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第73話 エルシアナの出立

 パレードの事件後、各国は、状況の認識を改めた。もはや危険というレベルを超え、審判の剣を中心とした教会および民衆による革命前夜である。


 教会を締め上げつつ、自衛力を強化する必要がある。当然、軍事作戦になる。各国連携のため、大陸会議が招集された。


 同時期。


 サリオンドレル公国より、巡書連璽(じゅんしょれんじ)が届いた。



サリオンドレル家は、旧姓エルシアナ=ゼルドレル=サリオンドレルを除名した。新姓エルシアナ=ゼルドレルは、サリオンドレル公国の国民からも除籍された。新姓エルシアナ=ゼルドレルは、いかなる国にも所属しない。



 エルシアナが勝手に出した巡書連璽だった。サリオンドレル家に、この巡書連璽が13カ国の王印とともに戻ってきたとき、エルシアナは「慰安旅行」に出ていた。


 当然ながら、エルシアナは帰宅予定の日を過ぎても、サリオンドレル公国には戻ってこなかった。それだけの覚悟を持った行動だ。


——エルシアナは、単独で、審判の剣と戦おうとしている。その責任を、自分ひとりで負うことを願っている。


 誰もがそう考えた。だが、その認識は間違っていた。


 メリシエルは、エルシアナの捜索に、自分が行くべきだと主張した。


 いざ、エルシアナを見つけたとしても、説得し、場合によっては力づくでも連れ帰る。それだけの説得力と武力を同時に併せ持つ人材は、自分しかいないと。


 オルセリオンとナヴィアは、大陸会議で、各国と歩調を合わせた戦略の策定、実行に務める必要がある。軍隊の再整備を考えると、オルセリオンの指揮とナヴィアが複写しているネクロマンサーの能力は必須となる。


 残念ながら、メリシエルが主張する通り、メリシエル以外に、エルシアナの捜索に適したものはいない。そう結論づけられた。そうしてメリシエルが旅の準備をしているとき。


「お母さん。私も。エルシアナ叔母さまの捜索、いく」


 アレクサンドラは、キッパリと言った。メリシエルは、一瞬、それを諌めようとして、やめた。これはきっと、アレクサンドラの魂からの言葉だから。


「わかった。一緒に行こう、アレクサンドラ。きっと辛い旅になるよ」


「うん。わかってる。でも、行かないと」


「そうだね。アレクサンドラ。そうだよね」


 何度断っても、聖騎士エリオネス=ラフェイルが、この母子への同行を主張した。物理攻撃しか持たないメリシエルだけでは、魔法攻撃に耐えられない。絶対神の加護を持つ自分であれば、護衛に最適であると。


 聖騎士は、そうして公式な護衛に任命された。


 ワイバーンに乗るのも、久しぶりだ。アレクサンドラは、これが初めて乗る経験になった。メリシエルの前に、特別な子ども用の鞍を作ってもらって乗る。


 黒薔薇歴22年の夏。


 ワイバーンにまたがるメリシエル(36歳)とアレクサンドラ(8歳)は、別れの挨拶も兼ねて、黒薔薇城の上空を数度旋回した。


 別のワイバーンに乗る聖騎士は、低空から、二人に近づくものがいないか監視をしている。


 アレクサンドラは、ちょうど、メリシエルが王立魔術師団学院に入学した頃と同じ感じの少女に育っていた。

 

 旅を経験するのに、ちょうどいい。上空で気持ちの良い風を受けながら、メリシエルは、そんなことを思った。



最終章の始まりです。第73話でした。お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


エルシアナは、どこに行ったのでしょう? どうすれば、見つかるのでしょう? どこまで、エルシアナのことを理解しているかが問われます。


引き続き、よろしくお願い致します。

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