私の王子様
私は落ちてはいけない恋に落ちてしまった。
私の名前は大橋 夢愛。私は産まれつき障がいを持
っていて歩けないため、車いすに乗っている。
私は高校2年生で学校に通うため、家から離れて医
療機関に入所している。家の近くに私に適している
学校がなかったからだ。
今、世界的に未知のウイルスが流行しているため、
面会・外泊が禁止されている。
そんな時期に入所してきた私は親にも会えず辛い
日々。覚悟はしていたけれど、想像以上で。辞めた
いと思ったこと、親を説得したことは何度もある。
でも私は、彼に会うとそんなことは忘れられた。入
所して1年が経った今は辞めたいとも思わなくなっ
た。
彼の名前は佐藤 雅也。看護師をしている。初めて
会ったのはある日の朝、起こしてくれた時だ。いつ
も看護師さん2人で起こしにきてくれるのだが、そ
の1人が雅也さんだった。
最初は寝ぼけていて、家が恋しい時期でもあったの
で雅也さんが父親に見えてしまった。思わず「パ
パ」と言ってしまいそうだったが、それをグッと抑
えた。
その日から私は雅也さんを好きになってしまった。
でも雅也さんは既婚者で子どもが2人いるらしい。
私との歳の差も26歳。私の恋は諦めた。
それから1年後のある日、
「ねえ、知ってる?佐藤さん、離婚したんだって」
「佐藤さんって?」
「雅也さんよ!」
「え!?」
と話す看護師さん2人の会話を私は聞いてしまっ
た。確かに最近の雅也さんは元気がない。心配はし
ていたけど、まさか離婚とは。
動揺が隠せない。何があったのだろう。
私は、絶対教えてくれない。そう覚悟して本人に聞
いてみた。
「雅也さん。何かあったんですか?」
「ううん、何もないよ」
「そうですか。それならいいんです。最近雅也さん
元気ないなって思ってただけなので」
「そう。ありがとう」
雅也さんが離れていく。私はこう叫んだ。
「私、聞いちゃったんです。雅也さんが離婚したっ
て」
「知っちゃったんだ」
「本当にたまたまなんです。廊下に出ようとしたら
聞こえてきちゃって」
「ううん。それなら仕方ないよ」
「本当にすみません」
「もうちょっとで仕事終わるから待ってて。夢愛さ
んにだけ話すから」
仕事が終わって、雅也さんは離婚した経緯を全部話
してくれた。
離婚した原因は奥さんの浮気。雅也さんの仕事時間
が毎日バラバラで家族との時間をあまりとれなかっ
たせいで奥さんが浮気したらしい。親権は奥さんら
しい。
話の最後、雅也さんはこう言った。
「僕、前から好きな人がいてね、その人には今回み
たいにならないように絶対幸せにするって決めてる
んだ。その人は僕のことをちゃんと理解してくれて
るから」
「夢愛、高校卒業したら俺と結婚しよう」
「え!?親にはどうするんですか?」
「俺から説明したよ。夢愛がいいなら、いいよって
言ってくれたよ」
「私もずっと雅也さんが好きでした。よろしくお願
いします」
高校卒業した私は雅也と結婚し、今はとても幸せ
だ。
私のファーストキスは雅也だ
絶対幸せにしてね。
もちろんだよ。愛してるよ。夢愛。
おわり




