシラの隣に腰掛けた。結果彼女が紹介したいと言う人物と向かい合わせになる。
ところでその人物の格好はというと……いかにも旅人が着ていそうな服装で革製のマントを羽織っていた。ゲームに出てくる様な旅人をそのまま実写化しちゃいました――そんな印象を受ける。
季節柄かその格好を見ていると暑苦しく感じるが、当の本人は至って普通の様だった。こちとらスーパークールビズ絶賛実施中だと言うのに。
美しいエメラルドグリーンの色をした髪は腰辺りまで伸びており、しかも顔は中性的。こう条件が揃うと一見女性の様に思えるが、先程立った時の身長――俺より少し高かった――を考えると男性かもしれない。
一方で肌は病的なまでに白かった。しかし耳が尖っている、瞳の色、等々からプリシラと同じエルフ族であることは推察出来、そこから考えれば納得の白さだ。
「――フゥー。さて、と」
プリシラは一本吸い切らない内に煙草を灰皿に揉み消した。そして俺を一瞥すると続ける。
「――紹介したい奴ってのは何を隠そうこいつなんだ」
「いや、流石にそれはわかります」
「お、そっか」
「いやいや、そっかじゃなくて」
「ハハハ、悪い悪い。あの~、あれだ。こいつ今日からウチのメンバーになったんだ。名前はアシュレイ。メンバーとしてはショウの次に入ってきたことになる。つまりは――後輩だね」
「え?」
思わずプリシラの顔を見てしまった。するとプリシラも俺の顔を見て付け足す。
「だから、アンタの後輩だって言ってんの。ウチのギルドじゃ新メンバーのお世話は直近の先輩がやることになってるからさ。今日はその顔合わせってカンジ?」
「あ~ぁ。なるほど」
俺は大きく頷きながら後輩のアシュレイ君をチラ見した。するとアシュレイ君も此方を見ており、視線が合ってしまったためお互い照れながら会釈する。一先ず「初恋かッ!」と自分でツッこんでおくとしよう。
「ってことで後は頼んだ」
「あ、はい――はい!?」
と、古典的な二度見。
「んじゃアタシは仕事残ってるんで後はお若いお二人で」
言ってプリシラは立ち上がり、腰をしならせると妖艶な笑みを残して部屋を出ていった。
「あッ、ちょ!」
いきなり二人きりってどういうことだ。まだ名前しかしらないってのに。くそぅ……アイツ完全に楽しんでやがった。
しかし消えた相手に毒ずくよりも先ずは目の前の事に集中しなければ。俺は視線を部屋の扉からアシュレイに戻す。
彼女の話ではアシュレイは一応俺の後輩らしい。とすれば話を切り出すのはやはり俺――なのだろうか。いや、なのだろう。
「あの」「あの」
かぶったーーッ! ガッツリかぶったーー! お約束ぅーー! やっちまったーいッ!
あまりのばつの悪さに顔面が熱くなっていくのがわかる。ここはとりあえず笑って誤魔化すしかない。
「ハハハハ、何かすいません」
「あ、いえ。こちらこそ」
とここで初めてアシュレイの声を聞いたわけだが……何とも綺麗な声だった。差し詰め澄み切った水流――と言ったところか。
「あの、最初に確認しておきたいんですけど……男性――」
「え? あ、はい。一応男です。でもこんな顔だからよく間違えられます。ハハ」
なるほど。所謂イケメンって奴か。しかしその屈託の無い笑顔からはそういう種族特有の嫌味は感じられず、逆に好感が持てるものだった。