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第83話 あなたは。

 神々。そして神々の加護を受けし大陸中の皆様。


 私は、メリシエル=サリオンドレルです。


 あなたの属性を問います。神々も、聞きなさい。


 光の者たち。あなた方は闇を憎む。逆もまた真。それはなぜですか?


 火の者たち。あなた方は水を憎む。逆もまた真。それはなぜですか?


 風の者たち。あなた方は土を憎む。逆もまた真。それはなぜですか?


 私を、メリシエル=サリオンドレルを見るのです。まっすぐに、見なさい。


 私には、加護がありません。ですから、属性がありません。あなたは、私のことが憎いですか? 神々も、どうですか? 私のことが、憎いですか?


 あなたは。


 神々も含め。初めから、憎むべき敵が決められている。その事実に、どうして驚かないのですか?


 神々よりもさらに上にある存在が、私たちを争わせている。神々でさえ、永遠の時間、憎むべき相手が決められているのです。


 では。私たちは、誰を、なぜ憎み、呪うべきなのでしょう。


 その答えはただ一つ。私たちは、自分の愛する者を害する存在を憎み、呪うべきです。


 私たちは、この一点において、合意できないでしょうか。


 世界よ、どうか、私の愛する人々を傷つけないでいただきたい。


 もしあなたが、これに合意してくれるのなら。私もまた、あなたの愛する人を尊重し、可能な限り守りましょう。


 神々も含め、お互いの愛する人を尊重する。ただ、それだけのことが、どうしてできないのでしょう。


 それは、加護が、何者かによって勝手に与えられているからです。お互いに対立する善悪が、何者かによって勝手に決められているからです。


 絶対神よ。あたなが、その元凶です。だから私は、あなたを憎み、呪います。


 私たちは、ただ、愛する人と一緒にいたいのです。


 絶対神よ。あなたのために、愛する人を戦場に送るなど、もってのほかです。あなたのために、他の誰かが私の愛する人を殺害するなど、ありえないことです。


 絶対神よ。あなたが最も恐れたのは、自ら、加護を捨てる神々が、加護をいらないという人々が現れることです。属性が、この世界から消えてなくなることです。


 その予感を恐怖したから、あなたは、絶対神の鉄槌を準備したのでしょう。しかし、それは無駄でした。


 神々よ。


 冥府神オリシスによる「この世界から争いをなくす」という提案に、乗りませんか? 加護を捨て、絶対神からの干渉を拒否するのです。


 それでも、愚かな私たちのことです。しばらくは、争いは無くならないでしょう。神々もまた、争うのでしょう。


 けれど。


 これからは、争いには正当な理由が求められるようになります。正当な理由とは、争いの相手からしても、共感できる理由であるということです。


 愛する者を殺された恨み。その恨みを晴らすための争いまで否定することはできないでしょう。


 しかし、相手が不浄だからという理由。相手がダークエルフであるという理由。相手が土だから、水だから、火だから、風だからという理由。


 それらは、争う理由としての正当性を持ち得ません。そんな理由にもならない理由で、愛する人を殺されるわけにはいかないからです。


 私は、ここにいる聖騎士のお父上を殺害しています。


 それでも、この聖騎士は、自ら望んで、私の護衛をしてくれているのです。そのせいで、人質とされていたお母上まで殺されています。


 私は、この聖騎士に殺されても仕方ないと思っています。私だって、愛する人を殺されたら、相手に復讐せずにはいられないのですから。


 ではなぜ、聖騎士は、私を殺そうとしないのでしょう。この聖騎士は、絶対神からの強力な加護を持っているにも関わらず、です。


 絶対神の命令に背いてでも、自らが正しいと考えることにのみ従う。それこそが、真の聖騎士だからです。

 

 神々よ。


 あなた方は、この聖騎士のありようを見て、なんとも思わないのですか? あなた方には、誇りはないのですか?


 あなたは。


 絶対神によって決められた敵を殺すための道具でありたいのですか?


 絶対神よ。


 私は、あなたの道具ではありません。私は、人間です。


 あなたは、どうですか?


 私は、メリシエル=サリオンドレルでありたい。



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