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第57話 大陸軍縮会議(後編)

 四日目は透明性の議論になった。


 加盟国は年に一度、「武器・加護・研究」に関する報告書を公開する。国民・市民や学者が査察に同行できる「市民観察官制度」も導入され、内外の監視体制の強化が議論された。


 もっと短時間で終わる予定だったが、丸一日を要した。理由は、これまで国家の運営に関わってこなかった国民・市民の要望が想像以上に多く、複雑だったからだ。


 なお、ヴァルディス王国の王立魔術師団学院は、魔法署名を使った改ざん防止システムを開発し、報告書の信頼性を保証することになった。


 五日目、最終文書が採択された。条文は42条と附属書からなり、主な内容は次の通りである。


・戦争と威嚇の全面禁止

・加護キャンセラーの常時利用に関する注意事項

・致死性アーティファクトの登録・封印義務

・軍隊の段階的縮小(2年以内に常備軍を治安組織レベルへ)

・徴兵制度の廃止と軍学校の教育機関化

・査察と市民参加の制度化

・違反時の自動制裁措置

・孤児や退役者の支援基金創設

・人格を持つ存在の使役に関する注意事項

・非人道的魔法の絶対禁止


 採決は挙手で行われ、反対はゼロ。二国が「山岳地域への査察困難」を理由に保留したが、翌朝までに附属書で経過措置が整い、最終的に全会一致となった。


 条約発効は「大陸全13か国と三大ギルド、各国の公的な教育機関」の承認が条件で、大陸条約加盟各国は、3か月以内に国内承認手続きを行う。


 教会は、条約発行の承認者に含まれることを強く主張した。しかし聖なるものだけを正義とする教会は中立ではないという理由で、正当に却下された。


 会議の成果を実際に動かすため、「移行評議会」が新たに設置された。構成は各国の実務担当、学院、ギルド、孤児院組織、宗教団体、そして若者代表。


 若者代表は、一旦は、ヴァルディス王国の王立魔術師団学院のA組から選ばれることになった。倫理と安全保障の助言役、そして将来の大陸を担う存在として参加する。


 閉会後の記者会見では、現実的な質問が続いた。査察制度の法整備、聖具の扱い、退役者の再就職、孤児支援の財源、違反時の迅速な制裁などである。


 議長は「力ではなく透明性と経済の秩序で平和を保つ」と述べた。ヴァルディス王国の代表は、退役者の再就職状況(配置42名、再教育15名、孤児院職員12名)を報告し、来月から倍増させると発表した。


 会期を通して、会場運営は極めて実務的であった。


 発言は時間管理され、休憩も短く、食事は全員同じ配分。通訳具の不具合にはすぐ対応し、警備は目立たないが正確に動いた。


 声を荒げる者はおらず、出席者は資料に目を落とし、条文番号を確認し合い、粘り強く修正を続けた。


 派手さはなかったが、最後の署名とともに静かな拍手が起こり、「戦争をしない」という新しい仕組みがこの世界で動き出した。


——剣が手にあれば、振りたくなる。魔法が使えると、使いたくなる。


 剣の数を減らす。あとは、加護キャンセラーを常時発動させておけば、魔法は無力化される。


 しかし。


 サリオンドレル公国だけは、加護キャンセラーの常時発動ができない。メリシエルの加護が切れたら、アレクサンドラが暴走してしまうからだ。


 当然、サリオンドレル公国は、加護キャンセラーの常時利用ではなく、魔法の使用制限を厳しくすることを主張した。


 しかし他国は、使用制限をしたところで、悪意があれば、そうした制限は無視されると主張する。どう考えても、他国の主張の方が正しい。


 こうしてサリオンドレル公国は、剣と魔法に強すぎることに苦しみ始めた。



第57話でした。お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


こうして、連休最後の夜に、書き急いでいるのには理由があります。すでに書き終えている第60話を、今晩のうちにアップしたいのです。第60話は、本作品における最重要のエピソードの一つです。頑張ります。


引き続き、よろしくお願い致します。

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