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第44話 魔道具と温泉。

 ダークエルフの中に、魔道具に精通している者が4名いた。4名は、オルセリオンの義手に異常な興味を示した。よく執務室までやってきては、オルセリオンの仕事の邪魔をしている。


 ナヴィアがヴァンパイア・クイーンであることが判明する少し前のこと。


 オルセリオンは、また勝手に執務室を訪れていた4名に、要求を出していた。距離が離れた相手と会話ができるような魔道具を作れないかと。しかし、そうした魔道具は存在せず、開発も難しいらしい。


 そもそも魔道具をゼロから作り上げるには、年単位の時間がかかる。さらに、距離が離れた相手との会話ができる魔道具ともなれば、できたとしても10〜20年後とのこと。


「ただ、魔道具の修理であれば、実は簡単なのです」


 理屈は、こうだ。魔道具は、コアとなる魔法と魔力が込められた部分と、コアから魔力を流す水路のような部分に分けられている。


 コアが壊れていると、そもそも修理できない。しかし大概の場合、コアは無事なことが多い。コアではなく、水路の方がよく壊れるのだという。


 そして水路の修理は、彼らなら、数日から長くても2週間以内には完了できるらしい。


 オルセリオンが思いついて言う。


「それ、事業にならないかな?」


「私たちは、黒薔薇の街を出たくありません。魔道具の方から、こちらに来ていただけたら、まあ、修理できますけれども」


 高価な魔道具の所有者は、そもそも王族や貴族などの富裕層だ。そうした富裕層に魔道具を持ってきてもらう。修理の間、街に2週間程度、滞在してもらう。


 もちろん、修理したくなるほどの魔道具だ。便利だったり、必要だったりする。愛着もあろう。そうした魔道具を修理することの付加価値は大きく、支払ってもらえる金額も期待できる。


 2週間程度の滞在で、この街に落としてもらうお金を増やす。


 そのために温泉を整備する。この地は、気温の低い北国だ。しかし火山地帯にあるため、街の空気はそれほど冷えない。また、街の周囲には、ところどころ天然の温泉が湧いていた。


 そうした温泉の多くは、しかし、魔物がいる不浄の森にある。街の猛者たちは、魔物を狩りながら、温泉を目指すこともある。しかし普通は、危険すぎる。


 オルセリオンはそこで、執務室で、他の作業に当たっていたナヴィアを呼びつける。


「ナヴィア、ちょっといいかな?」


「はい」


「不浄の森、街から2km地点に温泉が湧いている。そこを観光用に整備する企画を作ってもらいたい」


「貴族の馬車で乗り入れることのできる豪華温泉宿の整備。高価な土産物も企画します。魔物は温泉の警備などに活用できるものはテイム。それ以外は殺さず、防御結界を利用し、可能な限り森の生態系を維持します。魔物は、この街にとって『自然の防壁』ですから。温泉に入りながら結界越しに魔物が見えた方が、スリルも味わえてプラス評価です。酒とカジノも必要です。ダークエルフの中には、ワイン農園で奴隷労働をさせられていた者も多いと聞きます。ぜひ、ワイン農園の整備も致しましょう。カジノは、夜眠る必要のない私が、仕切りましょう。酒とカジノ、不浄なるノワリエンには、もってこいですね。ふふふ」


 オルセリオンとダークエルフたちが、思わず顔を見合わせた。



第44話でした。お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


時間が前後しているので、もしかしたら混乱させてしまったかもしれません。これは、ナヴィアが「推理」の加護を持ったヴァンパイア・クイーンであることが判明する少し前の話です。なお、ここでナヴィアは自分が「夜眠る必要がない」ことを、興奮のあまり、うっかり口にしてしまっています。


引き続き、よろしくお願い致します。

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