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第70話 第二次公国防衛戦争

 第一次公国防衛戦争の後。故国に帰還した聖騎士エリオネス=ラフェイルは、その足で修道女となり、審判の剣を脱退した。


 新聞記事は「犠牲者なし。休戦交渉成立へ」という論調一色で、戦争の実際は、報道されなかった。


 それから。聖騎士エリオネス=ラフェイルというカリスマを失った審判の剣は、嫌な膨張を始めた。


 自分たちで街角に立っては、「魔王軍を見た」「魔王は危険だ」と賛同者と寄付を募り、また拡大を始めたのだ。


 地方で疫病が発生し、不作で飢饉が起こったことも、各国の民衆の不安を煽った。「神がお怒りになっている」「魔王を討伐しなければ」と。


 そんな時、黒薔薇の街中で、突如、第二次公国防衛戦争が開始された。観光客を装い、黒薔薇の街に潜入していた22名の構成員が、テロを起こしたのだ。


 このテロは、ダークエルフを狙ったテロであった。


 100年前から忌み嫌われていたダークエルフであれば、民間人でも攻撃対象として良いだろうという判断があったようだ。


 テロは同時刻、3つの場所で起こった。


 現場の一つ、温泉宿に、エルシアナが居合わせた。エルシアナは、入浴中だった。一人の休暇を満喫していた。12歳程度の少女に見える、ダークエルフ。


 他の観光客と、仲良く世間話をしているところだった。


「あなた、ダメよ。子どもなのに、お酒なんて飲んじゃ」

「いやぁ、こう見えて、160歳くらいなんです」

「えー、おばあちゃんなのに、お肌スベスベじゃない! いいなぁ」

「でへへ。ダークエルフの特権ですわ」

「あれ? ダークエルフの成人って、確か300歳じゃなかった?」

「え、なんでそんなこと知ってんすか?」

「私、ダークエルフの移民政策あったとき、事務やってたのよ」

「な、内緒にしてくださいね!」

「どうしよっかなー」


 審判の剣、テロ構成員たちは、テロ行為直前に、加護キャンセラーを発動させた。もちろんエルシアナは、それに気づく。


「皆様、戦争かもしれない。警戒して……隠れて!」


 エルシアナがそう言うが早いか、7人のテロ構成員たちが、迷わず女風呂に飛び込んできた。そして目視でダークエルフのエルシアナを確認し、全員がエルシアナに向かっていく。


 3人の温泉宿の従業員が、エルシアナを守ろうとして、間に割って入った。時間を作ってもらったエルシアナは、闇魔法を詠唱し、瞬時に5名までを蒸発させた。


 テロ構成員、残る2名は、拘束の魔法で捉えた。


 しかし、エルシアナを守ろうとした3人の従業員は、テロ構成員との揉み合いの最中に刺され、その場で息絶えていた。この温泉宿のオープンからいた、エルシアナにも馴染みの従業員たちだった。


 エルシアナは、拘束した2名から、他の場所でもテロが発生していることを聞かされた。そして「ダークエルフは、全滅すべきだ」とも。


 エルシアナは、長い詠唱を開始した。詠唱が終わると、拘束されていた審判の剣の2名は汚泥となり、他のテロ構成員のメンバーに向かってモソモソと動き始めた。


 テロ構成員、他15名は、街中で民間人を26名も殺害した。うち6名は観光客だった。負傷者は、もっと多くなる。


 結局、残る15名のテロ構成員の一人が、汚泥によって殺された。汚泥に殺されたテロ構成員もまた、汚泥となる。そうしておよそ40分後、テロ組織は全滅した。


 審判の剣は、テロ組織である。


 それにも関わらず、大陸中の新聞は、事実の一部を切り取って報道した。


 ダークエルフの少女が恐ろしい魔法を展開し、神聖なる審判の剣、メンバー22名を斬殺したと報道したのである。


 各国政府は、査察組織を公国に送り、厳格な調査を行なった。結果として、エルシアナには正当防衛が認められ、それが各国の公式見解となる。


 しかし、民衆はそう思わない。政府が、魔王軍を隠しているという根も葉もない噂が広がって行った。


 この事件を受けて、エルシアナは、サリオンドレル家からの除名を主張するようになった。


 まず、オルセリオンが怒りを隠さずに述べる。


「何をおっしゃるのか、姉様。ありえない。ありえません。いけません。テロに屈することになります」


「違うのよ、オルセリオン。私、審判の剣を全滅させてこようと思ってるの。だからその前に、サリオンドレルの名前は捨てておかないとって」


 メリシエルが泣きながら


「だめ! エルシアナ姉さん! 姉さんだけに、罪を負わせるなんて、サリオンドレルの血が許さない! 私たちサリオンドレルは、そんな家じゃない!」


 エルシアナは、一旦、引くしかなかった。しかしエルシアナの中で、どうしようもなくドス黒い感情が積み上がることまでは、誰にも止められなかった。



第70話でした。お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


戦争と言っていいのか。テロが起こりました。歴史的には、第二次公国防衛戦争として記録されてはいます。エルシアナの変化も、気になります。


引き続き、よろしくお願い致します。

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