第81話 絶対神の鉄槌
空の全てが、金属光沢を放つ平面と化した。
「生きることこそ、罰である。この鉄槌は、赦しである」
不思議なことに、太陽光だけは透過させる。しかしそれは透明ではなく、平ら過ぎる金属である。
絶対神の鉄槌。
その金属は、空の全て。なので、見るものの遠近感を狂わせる。金属は、徐々に地上に向かっていたが、そうとわからない。
黒龍はそれに気付き、上空へと羽ばたいていく。
ある高度まで下がったとき。平らな金属の下面に、地上が反射して映り込んだ。やっと、誰にも、状況が理解できた。
自分たちは、あれに潰される。
黒龍は、超級階梯魔法までなら、キャンセルできる。おそらく、無駄だろうと思いつつ、黒龍は、金属の下面に体当たりし、そして弾かれた。
エルシアナに拡声魔法を付与されたメリシエルが叫ぶ。
「上空注意! 皆、少しでも、低いところへ逃げよ!」
黒龍も含め、軍は荒野で最も低い渓谷に向かって撤退を開始した。
アルメリア教国軍は、しかし、撤退せず、絶対神への祈りをやめない。祈れば、助かると思っている。
荒野から、かなり離れたところにある大陸最高峰の天山が、金属に触れ、破壊されていく。
これだけの距離があっても、ゴリッという恐ろしい音が、地響きと共に大陸中にこだました。
——ああ、死ぬのだ。
自分が死ぬと理解できた人々は、急に、不浄なる者に期待する。死してなお、愛する人のそばにいられるのではないかと。




