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第69話 アレクサンドラの戦い

 サリオンドレル公国で、ある異変が頻繁に報告されるようになった。


 生まれてくる赤ん坊が、皆、加護を持っていないのだ。アレクサンドラが、冥府で何をしたのか、その具体はわからない。


 しかしそれは、アレクサンドラの戦いであることが、サリオンドレル家の面々には、明白に伝わった。神との戦いは、始まっていた。


——神など、いらない。神のせいで、争いが起こる。


 メリシエルは、アレクサンドラを身籠ることで、加護の力を失った。筋力は人間離れしているが、メリシエルから、不浄の匂いは消えている。


 死霊たちの精神的な支えであったアレクサンドラが輪廻に戻った。それ以降、街に残っていた多くの死霊が、成仏し、安堵の表情と共に姿を消した。


 さらにメリシエルがこうして加護を失い、ネクロマンサーでもなくなり、死霊の声も聞こえなくなった。


 使用人エリックとパトリシア夫婦、トマスらも、エルシアナに別れの言葉を通訳してもらい、幸福のうちに輪廻へと戻っていった。


 ヴァンパイア・クイーンのナヴィエル=ノクシエルは死霊ではなく、実態を持ったアンデッドである。メリシエルとも普通に会話ができる。


 ナヴィエル=ノクシエルは、まず、24名の部下を自由に解放した。それから自分の意思で、サリオンドレル家に使えている。


 雁鉄ヴァリオンドの召喚も、控えるようになっていた。雁鉄が召喚に疲れてしまうことが多くなったことが原因だった。そろそろ、輪廻に戻るのかもしれない。


 黒龍キセノクランは、普段は、ほとんど寝ている。しかし、加護を持たない子どもが生まれるたびに、ふふと、目を瞑ったまま笑いを見せている。


 かつてこの街を守った死霊の多くが、加護を捨て、黒薔薇の街に赤ん坊として戻ってきていた。黒龍キセノクランは、それが愉快でたまらない。


 かつて、この世界においては、鍛冶屋の子どもは鍛冶屋に。パン屋の子どもはパン屋に。剣士の子どもは、剣士になっていた。


 実際に子どもたちは、家の仕事に適した加護を持って生まれてくることが多かった。誰もが、それが自然だと考えていた。


 しかし、加護を持たない子どもたちは、加護の代わりに、溢れる好奇心を持って生まれてきていた。


 伝統的な、芋を潰した離乳食に飽き、スープ・パスタを求める幼子が多いのは、きっと、英霊だった頃の名残と考えられていた。


 しかし実際には、加護を持たない子どもたちは、早くから文字を覚え、絵本を好み、スープ・パスタに留まらない多様な食べ物、多様な経験を求める傾向があった。


 2歳を過ぎていたアレクサンドラは、地面に両手を付き「こっち、いきたい」と伝えてくる。アレクサンドラは、地面に異常な興味を示した。


「アレクサンドラは、どうして、地面が好きなの?」


「私、こっち、いきたいの」


 一緒に散歩に出ていたオルセリオンが、何かに気づいて


「メリシエル。アレクサンドラは、地面じゃなくて、土の中に興味があるんじゃない?」


「え?」


「ずっと前に、加護キャンセラーを使われて、お義母さんが暴走したとき。あのとき、お義母さん、地中深くに潜って行ったよね?」(31話)


「じゃあ、アレクサンドラは、あのときみたいに、冥府の神様を倒しに行こうとしてるの?」


「違うと思う。なんだか、楽しそうだから。あのとき、お義母さんは、地中で何かを見つけたんじゃないかな?」


「何かって? 地中に、何かあるの?」


「絶対神の鉄槌で滅んだ文明、その遺跡があるはず。2万年以上前の文明。そう、陛下にもらった文書に書かれてた」(37話)


 アレクサンドラが、急に大人びた声を出す。


「そうなの。とても、面白いのよ!」


 思わず、驚いてアレクサンドラを見つめる夫婦。しかし、その時にはもう、アレクサンドラは、女児アレクサンドラだった。


 黒薔薇歴17年。メリシエル(31歳)とオルセリオン(34歳)がそんな話をしていた頃、メリシエルが二人目の子どもを妊娠した。


 無事に加護を持たない男の子が産まれた。雁鉄にあやかり、ヴァリオンドと名付けられた。本当は誰の魂だったのか、黒龍キセノクランに確認することは、やめた。


 前世が誰であっても、構わない。メシリエルなんて、前世は蜘蛛だったのだ。前世が誰であっても、矛盾なく、愛することができる。


 この夫婦は、そう感じていた。



第69話でした。お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


アレクサンドラは、何をしようとしているのでしょう。古代文明に、なぜ、こだわりを持っているのでしょう。


引き続き、よろしくお願い致します。

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