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第50話 巡書連璽

 主権宣誓礼から程なくして。


 ヴァルディス王国、国王オルフェリウス=ヴァルディスは、王宮の禁書庫で一枚の文書を見つけた。いつも通り、アレクサンドラからだ。


 ただ、この文書を手にした王の対応は、いつも通りではなかった。


 国王オルフェリウスは、この文書に捺印した後、退位と王位継承を宣言した。そして、王位が継承される第一王子を含む、王家の人間を集め、「戦争の禁止」を言い渡している。


 オルフェリウスに退任を決断させたその文書は、サリオンドレル公国からのものだった。公式には「巡書連璽(じゅんしょれんじ)」と呼ばれるもので、歴史的にも重要な文書である。


 巡書連璽とは?


 差出人となる王は、特定の内容をしたためた文書に、まず自分の王印(=())を捺印する。


 次にその文書を、ある他国の国王に届ける。その文書を読んだ国王は「確かに読んだという事実」を示すだけ。そのためだけに、王印を文書に捺印する。


 捺印を終えた国王は、その文書を、まだ捺印のない他の国の国王に送る。その国の国王も、同じように「確かに読んだという事実」のみを示すため、捺印する。


 そうして、この世界に存在する国(この時代は14カ国)すべての王が文書を読んだら、差出人の王ところに戻される。それが巡書連璽である。


 禁書庫に置かれていた、サリオンドレル家の印だけが押された文書の内容は、以下。



サリオンドレル公国は、他国間の交戦を見つけ次第、その両国への宣戦布告を即時・自動的に行うものとする。ここで交戦の大小、その規模は問わない。交戦する両国が公式な停戦に至らない限り、いかなる理由あろうとも、サリオンドレル公国は、その両国への、昼夜を問わぬ休みのない戦争行為を止めることはない。



 ちょうどその頃。


 ヴァルディス王国には、東の隣国、ダグナダイン王国との戦争が迫っていた。国王オルフェリウスは、この戦争を長期化しない、損害も少ないものと踏んでいた。


 そこに、この巡書連璽が届いたのである。巡書連璽、最初の送り先として。


 ダグナダイン王国との戦争は小規模なものになるだろう。しかし、その戦争を開始するということは。この文書を読んでしまったからには、サリオンドレル公国への宣戦布告になる。


 それだけは、できない。サリオンドレル家は、長年に渡るヴァルディス王家の恩人であり、敬愛する英雄たちの集う家なのだ。


 国王オルフェリウスは、もはや自分は、自国の国民のことを優先できないことを悟る。それは王ではない。そう結論づけた。


 黒薔薇歴9年。冬。


 戦争がもはや、国家間の交渉手段としては機能しなくなった。そのきっかけとなる巡書連璽が作成された年として、歴史に刻まれている。


 このサリオンドレル家による巡書連璽は——各国が緊急性を察したのだろう。送付からわずか4ヶ月のうちに、14カ国の印とともに、差出人であるサリオンドレル家に戻っていた。


 なお。


 王位を退いたオルフェリウスは上王となり、上后となった妻と共に、居をサリオンドレル公国に移している。新しい王の政治の邪魔になるからというのは建前。


 行事のために帰国することは何度もあった。しかし二人はサリオンドレル家の相談役として、この世を去るときまで、本当の意味で、故国に戻ることはなかった。


 オルフェリウス。他人の人生を統べる王たるに相応しい、堂々たる人物であった。



第50話でした。ここまでお読みいただけたこと、光栄です。ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


素晴らしい王様でした。しかし、立ち上がりつつあるこの新しい世界では、もはや自分の活躍できる場所はないと考え、引退を決意しました。その決断も、立派です。


引き続き、よろしくお願い致します。

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